体の状態を知るために、区の健康診断を受けてみることに
先日、住んでいる区の健康診断を受けました。問診票に「前回、検診をうけたのはいつですか?」の問いがあり、思いめぐらせたところ「15年」という時間にたどり着き、自分でもおどろいています。
会社に勤めていた時は、会社が行う健康診断を受けていました。フリーランスになってからは、人間ドッグを受けていた時期もあります。結果で再診になることも時にはありましたが、概ね問題はなく、受診にかかる時間や食事制限、病院までの距離、ちょっとした痛みや対応などで、いつの間にか検診を受けなくなっていました。
今回、健康診断を受けようと思ったのは、やはり、年齢です。60歳目前になり、自分の体がどのような状態なのか知っておきたいと思ったのです。また、検診を受けられる指定の医療機関が多くなり、各病院の評価もインターネットで調べられるようになりました。病院で検査の際、待ち時間が長いなどで疲れてしまったことはありませんか? 評価がわかるようになり、選択肢が増えたことが受診のハードルを低くしてくれたと感じています。
病院選びには、わたしのために「帰りの楽しみ」を
選んだ病院は、オフィスビルの一角にあるところです。そのビルには何度か行ったことがあります。老舗のフルーツパーラーが入っているからです。病院に行くのは、例え検診だとしても(検診だからか)、わたしには少々気が重く、そのため「帰りのたのしみ」をつくりました。それが、フルーツパーラー。また、何かあった時、通院するかもしれません。そんな時、寄れる「場」がある方がいいと考えました。
「場」。これは、家族の病院通いの際、学んだことです。入院や通院している際は、急なことが起こります。突然、呼び出されることもあれば、何かを告げられる場面もあります。そんな時、立ち寄れる場所、気持ちを整えられる空間がひとつあるだけで、こころ持ちが変わります。そこで、あたたかい飲み物を1杯だけでも手にできれば──。それだけで「自分のできることをしよう」と、気持ちを切り替えられることがあるのです。
亡くなった母は、わたしが小学校低学年の時、入院していた時期があります。そんな環境だったので、病気は特別なものでなく、誰でもなる可能性があるとこどもの頃から受け止めています。自分の体に関しても「弱い」と感じている部分があっても「弱い」とは捉えず「体が早めに教えてくれている」と考えています。「教えてくれている」のだから、その声を聞いて、対応し、うまくつき合っていけばいい、と。
年齢を重ねて健康について考える
年齢を重ねると、それに伴い、痛みがでたり、免疫も低下します。そのことについても、うまくつき合っていければ、と同じように考えています。
「場」のことも、体の捉え方も、経験から学んだことです。これからは、どちらも必要なこと。経験は、時間とともに、自分を助けてくれますね。健康診断を機に、病院について、体そのものについても、もう少し考えることにしました。
実際、検診を受けてどうだったかと言うと、驚くほどスムーズでした。場所柄なのかもしれませんが、受付はホテルのフロントのよう。新しいスリッパ、ゆったりした検診ウエア、待合もしずかで落ち着いています。ていねいな案内、検診自体もあっという間に終わりました。
今回の検診がスムーズだったので、同じ病院で、別の検査もすることにしています。こちらも区の健康診断です。受診後のフルーツサンドをたのしみに、年1回、検診をつづけるつもりです。
60歳までのメモ
1自分の体の状態を知る
2 通いやすい、ストレスの少ない病院を探しておく
3 友人、知人から情報を教えてもらう
4 自分の体とうまくつき合う方法を見つける
5 日々のメンテナンスとケアを忘れずに
広瀬裕子(ひろせ・ゆうこ)
エッセイスト、設計事務所岡昇平共同代表、other: 代表、空間デザイン・ディレクター。東京、葉山、鎌倉、香川を経て、2023年から再び東京在住。現在は設計事務所の共同代表としてホテルや店舗、レストランなどの空間設計のディレクションにも携わる。近著に『50歳からはじまる、新しい暮らし』『55歳、大人のまんなか』(PHP研究所)他多数。インスタグラム:@yukohirose19