二十四節気とは
太陽の動きを基にして、一年を二十四に分けて季節の移り変わりを表したもので、中国から日本に伝わりました。もともとは農業のために季節感を正確に把握するために使われていたもの。二十四節気を意識すると、季節をより身近に感じることができます。
<雨水>のハマグリの茶碗蒸し
二月十九日〜三月四日ごろ。
雪が溶けて雨になって大地に降りそそぎ、大地が目覚め始める頃。
農耕を始める季節でもあります。
暖かい日が少しずつ増えていき、木々が芽吹く準備をはじめ、梅が見頃をむかえます。
ひな祭りは、もともと人形(ひとがた)に厄をうつして流していた行事なので、水に縁の深い行事です。
そのため水が豊かな雨水にお雛人形を飾り始めると良縁に恵まれるといわれています。
ひな祭りにいただくハマグリは春に美味しい時期をむかえ、良縁の象徴です。
旨味たっぷりのハマグリのおだしを堪能できる茶碗蒸しをご紹介します。
しみじみ美味しい一品です。
春は体も目覚めて不調が起きやすい季節。
体に溜まった熱や不要なものを外に出して流れをよくし、潤い、血液を補うものをとりましょう。
ハマグリは潤いを補ってくれ、熱をとってくれます。
血も補ってくれる鶏卵に解毒作用のある三つ葉を添えて。
食後にはこの季節においしい柑橘を召し上がってください。
柑橘のいい香りは気を流してくれます。薬膳の考え方で五味(酸(さん)・苦(く)・甘(かん)・辛(しん)・鹹(かん)*)という五つの味がありますが、酸味は春にとるといい味です。
*塩辛い味のこと
「ハマグリの茶碗蒸し」のつくり方
材料(4人分)
● ハマグリ | 大3〜4個 |
● 昆布 | 10cm角 |
● 卵 | 2個 |
● 薄口しょうゆ | 少々 |
● 三つ葉 | 適量 |
つくり方
1 ハマグリは砂出しをしてよく洗う。
2 鍋に1と昆布、水300mL(分量外)を入れて火にかける。アクがでたら取りのぞき、ハマグリの口が開いたらハマグリの身を取り出す。
3 2をこしてだしを400mLに調整し(足りない場合は水を足す)、味見をして薄口しょうゆで味をととのえる。
4 卵を溶きほぐして3のだしを混ぜてこし、器に注ぎ分けて蒸気の上がった蒸し器に入れる。蒸し器のふたにはふきんを巻く。
5 強火で2分弱蒸し、表面が白っぽくなったら弱火にして5〜7分ほど蒸す。
point
茶碗蒸しは表面が白っぽくなるまでは強火で蒸し、そのあとはごく弱火で全体がかたまるまでしずかに蒸します。
6 2のハマグリの身を半分に切って静かにのせ、三つ葉を飾る。
雨水の薬膳
春は五臓でいうところの<肝(かん)>という臓器に負担のかかる季節。
<肝>は血の貯蔵庫であり、自律神経を司っています。
春にイライラしたり頭痛がしたり、落ち込んだり、不眠という不調が多いのはそのせい。
目のトラブルも多くなります。
香りのいい野菜や柑橘で気を流して、苦味のある春野菜で解毒しましょう。
血や潤いを補ってくれる貝類やタラやイカ、イワシなども食べて。
目が充血したり痛い場合は菊花茶がおすすめです。
荒木 典子(あらき・のりこ)
料理家。国際中医薬膳師。青果卸を営んでいた料理上手の祖母と、母の影響で食に関心のある環境で育つ。神戸女学院大学文学部を卒業してフランスへ留学し、帰国後調理師学校にて料理の基礎を学び、調理師免許を取得。その後、上京して料理本の編集者として働いたのち、2007年に料理家として独立。
現在は書籍やテレビの仕事を中心に、企業へのレシピ提供、料理店の監修などの仕事とともに、和食のお料理教室を主催。季節のていねいでシンプルな料理をモットーに、家庭でできる日本料理と洋食などレシピを提案する。また、おせち料理をライフワークとし、ほかにお雑煮の会を主催。著書に『いちばんくわしい 基本のおせち料理』『炊き込みごはん』(ともに成美堂出版)などがある。
インスタグラム:@aranoric
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