(『天然生活』2025年7月号掲載)
巨大な“かぎ針”が生み出す布小物の世界
奥村律子さんが、布編みと出合ったのは35年前の米国。旅行中に立ち寄った手芸店でした。
「多彩なカントリークラフトが並ぶ中、気の向くままに巡っていたら、片隅に置かれた布編みのかごやマットに目を奪われたんです」
初めて触れる雑貨の愛らしさ、古布を太めの帯状に裂いて編むリサイクル的発想と独特の風合いに、魅せられたといいます。
さっそく好きな布と編み方テキスト、専用の巨大なかぎ針を購入。編み物は小学生以来だったものの興味が勝り、手を動かしつづけたそうです。

米国から持ち帰ったかごとテキスト、編み針。“はじめの一歩”の思い出とともに、いまも大切に
「編み目が大きいから、ざくざく編めてすぐ形になり、やり直したい時はするっとほどけて気楽。自由に布を合わせられ、柄の見え加減で表情が変わるのも面白くて」

巨大なかぎ針で編む1目は、布幅が異なれば仕上がりの大きさも厚みも変わる。写真は、右から、12cm、8cm、4cm幅に裂いた布をそれぞれくさり編みしたもの
そんな、布編みの魅力を皆に伝えたくて、帰国後も夢中で編んだ作品はホームページやイベントで紹介。さまざまなアイテムをつくったからこそわかる、編みやすさを追求した巨大かぎ針のオリジナル制作にも取り組みます。
金型から成形してくれる工場を探して職人と試行錯誤。4カ月を経て、理想の形が完成しました。

布を片手で四つ折りにしながら編む奥村さん。独自の巨大なかぎ針は、布や目をかけやすい長さ、かぎの深さと先端の形を吟味した
「スムーズに仕上がる道具があると、またつくりたい気持ちに。そうして生まれたお気に入りに囲まれ、使うのも、日々の喜びです」

同じ編み方で、大中小のコースターを。布を折る幅の違いだけで、でき上がりの大きさが変わり、用途も広がる

ふっくら座布団は、浴衣地と柄布を組み合わせて。くさり編み5目を輪にした中心から、適宜、増し目をしながらぐるぐると編んで座面サイズに

コットン地3柄を使い、くさり編み18目を土台に長編み15段を編んだキッチンマット。洗濯機で洗えるほど丈夫な仕上がりに
布編み館のホームページには魅力的な布小物が満載
作品制作の動画を見ることもできます。
布編み館のホームページは下記URLより
https://nunoamikan.jp/

洗い張りした久留米絣と柄布で編んだ部屋ぞうり
nunoamikan.jp〈作品デザイン・制作/奥村律子 撮影/滝沢育絵 取材・文/髙井法子〉
奥村律子(おくむら・りつこ)
巨大かぎ針編みの魅力を伝えたいと、雑誌やイベントで作品を発表。HPでも、魅力を発信する。編みやすさを追求したオリジナルの「布編み棒」の制作、販売も行う。
問い合わせ先/布編み館
https://nunoamikan.jp/