白い髪になったら新しい服を買おうと決めていたけれど
自分本来の髪色──白い髪──になったら新しい服を手にしよう。この2年、そう思い新しい服を買ってきませんでした。理由は、髪色の変化で似合う色が変わるかもしれない、ということと、服への考え方も変わるかもしれない。そう思ってのことです。
春。カラーの残り部分をカットして、気持ちも新たに「さあ」となりました。なりました、が、意外なことに、新しい服がほしいという思いが湧いてきませんでした。
この2年、新しい服を買わなくても特に困らなかった、というのがあります。髪色は変化しましたが、そのことで「新しい色の服を」という思いがそれほど強くならなかった、というのもあります。そもそも、お店へ出向いていません。とにかく「自分本来の髪色になったら服を買おう」には、ならなかったのです。
反対に──買わないことで服の数が増えない気持ちよさや、日々同じ装いをつづける快適さ、「これがわたしのスタイル」と思えるようになったことなど、気がつかないうちに価値観がシフトしたのかもしれません。
ひとつだけ新しく購入したもの
そんな中でもひとつだけ新しく手にしたものがあります。フレンチスリーブの白いTシャツです。新しい服と言うより、かつて持っていたものと同じ型、同じ色。夏になると毎日のように着て洗濯をするので、3枚購入しました。この夏用の服の買い物は、これでいい、と思っています。
歳上のすてきな方たちは、様々な色を着こなしています。歳を重ねたら「明るい色を」とアドバイスしてくれます。ファッションを型にはめない、それが大事とも言います。そういう姿や言葉を目にすると、ほんの少し、大丈夫かな? わたし? と思うのです。
年齢を重ねていくことで、いつしか消極的になっていく、好奇心が薄れていく。そういうことがあります。もしかして、そうなっているのではないか、と思うのです。
そういう時は、服、装うということについて、今一度思いをめぐらせます。自分はどうありたいか、どうしたいのか、何がすきで、心地いいのか、と。そして、改めてクローゼットに視線を移すと「今はこれがいい」と思うのです。
欲しい服がないわけではありません。部屋着がそろそろだめになりはじめているので新しいものを、と思っています。梅雨を前にレインコートを、とも考えます。クーラー対策に軽く羽織れるものもあると便利です。そうなんです。「新しい服」というより「必要なものを」という理由のほうが、大きいのです。
いまの気持ちをゆっくり見守る
「髪の色が変わるまで」と考え、新しい服を手にすることをやめてきましたが、こころのどこかでは「60歳になるまで」と実は思っているのかもしれません。または「持っている服で十分」と感じている先に、さらに「もっと少なくしたい」とそちらを目指しているのかも?! しれません。
いくつかの理由や思いの変化はありますが、答えがでないままでいます。そういう時は、静かに自分の気持ちを見守るのが一番。
白い髪になって初めての夏は(今年も酷暑のようですね)、いままでとそう変わらない服で、それでも快適に、機嫌よく過ごしていけたらと思います。
60歳までのメモ
1 「服」というもの「装う」ということについて見直してみる
2 クローゼットの整理を改めてしてみる
3 「年齢に合うTPO」について考えてみる
4 「これからの時間」と「服」に思いをめぐらす
5 気持ちがいい、気持ちが上がるなど、自分に合った選び方を見つける
広瀬裕子(ひろせ・ゆうこ)
エッセイスト、設計事務所岡昇平共同代表、other: 代表、空間デザイン・ディレクター。東京、葉山、鎌倉、香川を経て、2023年から再び東京在住。現在は設計事務所の共同代表としてホテルや店舗、レストランなどの空間設計のディレクションにも携わる。近著に『50歳からはじまる、新しい暮らし』『55歳、大人のまんなか』(PHP研究所)他多数。インスタグラム:@yukohirose19
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