お菓子をめぐる、フランスのクリスマス
フランスのノエルの支度は、12月25日の第4週前から始まります。
12月初旬にプロヴァンスの家庭では麦粒を蒔き、サントン人形を飾ります。マルシェで山積みとなる地中海産の干果物と砂糖漬けは、この地方特有のイブのメニュー「13種のデセール」のためのものです。
一方、アルザスでは、行事にちなむパン菓子や何種類ものビスケットが店に並び、家庭でのお菓子作りも盛んな土地柄なので、香辛料が混じり合うふくよかな匂いに包まれて12月を過ごします。
ノエルの到来を待つこの時期のことは、日本でも「アドヴェント」という呼び名で知られるようになりました。
Bûche de Noël ビュッシュ・ド・ノエル
フランスと近隣国のスランス語圏に伝わる薪の形のクリスマスケーキ。
19世紀初めにパリ、サンジェルマン・デ・プレの見習いパティシエが創作したともいわれ、20世紀半ばにはフランス全土に広まりました。
以前はチョコレートケーキやコーヒー風味のバタークリーム仕立てのものが主流でしたが、近年は氷菓やムース仕立て、フルーツを使った華やかなものなど多彩になりました。
Christstolle シュトレン
「シュトレン Stollen」は、ドイツとアルザスのクリスマスシーズンの伝統的な発酵菓子で、粉砂糖で覆う白い仕上げは、おくるみをまとった幼子イエスの姿をあらわしたものといわれています。
原型は14世紀初めの棒状のシンプルな白いパンで、そこにレーズンや木の実、バターが加えられて祝い菓子に発展し、16世紀以降に「クリストシュトレン Christstollen」「クリスマスシュトレン Weihnachtschtsstollen」と呼ばれるようになりました。
【著者・青山翠さんからのメッセージ】
フランスやヨーロッパのノエルのお菓子のなかで、今も古き伝統を伝えるフランス・アルザス地方のお菓子を多く扱っています。お菓子づくりの愛好家のみなさまだけでなく、クリスマスの文化にご関心をおもちの方にもお手にとっていただけたなら幸いです。綺麗な赤とゴールドの帯の、ノエルならではの愛すべき装丁、贈りものにもおすすめです。どうぞ、よろしくお願いいたします。
<料理/青山翠 写真/キッチンミノル>
※ 『ノエルの菓子』(青山翠著/アノニマ・スタジオ)からの一部抜粋記事です
クリスマスに作りたい、贈りたい、お菓子レシピ集の決定版。一年のなかで一番お菓子を作ったり、贈ったり、食したりする機会が多いクリスマスシーズンがやってきます。本書では、美しい写真と丁寧なプロセスカットで、厳選した32の菓子をご紹介します。クリスマスの前から仕込むオーナメントになるビスケットや焼き菓子、シュトレンやフルーツケーキ、ビッシュ・ド・ノエル、クグロフなどのケーキやパンを収録しています。巻末には「お菓子作りの基本」「フランスの12月のお菓子と暮しA-Z(知っておきたいキーワード)」も掲載。
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青山翠(あおやま・みどり)
菓子研究家、CAPパティシエ(フランス国家資格)。東京生まれ、フランス・ボルドー在住。フランスのパリで製菓、イギリスのロンドンでテーブル装飾を学ぶ。東京とボルドーで日仏の食文化の紹介、製菓レッスンを開催している。著書に『プラリーヌ』(文化出版局)がある。
インスタグラム:@le_vent_des_coquelicots