行き場のない猫たちを、新しい家族が見つかるまでの間自宅でお世話をする「猫の預かりボランティア」。小禄広海さんは、鎌倉と逗子の境にあるちいさな港町でお菓子づくりをする傍ら、保護猫活動の一環として「猫の預かりボランティア」を行っています。広海さんがお世話をする“預かりっ子”たちとの日常をつづった「ねこおば日記」。今回は、助けが必要な猫を見つけた時の話をお届けします。
我が家に来た“預かりっこ”たち
梅雨ですね。
毎年の事ですが、我が家にも子猫が来ている。
まずは神奈川県の愛護センター経由で、捨てられていた子たち4匹。
当初は200gあるかないか。目もぐしゃぐしゃだったのが今は1キロ近くになり、お陰さまで里親も決まっている。
あともう1匹、最近来た子は東京から。
里親さんの友人家族が柵に挟まっていたところを保護したそうで、預かりを頼まれた。1匹で成長するよりも他の子猫と一緒に成長したほうが良いし、4匹も5匹も変わらないので引き受けることにした。
神奈川県だけの話になるが、今年は愛護センター、いわゆる保健所と言われているところへの子猫の持ち込みが激減、まだ数件しかないらしい(日本全国でいえばセンター持ち込みはまだまだ沢山あると思う)。
どういう事かというと、避妊去勢が当たり前になり、産まれる子が減っているのもあるが、それ以上に、以前は子猫を保護したら警察などに連れて行く人が多かったのが、今はSNSなどを駆使して自分でなんとかする人が増えたのではと思う。
前述の我が家に来た1匹もしかりだし、最近は里親さんのお友達の家に親子猫5匹が現れて、どうしたらよいかと相談を受けた。
助けが必要な猫を見つけたら?
まずはカメラで観察。いまは高性能なカメラが安く手に入る。といっても私はいつも友人から借りているのだが。
思えばかつて、先輩のアナログでクレイジーな猫おばさん(最上の褒め言葉)は、それこそ段ボールを敷いて、仕事上がりの真夜中に草むらに横たわって猫を待っていたものである。
元々は鎌倉の令嬢の、当時50過ぎのおばさんが、である。あの人なら今もやりかねないが、そこまでの域に達していない凡人にとっては、ほんとうに便利な世の中になったものだ。
ちなみに親子猫の住まいは現れた家の2軒先の空き家の縁の下で、ママはそこから塀を登ってご飯を食べに来るようになった。子猫を連れてくる時もあれば来ない時もある。
そのなかに1匹、一緒について来たものの、塀が高いために空き家に戻れなくなった子(茶トラ)がいて、現れた家の物置の下に隠れていた。
にもかかわらず、お母さんはお腹を満たしたら、毎回息子を気にかける様子もなく(苦笑)、空き家に帰っていく。
置いてきぼりの子猫は、人が現れると物置の下に隠れて手が届かない。ところが、「素手で捕まりました」と連絡があった。あとから聞くと、その家の息子さんがYouTubeで見つけた、“絶対に猫が寄ってくる音”というのを流した途端、なんとその携帯にスリスリしてきたという。素直すぎないか(笑)。
“絶対に猫が寄ってくる音”が必須アイテムに
そんなわけでまずその子が捕まったのだが、それすら母猫は全く気にせず探さなかった。あなたはここの家の子になればいいから、と言っているようだった。
その後、計画より早くママをお家の方が捕まえてしまうというハプニングがあったが、先輩2名の力添えもあり、残りの子猫3匹も次の日には捕まった。
空き家の縁の下に2匹が隠れて全く姿が見えなくなった時、 また“絶対に猫が寄ってくる音”を流してみたら、子猫たちがわーわー鳴き出して、出てきたのだ(笑)。
これはもう、今後も使える必殺アイテム決定。猫おば部員のみなさんもぜひ検索してみては。
なお、現在、親子はその家の方が預かってくれている。
初めての事ばかりで大変だと思うが、ママに置いてきぼりにされた子はその家の3匹目の子になると思うし、子猫2匹は新しい家族(猫がすでに2匹いる家)が決まったようだ。
もしかしたら、ママと残りの子猫1匹はうちに来てゆっくりと家族を探すことになるかもしれない。
今回は、助けが必要そうな動物を見つけたら、誰でもやる気と愛情があれば何とかなるし、ひとりが10背負うより10人で1つずつ運べばよいよね、という話でした。
でも、社会が、動物に対してだけじゃなくて、いろいろな問題に対してもそうであって欲しいと切に願う。
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小禄広海(おろく・ひろみ)
幼少の頃からお菓子作りが好きで、Bakeromi(ベカロミ)という名前で活動中。現在は鎌倉、材木座にあるカフェに毎日お菓子を納める傍ら、猫の預かりボランティアを中心に保護活動もする、バタバタな毎日。来世はやはり家猫になりたい。
インスタグラム@catladyorock、@bakeromi