• 体形が変わり、いままで似合っていたものが急にしっくりこなくなったり、何を着ればいいのかわからなくなったり。歳を重ねておしゃれの軸に迷ったとき、何を大事にすればいいのでしょうか? 星ヶ丘洋裁学校、学校長の足立典子さんに、いまの“自分らしい”装いについてお聞きしました。
    (『天然生活』2022年12月号掲載)

    “私仕様”のお仕立て服で、心地よく機嫌よく

    ※ 記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです

    母が理事長を務めた歴史ある洋裁学校を受け継ぎ、生徒たちが楽しく学べるようにと見守る足立典子さん。ワードローブに既製品はほぼなく、いつも学校の関係者で縫製のプロである野本勝子さんと相談しながら仕立てているそう。

    「既製品で8割方、気に入ったものがあると、パターンや素材をさらに好みに合うよう工夫して自分のものにしていきます。昔は重い素材や少々窮屈な服も着ていましたが、いまは天然素材でゆったり着心地のよいものが中心に。

    首のゆとりや、袖の動かしやすさなど、細かな調整をすることで体にストレスがかからないよう、年齢とともに変化する体形をカバーすることも考えながら。朝、これでいいと思って玄関を出たけれど、しっくりこず、早く家に帰りたいっていうことを避けたいんです」

    1枚プラスするだけで装いがぐっと表情豊かになるジレや、両サイドに足し布をすることで風に揺れるワンピースなど、着ることで足立さんらしさが完成するさりげないデザインが多く、つくり手側ならではの視点が感じられます。

    だれかに誇るためではなく、一日を幸福に過ごすための服づくり。穏やかでありつつどこか凛とした足立さんの装いは、光と風、緑があふれる洋裁学校の空気感と調和していました。

    足立さんの「いまの自分らしさ」1
    裏地にも心ときめくコートとバッグ

    画像: 足立さんの「いまの自分らしさ」1 裏地にも心ときめくコートとバッグ

    着心地抜群というツイードのコートは、教諭の田中佑有子さんが足立さんをイメージしてパターンを引いたもの。ドルマン風のスリーブでパッドなしでも自然に肩のラインが決まるなど、細かな部分に工夫が。

    ワインレッドの裏地は足立さんみずからが選んだそう。近しい人がつくってくれるものから、ふだんは意識せずにいる“私らしさ”に気づくことも。

    華やかさを出したいときは小物で

    画像: 華やかさを出したいときは小物で

    シンプルな黒のワンピースに、森や湖を思わせる色味の、大判カシミヤストールをふわり。

    「グリーンは私らしい色。黒やグレーの装いが落ち着くけれど、気分を変えたいときは小物をプラスするのが好きですね」

    見えない裏にこそ、喜びの種子を

    画像: 見えない裏にこそ、喜びの種子を

    黒革のバッグは、学校の関係者でアーティストの浜七重さんにオーダーしたもの。

    一見シンプルながら、浜さんが足立さんをイメージして選んだという、グリーンを基調とした美しい織り地が使うたびに目に入る。

    足立さんの「いまの自分らしさ」2
    ハオリコートは生地替えで違う表情を楽しむ

    画像: 足立さんの「いまの自分らしさ」2 ハオリコートは生地替えで違う表情を楽しむ

    ハオリコートのパターンは、若い女性からおじいさんまでだれもが似合うものをと、みんなで考えたそう。

    すみれ色のやわらかな生地を使い、女性らしく上品な印象に。アシンメトリーな襟を開けて風を感じる装いにしたいときは、重しとして同系色のブローチを。

    この日は、民族衣装の布や端材などを素材とする「アッチコッチバッチ」のブローチで旅気分をプラス。

    糸や木片など素材感にこだわって

    画像: 糸や木片など素材感にこだわって

    絹糸をドーナツ状に巻いたものや、日本古来の絽刺(ろざし)など、手仕事でつくられたブローチが自然と手元に。

    木片や天然石など、自然の色や形を身近に感じられるものや、ありのままに生かしたものにも惹かれるそう。

    生地替えで別のテイストを楽しむ

    画像: 生地替えで別のテイストを楽しむ

    播州織の少し厚手の生地を使って仕立てると、同じパターンとは思えないほどラフでユニセックスな印象に。

    少し肌寒い日は、襟をぴったりと閉じて着ることが多いとか。ボトムは、細めのコットンデニムが定番。

    足立さんの「いまの自分らしさ」3
    ひと工夫で表情が変わる重ね着おしゃれ

    画像: 足立さんの「いまの自分らしさ」3 ひと工夫で表情が変わる重ね着おしゃれ

    1枚プラスするだけで、装いにニュアンスが生まれるロングジレは、足立さんの冬の定番。既製品のデザインを参考にしつつ、首まわりや着丈を自分の体形に合うよう調整します。

    Tシャツワンピースにジレを重ね、マレーシアで出合ったスカーフで色味をプラス。ボトムには播州織の生地で通常よりやや太めに仕立てたワイドパンツを合わせ、いまを感じるシルエットに。

    冬の定番、ジレは形違いを何枚か

    画像: 冬の定番、ジレは形違いを何枚か

    バックリボンが愛らしい、エプロンドレスを思わせるロングジレ。Tシャツやシンプルなワンピースと重ね着するので、かなり薄手の生地で仕立てるのが好み。

    装いにニュアンスが生まれ、お腹まわりのカバーにも。

    足し布で風を感じるシルエットに

    画像: 足し布で風を感じるシルエットに

    ローン地のワンピースは、スカート部分の両サイドに足し布をしているため、風にひらひらと揺れる。

    ワイドパンツは、鎌倉にある小山千夏さんのお店、「ファブリック・キャンプ」のカディコットンで仕立てた。



    〈撮影/伊東俊介 取材・文/野崎 泉 構成/鈴木理恵〉

    足立典子(あだち・のりこ)
    大阪・枚方にある「星ヶ丘洋裁学校」を兄と運営し、2016年より理事長、学校長に就任。著書に、洋裁の基礎と、シンプルで年代を問わず似合う服のつくり方、自然豊かな洋裁学校の空気感を捉えた写真やエッセイが楽しめる『人と人が繕う場所 星ヶ丘洋裁学校のソーイングレシピ』(主婦と生活社)がある。
    https://hoshigaokagakuen.net/

    ※ 記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです



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