• 湯気とともにヒノキが香る中華せいろ。佇まいも美しい、憧れの調理道具です。中華せいろの工房「曲物工房清水」を真藤舞衣子さんと訪ね、せいろが生まれるまでの工程を見せていただきました。
    (『天然生活』2025年11月号掲載)

    真藤舞衣子さん愛用の「せいろ」ができるまで

    素材をそのまま味わうことができると人気のせいろ料理。ブームから、すっかり日本の食卓に定着しました。

    料理家の真藤舞衣子さんが愛用するのは、曲物工房清水の清水貴康さんがつくる中華せいろです。

    「東京の合羽橋にある調理道具専門店の『釜浅商店』で見つけました。深さがあるので、茶わん蒸しなど少し高さのある器も入れることができそうと思い購入しました。使ってみてわかったのは、なにしろ丈夫。しかも軽くてとても使い勝手がいいんです」

    普段使っている中華せいろがどのようにつくられているのか知りたいという真藤さんが、清水さんの工房に伺いました。

    画像: 曲物職人の清水貴康さん。もともとは信用金庫の営業マンだったという異例の経歴の持ち主

    曲物職人の清水貴康さん。もともとは信用金庫の営業マンだったという異例の経歴の持ち主

    「中華せいろ」づくりの工程

    1 【身】輪っかにする

    側板は奈良県から仕入れたヒノキを使用。側板の端を小刀で削る「かきとり」を施す。こうすることで、輪にしたときの力点がふたつになり、壊れにくくなる。

    輪にして、接着剤を塗り、木ばさみで挟み、形をつくる。

    画像: 1 【身】輪っかにする

    2 【身】縫い目に穴をあける

    接着剤が乾いたら、ガイドに沿って木刺しと呼ばれる曲物師独自の道具で穴をあける。輪にするのも木刺しで穴をあけるのも力が必要だが、加減が難しい。

    工房は清水さん以外は30代の女性。全員すべての工程をこなす。

    画像: 2 【身】縫い目に穴をあける

    3 【身】かんばで縫う

    山桜の樹皮をなめし、細いリボン状に切る。適度なかたさがあるので、2であけた切れ目を縫うことができる。縫い上がるとせいろらしい美しい佇まいが現れる。

    最後にステンレスの留め具で数カ所留めて強度を補う。

    画像: 3 【身】かんばで縫う

    4 【身】うずを巻く

    厚さ1mm幅約10mmの薄板を側板の内側に沿わせるように3重に入れる。ゆるすぎると落ちてしまい、きつすぎると入らないので、技術が必要。

    うずを巻くことで側板の厚みが増し、丈夫なせいろになる。

    画像: 4 【身】うずを巻く

    5 【身】湯気が抜ける竹底をつくる

    身の底には竹材を使う。湯気が全体に回るように竹と竹の間にすき間をあけている。

    「自分で使ってみたり、使った人の意見を聞いて改良します。生活道具をつくる楽しさはこういうところですね」

    画像: 5 【身】湯気が抜ける竹底をつくる

    6 【ふた】網代のふたをつける

    身と同じように側板にうずを巻き、網代編みのふたを入れる。蒸気が抜けにくくなるよう網代編みは2重にし、その間に経木を挟む。ふたを付けたら、マレーシアから仕入れた籐で取っ手を編む。

    画像: 6 【ふた】網代のふたをつける

    7 完成

    外径21cm、深さは6.5cm。使ったあとは洗剤を使わずにたわしと水で洗い、軽く水けをふき、風通しのいい場所で陰干しする。

    水けをふき取ったあと、アルコールスプレーをすればさらに安心。

    画像1: 7 完成
    画像2: 7 完成

    訪ねたところ
    曲物工房清水

    画像: 工房の前で。左から清水さんの妹のみほさん、一番弟子の鈴木さん、清水貴康さん、真藤さん。右はワークショップをきっかけに工房に入った木村さん

    工房の前で。左から清水さんの妹のみほさん、一番弟子の鈴木さん、清水貴康さん、真藤さん。右はワークショップをきっかけに工房に入った木村さん

    住所:岐阜県各務原市蘇原島崎町1-8
    https://magemonoshimizu.com/



    〈撮影/千葉亜津子 取材・文/編集部〉

    真藤舞衣子(しんどう・まいこ)
    発酵研究家、料理家。発酵や保存食を中心に、季節の恵みを生かした料理を提案。食を通じて環境を考えた暮らし方や食育に取り組み、健やかな日々を支える知恵を広めている。著書多数。

    ※ 記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです



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