(『天然生活』2016年11月号掲載)
きれいに切ると、料理もおいしく。
「料理教室で “切り方” を知りたいという人が多く、 “切り方” に特化したレッスンを始めたら、好評で」と話すのは、こころキッチンプランナーの阪本三穂さん。
「たかが “野菜を切る” ですが、料理の出来栄えを左右する大事な作業。形や大きさがそろった野菜で料理をすると火や味が均一に入り、仕上がりの美しさも違います」
千切りやみじん切りなどの手順の前に、まず知ってほしいのは、包丁の使い方。
「包丁は手首を使い、真下ではなく前にすべらせるように動かすこと。刃先を30度くらいの角度で野菜に入れて角度をつけて切ることが、すべての切り方に共通する大事なポイントです」
この基本を守って野菜を切ると、力を入れなくても包丁がスーッと入り、とても楽に作業ができるから驚きです。
「輪切りがつながる、厚みがそろわない、などの悩みも改善されますよ。野菜がスパッと切れて繊維や組織を必要以上に壊すこともないので、栄養を余さず摂れるのもメリットです。なにより、毎日続く料理の時間が楽しくなります」
まずは基本から
野菜を上手に切るには、包丁の持ち方や立つ姿勢なども大事なポイント。切りはじめる前に確認しておきましょう。
姿勢が安定して余計な力が入らず、包丁をまっすぐスムーズに動かせるなど、切りやすさが違ってきます。
たくさんの野菜を切っても疲れにくく、調理が楽になるのもうれしい。
まな板が動いて切りづらい場合は下に濡れぶきんを敷いて固定しましょう。
包丁の持ち方
包丁の刃元の中央を親指と人さし指でしっかり持つのがポイント。残りの3本の指で柄を握る
立つ姿勢
両足を肩幅に開いて利き手側の足を一歩引き、体がまな板に対してななめ45度ほどになるように立つ。
構え
まな板と体の間は握り拳ひとつ分あけると切りやすい。包丁は、まな板と直角、利き腕と一直線に。
指の置き方
素材を持つ指を軽く丸め、人さし指や中指の第一関節を包丁の側面に当てると、安全で均一に切れる。
包丁の置き方
使わないときは、まな板の奥に刃先を向けて横に置くこと。作業中にひっかけて落とす危険を防ぐ。
切る基本はすべて同じ
どんな野菜の切り方でも、基本は、包丁を「前に押して切る」ことと「角度で切る」ことのふたつ。
包丁を30度くらいの角度で野菜に入れ、力を入れずに包丁の重さを利用して刃を前にすべらせるように「押し切り」にすると、野菜の繊維や組織をつぶさずにきれいに切れます。
切る練習は、下の写真の順番で、難易度の低い「長ねぎ」から行うのがおすすめです。
長ねぎの輪切りで包丁の使い方を覚えましょう
長ねぎ
切りやすい長ねぎは、練習を始めるのに最適です。
長ねぎの輪切りを例に、「押し切り」のやり方を具体的に紹介するので、コツをつかんでください。
ブツッと繊維がつぶれる音がせず、つながらずにきれいに切れれば、上手に切れた証拠です。
長ねぎの輪切り
1 長ねぎを、まな板の中央に平行に置き、左手で軽く押さえる。包丁の刃先を、まな板に対し30度くらいの角度で、ななめに入れる。
2 手首を使って、包丁を前方になめらかにすべらせるように動かす。包丁の角度が30度から徐々に0度に近づいていれば正解。
3 包丁の刃がまな板にすべてつくまで、包丁をすべらせるようにして最後まで切る。これが、基本の切り方の「押し切り」。
4 長ねぎを押さえた手を左にほんの少しずらし、切り幅を調整する。
5 1~4を繰り返して、一定の幅で切る。
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これは NG
力を入れ、包丁を真下に下ろしてつぶすように切ると、長ねぎの繊維が崩れてしまうので避けて。切れる包丁でもつながった輪切りに。
野菜を切る、12の切り方
1 輪切り
素材の皮をむき(素材や料理の種類によっては、よく洗って皮つきのまま ※以下同)、端から一定の幅で切る。
2 半月切り
素材を縦半分に切り、端から一定の幅で切る。半月の形から、こう呼ばれる。
3 いちょう切り
素材を縦半分に切り、さらに縦半分に切ったものを一定の幅で切る。切った形から、いちょう切りと呼ばれる。
4 短冊切り
素材を長さ5~6cm、幅1cm程度の長方形に切り、さらに繊維に沿って2mm程度の薄さに、短冊のように切る。
5 拍子木切り
素材を長さ5~6cm、幅1cm程度の直方体に切る。形が拍子木に似ているので、こう呼ばれる。
6 薄切り
素材を端から幅1~2mmに切っていく。まな板に置いたときに安定しない野菜は、半分に切ってから薄切りにする。
7 千切り
素材を長さ4~5cm程度の薄切りにし、さらに端から細く切る。キャベツは葉を何枚か重ねて丸め、端から切る。
8 くし形切り
球形の野菜を縦半分にし、中心に向かって放射状に等分に切る。櫛(くし)の形に似ているので、この名がついた。
9 みじん切り
千切りにした素材を端から細かく切る。玉ねぎは縦半分に切り芯を残したまま切り口を下にし、縦横に切り目を入れ、根と反対の端から細かく切る。
10 そぎ切り
包丁を寝かせて、素材をそぐようにして切る。切り口の面積が大きくなり、味がしみ込みやすくなる。白菜の芯や、とり肉などにもよく使われる切り方。
11 ささがき
包丁を寝かせて素材の皮をこそげ取り、端から薄く削るように切る。主にごぼうに使われる切り方。切ったごぼうは変色しやすいため、水にさらしておく。
12 乱切り
素材に対してななめ45度に包丁を入れ、野菜をまわしながら、大きさが均一になるように切っていく。縦に4等分してから切ると小さい乱切りになる。
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<監修/阪本三穂 撮影/YUKO CHIBA 取材・文/神坐陽子>
阪本三穂(さかもと・みほ)
週末料理教室こころキッチン代表、シンガポール法人KOKOROKITCHEN PTE.LTD代表取締役。2019年7月よりマレーシアへ移住し、"食"から始まる新時代のWoman'sライフデザインマガジン『AND KOKOROKITCHEN(アンドココロキッチン)』も運営中。東南アジア各地で和食・発酵レッスンも開催。アジアゴールデンスターアワード2018女性企業家賞受賞。全国500名以上が受講した『野菜の切り方レッスン』は今後不定期での開催を予定しています。(最新情報はLINE@/メルマガにて)
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※記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです