(『天然生活』2025年11月号掲載)
能登半島地震を経験し、変化した自分にとって大切なもの
「もっといいもの、素敵なものを」と一年中もの探し、職業柄もあり「物欲の塊みたいな人間だった」と振り返る深尾さん。
そんな彼女がものを手放すようになったのは、2024年1月に起きた地元・石川県の震災がきっかけでした。
「あまりにも大きなショックを受け、ものに囚われていた自分の価値観がガラガラと崩れました。そこから段階的に『捨て活』を始めていったのです」

地震をきっかけに寝室の収納はこの引き出しだけに

「ワンダラウト」のアルミコンテナの中には、食料品のストックや備蓄品をイン。災害が起こっても安心な量を確保している
どこから手をつけていいのかわからないほど、ものに囲まれていた家。手放すもの、手元に残すものを選別するにあたり、これからの暮らしの何に価値を置いて生きていくのか、自身との対話が続きました。
「以前の私は老舗やブランドものに弱かった。でもそれは、他所のだれかが決めた価値観。自分が心から好きなものは、本当は何なのか……問いかける日々でした」

ハンドタオル代わりの蚊帳ふきん。毎日洗濯してすぐ乾くので持つ量も最小限

和花専門店でときどき花を購入し、活けるのが楽しみ
他人軸で選ぶものは「情報」を所有しているにすぎないのではと、ときには「買わない」選択で、物量を減らし続けました。
「手放しで気づいたのは、やっぱり私は『ものが好き』ということ。でも以前は中途半端なものも混在し、部屋も頭も混乱していました。本当に好きなものだけを残したら、心も体もすごく軽やかになり、生きやすくなったんです」
部屋が整うと心も整う
いまの部屋は深尾さんの「好き」が凝縮された空間。その多くは、名もなき古道具や古家具でした。
それらを手入れし、存分に使い切る暮らしを心がけています。

「和室は敬遠されると聞きますが、私は落ち着くし居心地がいいんです」。毎日ふき掃除をして、空間を整える
「欲が減っても、決して無気力ではないんです。部屋を掃除して整え、料理して食べる。そんな『普通』が続くことが、何よりうれしく感じられるようになりました」

押し入れの中の収納箱も自分が好きなものばかり。あえてふすまを外し、中に何があるかをいつでも把握できる状態にしている
深尾さんが新しく手に入れたもの
● 興味と好奇心
かつては「ものがたくさんあれば幸せ」と考えていたけれど、いまは花など自然の美しさや、旅など経験に重きを置くように。新しい世界が開け、興味の幅も広がった。
● 新しい価値観
「人からどう見られるか?」という他人軸から「ただ好きだから」「やってみたいから」など自分軸にシフト。周囲に振り回されることがなくなり、心も穏やかに。
● 自己肯定感
身の丈に合わない夢や理想に縛られず、等身大の自分を受け入れられる心境に変化。人と比べることがなくなり「自分はこれでいいんだ」と思えるようになっていった。
〈撮影/星 亘 取材・文/田中のり子〉
深尾双葉(ふかお・ふたば)
東京で雑貨店に勤務後、石川県金沢市で器と古道具の店を約8年間営む。店を閉じたあとYouTubeチャンネル「futaba」を開設、動画制作者としての活動をスタート。著書に『ほんとうの豊かさに出合うための9週間 部屋と心が自然に整う“一生もの”の暮らし』(KADOKAWA)。
※記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです






