自分たちで手を加え工夫をしながら楽しむ暮らし
都心から車で1時間半ほどの里山で、自分たちで自宅を改装しながら暮らしている中村暁野さん。
6年前に、ご縁に恵まれ出合ったというこの家は、バブル時代に建てられた元別荘だったそうです。
壁をぶち抜き、もともと大きい2部屋をワンルームに改装したLDKは、広々としてとても開放的。
そして、壁や扉がヴィンテージ感のある落ち着いたブルーで彩られている印象的な空間です。
その部屋の中心には、今回の取材の主役・ダイニングテーブルが。
ご家族を結ぶコミュニケーションの起点となっているようです(ぜひ、10月号の記事もご覧ください)。
台所とひと続きとなったリビングの窓からは、穏やかに流れる相模川と、川が育んだ豊かな緑が臨めます。
いまは、落ち着いた雰囲気のリビングですが、手を入れる前は、絨毯がピンクだったり、カラオケ用のステージがあったり……。
とにかく変わったつくりでしたが、引っ越しの際には、金銭面もさることながら、限られた時間のなかで心地よく暮らせる環境を整える必要があったといいます。
そこで、“ピンクの絨毯”はそのままに、それを活かし引き立てる色、とセレクトしたのが、リビングの壁や台所の棚や扉を彩っている、味わい深いブルーなのだとか。
「入居前に作業が終わらず、家具を移動しながら自分たちでペンキを塗りました」とほほ笑む中村さん。
家のあちこちに自分たちで手を加えた工夫を感じられ、暮らしながらアップデートしている様子が伝わってきます。
現在のリビングは、ピンクの絨毯ではなくなりましたが、趣のあるブルーの壁は健在。
少し緑みを帯びたブルーは、窓の外の緑ともひと続きのようにも感じられ、幻想的な空間を生み出していました。
わたしたちを隔てる、いくつもの壁
「壁」は、前述の「建物の外周や部屋などを仕切るもの」という意味のほかに、「障害物」という意味も。
『壁の前でうたをうたう』は、「家族」をテーマに執筆を続ける中村暁野さんによる、最新作。
「“壁がない”天真爛漫な娘さんをもつ、隣りに越してきた一家を通して、わたしたちの世界にあるたくさんの『壁』を見つめる」お話です。
暁野さんが「いま、とにかく伝えたいこと、書きたいこと」と自費出版で制作されました。
個人的な感想ではありますが、最後のストレートで核心をつく言葉に思わずはっとさせられ、と同時に、なんて正直で強い方なのだろうと、魅了されずにはいれられませんでした。
ぜひ、読んでいただきたい、おすすめの一冊です。
最後に、取材にご協力いただいたフォトグラファーの近藤沙菜さん、ライターの石川理恵さん、そして中村暁野さん。
誠にありがとうございました。
※ 中村暁野さんほか、「hal」の後藤由紀子さん「solxsol」の 久保浩司さん&松山美紗さん、「laetoli」の井田ちかこさんご出演の「寄り添うダイニングテーブル」は、『天然生活』2022年10月号、P.39~43に掲載されています。
〈撮影/近藤沙菜(書影除く)〉
中村暁野(なかむら・あきの)
一年をかけてひとつの家族を取材する雑誌『家族と一年誌「家族」』を編集するほか、家族をテーマに執筆。また、暮らしを変えるきっかけを生むための小商店「家族と一年商店」を営む。著書に『家族カレンダー』(アノニマ・スタジオ)や、インディーズ出版の『壁の前でうたをうたう』がある。
http://kazoku-magazine.com/
家族と一年商店
https://www.kazoku-store.com