忘れていたかわいこちゃんたちを引っ張り出して着るように
▼前回までのお話▼
菊池亜希子さんの“ありが10ふく”
菊池亜希子さん(以下、菊池) この本の写真を担当してくれた、おちば(千葉さんの愛称)とは付き合いが長くて。同じ目線と温度感で撮影してくれると思ってお願いしました。
千葉亜津子さん(以下、千葉) あこやん(菊池さんの愛称)、ありがとう。対談を振り返ると、いろいろな方が登場したね。
菊池 常々おしゃれだなあと思っている方ばかりだったけど、おしゃれに対するこだわり方が全然違っていて面白かったよね。
千葉 同じブランドでも人によってチョイスが違ったりね。
菊池 そうそう。別物に見えた。改めて、洋服の可能性って無限大だなと思ったよ。着て初めて顔を出す魅力があるんだなって。
対談を通しての変化
千葉 みなさんからいろいろな影響を受けたよね。あこやんはどんな変化があった?
菊池 対談があった日は、自宅のクローゼットを必ず整理していたよ(笑)。気持ちを整えてニットをたたみ直したり、奥深くで眠っていたアイテムや、気持ちが遠のいていたアイテムを復活させてみたり。

黒い靴は個性的なデザインが多め。お気に入りのブランドは、「ダンスコ」「アデュー」「パラブーツ」など
どの靴を履くかはその日の洋服によって、どのくらい黒のボリュームを出したいかで選ぶよ(菊池)
千葉 アクセサリーとか?
菊池 そうそう! みなさん本当にそれぞれかわいいアクセサリーを持ってきてくださったよね。私も以前は着けていたけれど、子育てが始まり、子どもがネックレスやピアスを触るから着けなくなって、全部しまい込んでいたの。その忘れていたかわいこちゃんたちを引っ張り出して、着けるようになったんだ。
千葉 わかる!
菊池 おちばも?
千葉 うん。私はパールのピアスを着けるようになったよ。いままではオケージョンのときだけ着けていたけど、美和子さんがふだんからパールを着けているのを見て、日常使いするようになった。あこやんの腕時計、初めて見るけどそれも受けた影響のひとつ!?
菊池 そう。実はマナさんが着けていた「カルティエ」の時計と同じなの。お祝いでいただいたんだけど、時計に自分が追いついていないと思って箱に入れたままだった。でもマナさんを見て、自分らしく使えばいいと気軽につけたら、すんなりなじんだんだよね。

「カルティエ」の腕時計は、全身ニットや、パジャマみたいな格好と合わせて楽しんでいる
自分がようやく時計に追いついた感じ(菊池)
千葉 私もこの対談を通して、持っていたけど着ていなかったベストを着たり、ブラウスを2枚重ねて着たり、着方を変えるようになったよ。いろいろな方の私物を見させてもらって、物欲が掻き立てられると思ったけど、そうじゃなかったよね。

「コム デ ギャルソン」のベストについて熱弁中
大好きなグループ「エンハイフン」のメンバーがミュージックビデオで着ていた衣装と同じなんだよ!!(菊池)
よく探したね! おそろいだなんてうらやましい~(千葉)
菊池 うん。すでに持っているものたちの、気づけていなかった魅力を発見したね。そんなふうに、ものの魅力を引き出して楽しむ姿勢にひかれたのかな。
千葉 振り返ると、毎回、ゲストのみなさんが、いろいろと着せてくれたのも面白かったね。
菊池 しかも「着てみて! 絶対似合うから」って、みなさん熱心に推してくださる(笑)。ふだん落ち着いているイメージの方も、おしゃれの話になるとエピソードがどんどん出てきておしゃべりになる。その時間がすごくよかった。
千葉 自分の好きなものを共有したいという抑えられない気持ちが、まさに推し活だったね。
菊池 本当に、宣伝隊長みたいに愛を語ってくれて。いまはSNSなどで気になるブランドを聞くことができるけど、会って話すことでしか伝わってこない、純度の高い好きな気持ちや、ものとその人の周りに漂う風景を垣間見ることができてうれしかったな。だから、紹介してくれたものはもちろん素敵で憧れるけれど、それ以上に愛を語るゲストの方をより好きになった。

おちばが教えてくれた「ザツー パッキン」の置き物。ツボなのでおちばに買ってきてもらった
私の好みを熟知してくれる友達がいてくれるのはありがたい~(菊池)
千葉 たしかに。それもあって、素敵なものを見ても物欲が湧いてこなかったのかも。
菊池 ものとの出合い方、愛でる気持ち、接し方など、その人らしい関係性の築き方があるよねえ。おしゃれの本質って、きっとそこなんだろうね。
千葉 ほんとだねえ(しみじみ)。
菊池 ものを手に取った瞬間のときめきやワクワクは必要だし大切だけど、それはあくまでスタートライン。そこからどんな関係を築いていくのかは自分次第だと改めて思ったよ。
千葉 ものとの関係性でいえば、私は買い物する場所を意識するようになった。以前は、招待された展示会やセレクトショップで買っていたけれど、いまは友達のお店や、洋服をつくっている友達から買うようになったの。友達を応援したくて。
本記事は、『菊池亜希子のありが10(とう)ふく、みせて!』(扶桑社)|菊池 亜希子(著)からの抜粋です。
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菊池亜希子が豪華ゲストを招き、ゲストの私物をもとに、おしゃれについて熱くおしゃべり。読めばおしゃれしたくなるはず!
『天然生活』で連載中の、モデル・俳優の菊池亜希子さんによる人気連載『ありが10(とう)ふく、みせて!』を書籍化しました。菊池さんがいま会いたいゲスト15人をお迎えし、ゲストが「側にいてくれてありがとう」と思う私物、10アイテムについて、根ほり葉ほり取材しています。放課後に、友達とおしゃべりしているようなリラックスした雰囲気で、ゲストの本音を引き出していく菊池さん。見えてきたのは、ひとりひとり異なる、ものとのつきあい方、おしゃれに対する考え方や、大事にされている軸でした。年齢を重ねるごとに、「何を着たらいいのか分からない」「おしゃれが昔ほど楽しくない」と、おしゃれ心が乾きがちの私たち。でも、この本を読めば、気軽におしゃれを楽しんでみようという気持ちになるはずです。中島基文さんによる、愉快なデザインも見所です。
<撮影/千葉亜津子>
著者・菊池亜希子(きくち・あきこ)
1982年生まれ。岐阜県出身。モデル・俳優・エッセイやイラストなど幅広く活躍中。近著は『へそまがりな私の、ぐるぐるめぐる日常。』(宝島社)。毎週土曜日、インターエフエムのラジオ番組『スープのじかん。』のパーソナリティーを務める。現在放送中のTBS系日曜劇場『キャスター』に出演。インスタグラム:@kikuchiakiko_official
千葉亜津子(ちば・あつこ)
1981年生まれ。愛知県出身。長野博文氏に師事後、独立。写真家として、ライフスタイル誌やファッション誌などで活躍中。2児の母。『マッシュ』での撮影の際、菊池さんからハロー!プロジェクトをすすめられたのを機に、20年来の仲に。プライベートでも親交を深める。インスタグラム:@atsukochiiba