(『天然生活』2023年4月号掲載)
訪ねた人:吉田 愛さん
よしだ・あい
料理家・唎酒師。料理家のアシスタントを経て、東京と京都の日本料理屋で働き和食を学ぶ。独立後は料理教室で講師を務めるほか、雑誌や書籍などで活躍。手軽でおいしいレシピが好評。ふだんより「国産てん菜糖」と「国産さとうきび糖」を愛用している。
てん菜とは
別名ビートやサトウダイコンとも呼ばれるヒユ科の植物で、丸く肥えた大根のような見た目。寒冷地を好み、日本での栽培地は北海道のみ。根を煮出すことで糖分を抽出し、不純物を取り除いて煮詰めたのち、結晶化させたものが砂糖(原料糖)となる。
種まきから収穫までたっぷり愛情込めて
冬の気配を存分にまとった、10月下旬の北海道・安平町。愛澤尚弘さん・明日香さん夫妻は、てん菜収穫の最盛期を迎えていました。
「11月初旬までに終える必要があるので、収穫を開始する10月半ばから連日大忙しです。今年は大きく育ったので、糖度が楽しみですね。うちは千歳にも畑がありますが、こちらは千歳よりも気温がやや下がるため、ここのてん菜の方が糖度が高いことが多いんです」(尚弘さん/以下略)
てん菜は、その大きな葉で太陽の光をめいっぱい浴び、光合成によって根に糖分をつくり出しますが、昼夜の気温差が大きいほど、糖度は高くなります。
しかし、北海道でも暑い夏が続き、夜間もさほど気温が下がらずに、日中との寒暖差が小さくなってきているため、年々糖度は下降傾向にあるのだとか。
それでも16度以上という、さとうきびよりも高い平均糖度を蓄えるてん菜。1年ぶりに試食した吉田さんも、「うん、やっぱりおいしい! 特徴的な風味のなかに、甘味をしっかり感じられます」とにっこり。
ふだん、てん菜を食べることはないと話す夫妻も、ポリポリと食べ進む吉田さんに驚きながら、その感想に思わず笑みがこぼれました。
さまざまな循環の輪が仲良く重なる、てん菜栽培
愛澤さんのてん菜栽培は、3月中旬から始まります。まずポットに種まきし、ハウスで育苗。4月末から畑に苗を移植し、1年足らずでここまで大きく育てます。それはほかならぬ、夫婦の努力の賜物。なかでも土づくりは重要です。
「てん菜には肥沃な土が必要です。鶏糞などの有機肥料を畑ごとに配合を変えて混ぜ込みますが、近隣の酪農家にもらう牛糞も、良質な土づくりに欠かせません」
病気や害虫の発生を防ぐため、てん菜は、同じ畑で異なる作物を順ぐりに育てる、 “輪作” という栽培方法をとります。
「この畑では来年は大納言、その次は春まきの小麦、そして再びてん菜という3年サイクルで作物を育てています」と尚弘さん。
この小麦栽培の過程で出る麦稈(ばっかん)[=麦藁(むぎわら)]が、先の酪農家からもらう牛糞の、いわば “お返し” 。
「酪農家は、牛たちの寝床として、敷き藁に使うんです」
てん菜には捨てるところがありません。根は砂糖に、茎と葉は土にすき込み、翌年植える作物の肥料に。糖分を抽出したあとのてん菜すら、ビートパルプとなって家畜の餌に再利用されます。
地域との循環、輪作という畑の循環、そして、作物丸ごとを余すことなく次へと生かす、てん菜そのものの循環。
あらゆるところでぐるりと循環する輪が、仲良く重なるてん菜栽培。私たちの口に甘い幸せを運ぶてん菜は、その栽培過程を通しても、心に温かな気持ちを灯してくれたのでした。
てん菜糖ができるまで
畑から工場へ集荷後、きれいに洗ってスティック状にカット。抽出→ろ過→濃縮→分蜜と工程を進める。分蜜の際に出る蜜分の、 “てん菜糖蜜” と結晶化した砂糖を合わせたら、「国産てん菜糖」の完成
抽出
↓
ろ過
↓
濃縮
↓
分蜜
吉田さんのてん菜糖を使った料理
ふんわりやさしい「国産てん菜糖」とこっくり豊かな「国産さとうきび糖」。口福な2つの甘味を使い分けます。
今回は、てん菜糖を使った「玉子サンド」と「豆乳杏仁豆腐」のつくり方を紹介します。
玉子サンドのつくり方
てん菜糖は卵のうま味を引き出す程度に抑え、辛子でキリリとアクセント。
材料(2人分)
● 食パン(8枚切り) | 2枚 |
● 卵 | 3個 |
● A | |
・マヨネーズ | 大さじ1 |
・練り辛子 | 小さじ1/2 |
● B | |
・だし汁 | 大さじ2 |
・国産てん菜糖 | 大さじ1/2 |
・しょうゆ | 小さじ1/2 |
・塩 | ひとつまみ |
● サラダ油 | 適量 |
つくり方
1 Aを混ぜ合わせ、食パンに半量ずつぬる。
2 ボウルに卵を割り入れてほぐし、Bを加えて混ぜる。
3 フッ素加工の卵焼き器を中火で熱し、油を含ませたキッチンペーパーで、全体に油をなじませる。2を半量流し入れ、ヘラなどで大きく混ぜて半熟状になったら奥半分によせる。空いたところに油をぬり、残りの2を入れ、奥によせた卵の下にも流し入れる。手前を大きく混ぜて、ほとんど火がとおったらフライ返しで奥から手前に半分に折りたたむ。
4 3を1にはさみ、パンの耳を切り落とし、食べやすい大きさに切る。好みでパセリ(分量外)を添える。
豆乳杏仁豆腐のつくり方
豆乳を使った、もっちり食感の杏仁豆腐。杏仁の香りを大豆のうま味が支えています。
材料(4個分)
● A | |
・豆乳(成分無調整) | 300mL |
・国産てん菜糖 | 35g |
・杏仁霜 | 20g |
● 粉ゼラチン | 5g |
● 生クリーム | 100mL |
● B | |
・水 | 100mL |
・国産てん菜糖 | 20g |
● クコの実(適量の湯でもどしたもの) | 適宜 |
つくり方
1 ゼラチンは水大さじ1(分量外)を加えてふやかしておく。
2 鍋にAを入れて中火にかけ、混ぜながら沸騰直前まで温める。
3 火をとめ、1を溶かし入れてこす。生クリームを加えて混ぜ、容器に均一に注ぎ、冷蔵庫で冷やし固める。
4 Bを小鍋に入れてひと煮立ちさせ、粗熱がとれたら冷蔵庫で冷やしておく。
5 3に4をかけ、好みでクコの実をのせる。
てん菜糖をつかってみて
「『国産てん菜糖』は、素材の味を引き立てるのが得意な、やわらかな風味とすっきりした甘味が特徴です。今回は、卵のうま味と豆乳の大豆のうま味を生かしたくてこれを使いました。素材のうま味が際立つ、バランスのよい風味と甘味を加えたいときに、ぜひ!」
国産てん菜糖
スプーン印の国産てん菜糖・国産さとうきび糖、特設サイト
以下のページで、「国産てん菜糖」、「国産さとうきび糖」のスペシャルコンテンツが見られます。製造工程の詳細やレシピを紹介しています。ぜひ、ご覧ください。
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〈撮影/林 紘輝 取材・文/遊馬里江 イラスト/はまだなぎさ〉
提供/DM三井製糖
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