ライ麦の芳醇な香りとやさしい酸味が自慢
ドイツ北西部を中心に多くの店舗を構えるドイツの人気店「Schomaker(ショーマッカー)」。そこで2年間修業をした清水信孝さんが、東京・大岡山に本店と同名で2006年にオープンさせたのが、今回ご紹介するパン屋さんです。
店のパンの大半は、清水さんがドイツで学んできたもの。本店から受け継いだレシピを忠実に守ってつくるパンは、ドイツの人ならすぐわかるであろう、本場と変わらぬ味わいです。それを裏付けるように、店にはドイツ人のお客さんが多く、週末に1週間分のパンをまとめて買っていかれる方も多いのだとか。

できるだけオーガニックの材料を使ってつくられるパンは、毎日25種類ほどが並びます

ひっきりなしにお客さんが訪れる人気店。大岡山駅より歩いて5分ほどの場所にあります

パンづくりを一手に担う清水さん。ドイツ語が堪能で、ドイツ人のお客さんと流暢なドイツ語でお話していました
ライ麦を使うドイツパンは、ヘルシーで栄養価が高くここ数年注目の的。でも、なかなかおいしいドイツパンに出合えていないという方も多いのではないでしょうか。
「ドイツパンは、黒くて硬くて酸っぱいというイメージがあると思います。ライ麦の特徴の“黒くて硬い”はしょうがないにせよ、“酸っぱい”はコントロールできるんですよ。それがまだあまり知られていないから、うちではちゃんとやろうと」
看板商品の「ロゲンブロート」は、ライ麦比率がなんと100%。本来なら典型的な“硬くて酸っぱい”ドイツパンになりそうですが、いただいてみると、たしかに酸味がとてもマイルド。それでいてライ麦の香りが高く、噛むごとに旨味がじわーっと広がっていきます。

「ロゲンブロート(細挽き)」は、オーガニックのライ麦を使用。ほかに粗挽きタイプ(全粒粉)もあります
「サワー種(ライ麦由来の天然酵母)は、1日に3回継ぐようにしています。ぬか床は1日1回手を入れますが、それを3回やるようなもんですね。3回手を加えることで、サワー種のなかの酢酸菌や乳酸菌をコントロールできて、酸味がマイルドになるんですよ。1日に1回ぐらいしか手を加えないと、きつい酸味になります」

ライ麦パンを焼くのに欠かせないのが、天然酵母のサワー種。ドイツ本店から譲り受けたものを継いで使い続けています
さらに驚かされたのは、硬さを微塵も感じさせず、生地がしっとりもちもちしていること。聞けば、焼き時間が長く焼き蒸す感じになるため、生地がしっとり柔らかくなるのだとか。
「焼くのに45~50分ほどかかります。日本の一般的なパンは、12分~15分ほどで焼きあがるので、それに比べたら随分長い。1時間近くオーブンを占拠することになっちゃうので、ライ麦100%のパンを、やりたがる店は少ないですね」
また、ライ麦には微量の糖が含まれ、焼けば焼くほど甘くなるという利点もあるのだとか。

人気の「プレッツェル」は、国産小麦を使用。もっちり柔らかく、ほんのり甘さを感じる生地に、シチリア産岩塩が塩気をプラス。ビールによく合う逸品です

「プレッツェル」には、スティックやげんこつ型のタイプも。食感が違うので、食べ比べてみて

店内には修業時代の写真が飾られ、ドイツの職人さんたちとの和気あいあいとした様子が伺えます
ドイツに渡る前は、都内にあるフランスパンのお店で働いていたという清水さん。そのお店では、店の一角でドイツパンも販売していたそうですが、あることに疑問を感じたのだそう。
「そこは人気のお店だったんですが、ドイツ人のお客さんがドイツパンを買っていかなくて。当時はフランスパンの製法は普及していて、技術もすごかったんですが、ドイツパンはたぶん本場のものとは違うんだろうなぁと感じて」
そこで本場の製法を学ぼうと、迷いなく店を辞めて、ドイツに修業に出たそうです。

ライ麦50%、小麦50%の「ベルリーナラントブロート」は、ドイツの食事パンの代表格。小麦は国産小麦を使用

イタリア産マロングラッセの甘さが心地いい「カスターニエ」も、人気の品
ライ麦100%の「ロゲンブロート」を持ち帰って、3日ほどかけて食べてみたところ、しっとりもちもち具合がずっと続き、またまた驚かされました。
本場ドイツの製法と技術をしっかりと受け継ぎ、本物を届けてくる「ショーマッカー」。一度足を運べば、「ドイツパンってこんなにおいしいパンだったの!」と心高鳴り、たちまちドイツパンの虜になるはずです。

<撮影/山川修一 取材・文/諸根文奈>
Schomaker(ショーマッカー)
03-3727-5201
9:00~18:00
月休み
東京都大田区北千束1-59-10
最寄り駅:東急目黒線・大井町線「大岡山駅」
http://www.schomaker.jp/index.html
(通販あり)