• 「とにかく、かごが大好き」というモデル、デザイナーとしてご活躍の雅姫さんのご自宅を訪ねました。幼いころ姉妹で持った思い出のバスケットから始まる、かごへの思いとは?
    (『天然生活』2014年8月号掲載)

    かごの周りに広がる暮らしの風景が好き

    「これは子どものころに母に買ってもらったもの。3歳年上の姉と、おそろいだったんですよ。外から見たら同じなんだけど、中のギンガムチェックの大きさが微妙に違うんです。小さいチェックが私の」

    そういって雅姫さんが見せてくれたのは、トップの写真の愛らしい小さなバスケットでした。ピクニックに出かけるときなどに、姉妹でよく持っていたのだといいます。

    だれかがどこかで使っているかごが好き

    画像: ナンタケットバスケットは佇まいが好き アメリカ・ナンタケット島でつくられている伝統工芸品、ナンタケットバスケット。細かい目と象牙の細工が特徴。パーティのときなどに持つ

    ナンタケットバスケットは佇まいが好き
    アメリカ・ナンタケット島でつくられている伝統工芸品、ナンタケットバスケット。細かい目と象牙の細工が特徴。パーティのときなどに持つ

    いまでも気がつけば、いつも、かごが身近にあるという雅姫さん。その始まりが、故郷・秋田県の暮らしの風景でした。

    「母はいつも、買い物に出かけるのに、お財布をポンと放り込んだかごを持っていました。実家の玄関やキッチンには、いつもどこかにかごがあって、泥の付いた野菜が入っていたり、それを持って、すぐ近くの山へ出かけたり」

    そんな暮らしのなかの“生きるかご”を見てきたからでしょうか? 大人になってからも「わあ、いいなあ~」とひかれるのは、どこかでだれかが使っているかご。

    画像: 部屋で手を動かす時間に こちらもナンタケットバスケット。編みかけのストールや毛糸を入れている。持ち手付きなので、好きな場所に運んですぐに作業を始められる

    部屋で手を動かす時間に
    こちらもナンタケットバスケット。編みかけのストールや毛糸を入れている。持ち手付きなので、好きな場所に運んですぐに作業を始められる

    「初めてフランスに行ったとき、市場でマダムたちが持っていたマルシェかごに目が釘付けになりました。ざっくりと大きくて、野菜でもバゲットでもお花でも何でも入る。そしてガサッと入れた姿が、なんともかっこいい。暮らしに溶け込んだ、まさに働くかごですね」と笑います。

    20代のころに写真集で知って以来、ずっと憧れていたナンタケット島を訪ねたときのこと。いまでは「バスケット界のエルメス」といわれて注目を集めているナンタケットバスケットですが、雅姫さんがひかれたのは、週末に自分がつくったかごを持って教会に通う村人の姿だったのだといいます。

    そのほか、スコットランドアンティークの花摘みかごは、庭で摘んだバラをそっと寝かせられる平らな形。デンマークで出合った自転車用のかごは持ち手付きで、自転車から降りると、買い物かごのように腕に下げることができます。どうやら雅姫さんが好きなのは、「かご」そのものより、かごの周りに広がる暮らしの風景のよう。

    画像: デンマークで見つけた自転車用のかご 「自転車に付けよう」と思って買ってきたが、手持ちの自転車に合わなかったので、部屋で役立てることに。玄関に置いてストール入れに

    デンマークで見つけた自転車用のかご
    「自転車に付けよう」と思って買ってきたが、手持ちの自転車に合わなかったので、部屋で役立てることに。玄関に置いてストール入れに

    画像: 小さめサイズは椅子の背もたれに これも自転車用。フック付きなので、使う場所のすぐ近くにしまい場所をつくることができる。椅子の背もたれにかけて読みかけの本を

    小さめサイズは椅子の背もたれに
    これも自転車用。フック付きなので、使う場所のすぐ近くにしまい場所をつくることができる。椅子の背もたれにかけて読みかけの本を

    初めて自分でかごを買ったのは、中学生のころ。叔父さんに東京に連れてきてもらい、「私の部屋」などの雑貨屋さんめぐりをして、かごを買ったそうです。

    「オリーブ少女でしたから。雑誌に載ってるみたいなのが欲しい、と買って、自分の部屋で、飾ったり、使ったりしていましたね」

    さらに、結婚してからは、かごが、なくてはならない暮らしのアイテムになりました。

    「娘のゆららが小さなころは、おもちゃをしまうのに、かごが大活躍でしたね。ぽいぽい放り込めるから、お片づけの勉強をさせるのにぴったりだったなあ」

    いまの家に引っ越してからは、ビッグサイズのかごも仲間入り。

    「『ザ・コンランショップ』で大きなランドリーバスケットを買いました。ショップでは、とても自宅では使えないなあと思いながらも、大胆で存在感のあるかごを眺めるとワクワク。大ぶりのかごって、ザクッとブランケットを入れたり、本をしまったりと、部屋の中にひとつあるだけで絵になるんですよね」と語ります。

    画像: スコットランドのかご 作家、リズ・ベックさんを訪ねたときに持ち帰った柳の花摘みかご。バラを育てている雅姫さん。部屋に飾る一輪を摘むときに愛用

    スコットランドのかご
    作家、リズ・ベックさんを訪ねたときに持ち帰った柳の花摘みかご。バラを育てている雅姫さん。部屋に飾る一輪を摘むときに愛用

    画像: だれかがどこかで使っているかごが好き

    かごを使って暮らしの風景をつくる

    何に使うかは考えず、佇まいさえ美しければ、とりあえず購入。暮らしながら、「ああ、そういえばあれがいいかも」とライブ感覚で使い方を考えるのがいつもの方法です。

    当時からとくに好きだったのは、使い込まれた古いかご。東京・自由が丘にあった「デポー39」や「ラスブー」などのアンティークショップで飴色になったかごを選んだり、海外の蚤の市でお気に入りを見つけては大荷物を担いで帰ったり。

    キッチンテーブルの上で、食材やジャムのびんをアイテムごとにしまったり、リビングでクロスや書類をひとまとめにしたり。雅姫さんの手にかかると、かごの周りに、たちまち美しい風景が立ち上がります。生活感を美しく変換してくれるのも、かごがもつ力なのかもしれません。

    画像: アーモンド形がお気に入り。アイルランドのかご 自給自足の生活を営む一家が自分たちで育てた柳で編んだかご。ガーデニンググッズをまとめるのに利用。ゴロンと入れておくだけでさまになる

    アーモンド形がお気に入り。アイルランドのかご
    自給自足の生活を営む一家が自分たちで育てた柳で編んだかご。ガーデニンググッズをまとめるのに利用。ゴロンと入れておくだけでさまになる

    どのかごにも、手に入れたときの思い出や、使いつづけてきた時間がつながっている

    数年前からは、竹やあけびなど和のかごやざるも大好きに。お弁当箱のようなふた付きかごに手ぬぐいをまとめたり、小さな竹かごにぐい飲みをしまったり。

    「竹のかごって堅くてしっかりしているから、お弁当と水筒とか、撮影用の食器などを運ぶにもすごく便利なんです」と雅姫さん。

    ふと気づけば、身のまわりには、10年物、20年物のかごも増えました。手に入れたときには新品だった物も、月日を重ね、自然に味わいを増して……。ゆららちゃんがおもちゃ入れに使っていたバスケットに書類を、と使い方を変えて“いま”に生かせるのも、かごならではです。そして、どのかごにも、手に入れたときの思い出や、使いつづけてきた時間がつながっています。

    子どもを育て、お店をつくり、そして暮らしを楽しんで。かごの中には、そんな雅姫さんのひと時ひと時が詰まっているようでした。

    <撮影/大森忠明 取材・文/一田憲子>

    雅姫(まさき)
    モデル/デザイナー。東京自由が丘に「ハグ オー ワー」と「クロス&クロス」の2店舗をプロデュース、自らデザイナーも務める。年二回刊行のライフタイル誌『センス ド マサキ』(集英社)も好評。国内外で集めたかごを暮らしのなかで愛用。実用として役立ち、しかも、おしゃれなかご使いに定評がある。三匹の愛犬との暮らしぶりが楽しいインスタグラムも大人気。
    https://www.instagram.com/mogurapicassowols

    ※トップの写真について
    幼いころ、姉妹で持った思い出のバスケット
    子どものころ、お母さまが買ってくれたもの。実家近くの山や公園に出かけるときに、サンドイッチなどを入れて出かけた。右が雅姫さん用

    ※記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです

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