(『天然生活』2023年4月号掲載)
訪ねた人:吉田 愛さん
よしだ・あい
料理家・唎酒師。料理家のアシスタントを経て、東京と京都の日本料理屋で働き和食を学ぶ。独立後は料理教室で講師を務めるほか、雑誌や書籍などで活躍。手軽でおいしいレシピが好評。ふだんより「国産てん菜糖」と「国産さとうきび糖」を愛用している。
さとうきびとは
沖縄の言葉では「ウージー」と呼ぶイネ科の植物で、節のある長い茎が特徴。温暖・多湿な気候でよく育つため、日本では沖縄県や鹿児島県で栽培。糖分を蓄えている茎を砕き、搾り取った汁をこして煮詰め、結晶化させたものが砂糖(原料糖)となる。
雑草と枯葉取りも、手作業でていねいに
12月の沖縄。
期待した暖かさはやすやすと裏切られ、沖縄本島の南端、糸満市・喜屋武(きゃん)では、寒さに耐えながら小堀端(こぼりばた)義信さん・美智子さん夫妻が、ちょうどさとうきびの収穫を始めたところでした。
「日曜日は子どもも手伝うけど、ふだんはひとりでさとうきびを運んだりするから、大変さあ。枯葉も全部手で切り落とすし、苦労はいっぱい」と冗談まじりに話す義信さんに、「でも収穫は楽しいよう」と美智子さんが微笑みます。
さとうきびは、成熟した茎2節分(30cm)ほどを、挿木の要領で春か夏に植えて育てる方法と、株出しといって、地上部の茎を収穫後、地中に残した株から自然と発芽するのを待ち、再び栽培、収穫を繰り返す方法があります。
株出しは、なかには10年ほど繰り返して再生株を育て、収穫する達人もいるそうですが、平均は3~6年ほど。こちらの畑では、一昨年の夏に茎(苗)を植えてから今回が2回目の収穫で、来冬の3回目の収穫後は、にんじんを植えるそうです。
「寒かったり、雨が少なかったりすると、植物の持つ生存本能が刺激され、糖度がぐっと上がります」とは、地元、製糖会社の方のお話。
そこで今回収穫したさとうきびの糖度を測ってみると、すでに例年の平均糖度並みの、13.4度もありました。
さっそく吉田さんがお味見です。かたい皮をむいてもらい、かじってみると……。
「わあ、甘い汁がジュワッと出てきました。すっきりとした甘味で、苦味や雑味はまるでなく、ずっとかじっていられますね!」
みんなにやさしい利他的な植物、さとうきび
さとうきびは、土にやさしい植物です。土壌の養分をさほど必要とせず、おひさまの力で甘みを蓄えます。
この地域では、小堀端さんと同じように、さとうきびとにんじんを輪作する農家が多いですが、それはにんじんが土の養分を吸い取るから。
さとうきびを植えることで痩せた土壌を休ませ、畑を回復させるというわけです。
「うちは除草剤を使わず、雑草は全部手で抜くしね」と義信さん。ご夫婦の細やかな仕事もまた、健やかな畑づくりを支えています。
さとうきびは、捨てるところがありません。枯れ草や葉は土に戻して肥料に、搾りカス(バガス)は工場の自家発電に必要な燃料に。
砂糖をつくる過程で出た不要な糖蜜は、家畜の飼料になるほか、エタノールとなり、CO2排出量の少ないエコ燃料として活躍しています。
SDGsが叫ばれるよりもずっと昔から、土にもほかの作物にも、地球環境にもやさしい、さとうきび栽培。
さとうきび糖のおいしさは、そんなさとうきびの利他的なやさしさと、手間ひまかけて栽培に励むさとうきび農家の、確かな愛情から成り立っていました。
さとうきび糖ができるまで
工場へ搬入後、葉の残っているさとうきびは機械で除去し、茎だけを裁断機やシュレッダーなどで細かく砕く。圧搾→結晶(原料糖)→ろ過(洗糖)→加熱濃縮と進めたら、「国産さとうきび糖」のでき上がり
圧搾
↓
結晶(原料糖)
↓
ろ過(洗糖)
↓
加熱濃縮
吉田さんのさとうきび糖を使った料理
ふんわりやさしい「国産てん菜糖」とこっくり豊かな「国産さとうきび糖」。口福な2つの甘味を使い分けます。
今回は、さとうきび糖を使った「牛と新じゃが、スナップエンドウの甘辛炒め」と「どらやき」のつくり方を紹介します。
牛と新じゃが、スナップエンドウの甘辛炒めのつくり方
白いごはんがどんどん進む甘辛炒め。豊かな甘味をとうがらしが引き締めます。
材料(4人分)
● 牛切り落とし肉 | 250g |
● 新じゃがいも | 中2個(200g) |
● スナップエンドウ | 150g |
● にんにく(みじん切り) | 1片分 |
● 赤とうがらし(種をとる) | 1本 |
● 片栗粉 | 大さじ1 |
● A | |
・しょうゆ、酒 | 各大さじ2 |
・国産さとうきび糖 | 大さじ1 |
● サラダ油 | 大さじ1+大さじ1と1/2 |
つくり方
1 新じゃがいもはよく洗い、皮ごと1cm角の棒状に切って水にさっとさらし、水気を切る。スナップエンドウはへたと筋をとる。牛肉に片栗粉をまぶす。
2 フライパンにサラダ油大さじ1を中火で熱し、新じゃがいもを入れて1分ほど炒める。すき通ってきたらスナップエンドウを加えてさっと炒め合わせ、水大さじ2(分量外)を加えて蓋をし、2分ほど蒸し焼きにして一度取り出しておく。
3 フライパンをさっと洗い、サラダ油大さじ1と1/2とにんにくを入れて中火で熱し、香りがたったら牛肉ととうがらしを加えてほぐしながら炒め、肉の色が変わったら2を加えて炒め合わせ、Aを加えて絡める。
どらやきのつくり方
「国産さとうきび糖」にはちみつを合わせて、しっとり風味よく焼き上げました。
材料(4個分)
● 卵 | 1個 |
● 国産さとうきび糖 | 30g |
● はちみつ | 大さじ1 |
● 重曹 | 小さじ1/4 |
● 水 | 大さじ2 |
● 薄力粉(ふるっておく) | 70g |
● 粒あん(市販品) | 120g |
つくり方
1 ボウルに卵を割り入れ、国産さとうきび糖とはちみつを加えて泡だて器ですり混ぜる。
2 重曹を分量の水でといてから1に加えて混ぜ、薄力粉を加えて粉っぽさがなくなるまで泡立てないように静かに混ぜる。ラップをかけて常温で30分やすませる。
3 フッ素加工のフライパン(またはホットプレート)を弱めの中火で熱し、2を大さじ1強ずつ流し、蓋をする。表面に穴があいてきたら蓋をとって上下を返し、30秒ほど焼く。これを8枚焼く。
4 3を2枚1組にし、粒あんを1/4量ずつはさむ。
※ できたものは乾燥しないようラップで包むとよい。
さとうきび糖を使ってみて
「『国産さとうきび糖』は、コクを感じる、奥深い風味が特徴のお砂糖です。甘味をこっくりと効かせたい時や、味に奥行きを出したい場合は、こちらがおすすめ。また、より焼き色がつきやすいので、どらやきのおいしそうな見た目にも一役買ってくれました!」
国産さとうきび糖
スプーン印の国産てん菜糖・国産さとうきび糖、特設サイト
以下のページで、「国産てん菜糖」、「国産さとうきび糖」のスペシャルコンテンツが見られます。製造工程の詳細やレシピを紹介しています。ぜひ、ご覧ください。
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〈撮影/山田耕司、林 紘輝 取材・文/遊馬里江 イラスト/はまだなぎさ〉
提供/DM三井製糖
➿0120-310-318(月~金曜10:00~16:00、土・日曜、祝日休み)