(『天然生活』2021年1月号掲載)
自分の家だから、家具も空間も手を加えて自分好みに
奈良を拠点に薬膳料理の講習を続けるオオニシ恭子さん。7年前に出合った築約百年の古民家にキッチンスタジオを設け、自分らしい暮らしを楽しんでいます。
汚れをさっとふき取れるタイルと収納力抜群の和箪笥を合わせた調理台は、オーダーによるオリジナル。
鮮やかなブルーと経年変化した木の質感が、昔ながらの日本家屋にしっくりとなじんでいます。
「こういうものが欲しい、と思ったら諦めないで考えます。既製品になければつくるしかないですね」

江戸期の和箪笥と伊賀焼のタイルを合わせた、特注のキッチン。シンクやコンロ、グリルも備わる。秋や冬には野菜は長持ちするように、水を入れたコップに立てて保存することも

昔の箪笥には扉や引き出しがたくさんあり、細々した調理道具の収納にはぴったり。開くと音が鳴るカラクリ式の引き出しも
調理台は大工さんにお願いしたそうですが、すき間にぴたりと収まった調味料ラックや引き出し付きの収納テーブルは、自ら木材を調達し、手づくりしたもの。
ほかにも、布団箪笥に棚板を付け足したり、壁にネジを打って調理器具を吊るしたり、家具や空間に手を加え、使いやすくしています。
「多少曲がったりしても、自分好みにできる。自分の家ですからね」

教室でよく使う調味料は、シンク後ろの手づくりの棚に
自由な発想とひらめきで、暮らしをデザインしていく
日々の炊事を担う奥のプライベートキッチンも、必要な道具がすぐ取れるなど、工夫されています。
「料理はタイミングが大事。道具が重なっていたり、奥にあったりしたらダメ。ふたもね、木材を取り付けて壁とのすき間に収まるようにしたら、とても便利なんです」
この、ひと目で見つけられ、さっと取り出せる合理的な整え方は、衣類の丸めた収納や、木箱に茶器をまとめておくことにも通じます。

学生時代の英語の先生宅で目にして以来、実践している収納法
アイデアをどんどん生かし家事ストレスを減らす一方で、遊び心を発揮した工夫もあちこちに。
木戸いっぱいに描かれた「料理の樹」。壁を彩る野菜や果物の切り絵。空想の世界を形にする創作は、オオニシさんの楽しみでもあります。
無理せずに家事と向き合うために。いつでも気分よく過ごせるように。
オオニシさんは自分自身で手を動かす醍醐味も存分に味わいながら、自由に、おおらかに、暮らしをデザインしています。

娘時代の着物を自身でパンツにリメイクした「モンパ」は、お気に入りの日常着。「とても動きやすくて、体も楽なんです」
オオニシさんの「心の整え方」
空想の物語を絵に起こす
ノートに書き留めるほか、iPadを使いこなして配信もしているそう。「これは架空の宇宙船。私と猫が旅する物語です」。

会話を楽しむ、お茶時間
「奈良の無農薬の釜炒り茶が好きですね」。お客さまに茶器を選んでもらい、おしゃべりしながらあれこれ飲み比べることも。

大好きな三味線を弾く
お母さまから譲り受けた三味線を無心で弾く時間は、一番のストレス解消に。「最近また習い始めました。すごく楽しいです」。

〈撮影/辻本しんこ 取材・文/山形恭子〉
オオニシ恭子(おおにし・きょうこ)
自身の手荒れをきっかけに食養法を学ぶ。1981年に渡欧しベルギーなどで「ヨーロッパ薬膳」を指導。2013年より奈良に移住、「やまと薬膳」の活動を始める。
※記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです