“好き”と私のズレ問題
菊池 すごくいい関係性だね。話は変わるけど、この間、ヘアメイクさんが「ずっと好きなものがあって着ていても、歳を重ねると自分自身とズレが生じる。それをどうしたらいいかわからない」という話をしていて。40代になると古着のTシャツが似合わなくなったという人も多いよね。おちばはどう?
千葉 すごくわかるよ。歳を重ねると、顔も体のラインも変わるから、それまで似合っていたものが突然似合わないと感じるようになる。私もいつからか、古着じゃないけどTシャツが似合わなくなってしまったし。
菊池 やっぱりズレは出てくるよねぇ。好きを信じて貫きたい気持ちと、ふと訪れる違和感とのせめぎ合いだよ(苦笑)。今回登場してくださったゲストの方々は、ズレを感じたりはしなそうじゃない?

ファッション撮影によく使うカメラ。左はフィルムカメラで「コンタックス」のT3
素人でもいい感じに撮れるのはすごい!(菊池)
千葉 そうだねえ。あ、でも、まさこさんも引田さんも、買い物で失敗したら人に譲る、っていっていたよね。ずっと長く着ているものもあるけれど、回転が早いものもあると。だから多分、1本の好きな軸は変わらないけれど、そのときどきで自分に似合うデザインや素材にトライしているんじゃないかな。そして似合わなかったら譲ると。
菊池 たしかに、まさこさんはずっとボーダーが好きだけど、年齢とともに似合う素材が変わったといっていたね。変化する自分に合わせて、似合うものをどんどん探し、それを楽しんでいる。確固たるこだわりも素敵だけど、シフトチェンジする軽やかさももっていたいよね。
千葉 うん。似合うものがなくてもういやだ、となるとそれで終わっちゃう。おしゃれがつまらなくなっちゃう。純度の高い好きなものがあるかどうかって、本当に大事かもしれないね。
菊池 自分が本当に好きなものを確認するために、10ふくを考えるのはいい作業だよね。
千葉 あこやんも最後、自分の10ふくを紹介してくれたね。やってみてどうだった?
菊池 10個にしぼるのが大変だったけど、自分はこういうものが本当に好きなんだと改めて気づけたよ。冬はもう、アランニットとアートなセーターだけあれば十分だと思った。今回、いろいろな方と対談して、おしゃれは偏っていてもいいんだなと勇気をもらえた気がする。

ウールのセーターは手洗い派。洗剤は「エコストア」のデリケート&ウールウォッシュを
手でやさしく洗って平干しする一連の作業が好き(菊池)
千葉 好きを貫くと偏るよね。
菊池 そう。その偏りこそ“らしさ”だなぁって。
千葉 まさに偏愛。
菊池 その服をまとった自分も丸ごと推したくなる、そんなおしゃれをしていたいね。
本記事は、『菊池亜希子のありが10(とう)ふく、みせて!』(扶桑社)|菊池 亜希子(著)からの抜粋です。
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菊池亜希子が豪華ゲストを招き、ゲストの私物をもとに、おしゃれについて熱くおしゃべり。読めばおしゃれしたくなるはず!
『天然生活』で連載中の、モデル・俳優の菊池亜希子さんによる人気連載『ありが10(とう)ふく、みせて!』を書籍化しました。菊池さんがいま会いたいゲスト15人をお迎えし、ゲストが「側にいてくれてありがとう」と思う私物、10アイテムについて、根ほり葉ほり取材しています。放課後に、友達とおしゃべりしているようなリラックスした雰囲気で、ゲストの本音を引き出していく菊池さん。見えてきたのは、ひとりひとり異なる、ものとのつきあい方、おしゃれに対する考え方や、大事にされている軸でした。年齢を重ねるごとに、「何を着たらいいのか分からない」「おしゃれが昔ほど楽しくない」と、おしゃれ心が乾きがちの私たち。でも、この本を読めば、気軽におしゃれを楽しんでみようという気持ちになるはずです。中島基文さんによる、愉快なデザインも見所です。
<撮影/千葉亜津子>
著者・菊池亜希子(きくち・あきこ)
1982年生まれ。岐阜県出身。モデル・俳優・エッセイやイラストなど幅広く活躍中。近著は『へそまがりな私の、ぐるぐるめぐる日常。』(宝島社)。毎週土曜日、インターエフエムのラジオ番組『スープのじかん。』のパーソナリティーを務める。現在放送中のTBS系日曜劇場『キャスター』に出演。インスタグラム:@kikuchiakiko_official
千葉亜津子(ちば・あつこ)
1981年生まれ。愛知県出身。長野博文氏に師事後、独立。写真家として、ライフスタイル誌やファッション誌などで活躍中。2児の母。『マッシュ』での撮影の際、菊池さんからハロー!プロジェクトをすすめられたのを機に、20年来の仲に。プライベートでも親交を深める。インスタグラム:@atsukochiiba