• 今年、60代を迎えるエッセイストの内田彩仍さん。「日々の暮らしを楽しみながらていねいに」と、心地よく歳を重ねてきた自分のなかに、小さな変化が生まれます。それは、家事やインテリアや、もの選びにも。今回は、「自分をいたわる暮らしへ」とシフトチェンジした内田さんに「60代から味方につけたい服と小物」をお聞きしました。最新刊『衣食住、暮らしに寄り添うもの選び』(集英社クリエイティブ)から一部抜粋でお届けします。

    50代で生じた、おしゃれの悩み

    50代に入った頃、クローゼットにある服が「すべて似合わない」と、途方に暮れた時期がありました。今までとは年齢のステージが変わった気がしたのです。

    歳を重ねると、どうしたって体形が変わってきます。

    私の場合、体重はほとんど変わりませんが、ウエストサイズが増えたり、胸が下がってきたり。体形の変化に伴い、好きだった服が途端に似合わなくなりました。

    以前はよく着ていたジャストサイズの服も、しっくりこないので手が伸びません。かといって、ふわっとした服を着ると、素材感によっては太って見えたり、ちょっとだらしなく感じたり。クルーネックタイプのTシャツやカットソーも、ある時ふと「若づくりしていると見られるかも……」とちょっと気になるように。

    実際着てみても、驚くほど似合わなくなりました。

    そんなことが続いて、何を着ればいいかわからなくなってしまいました。

    今の「私」に似合うスタイル探し

    画像: ようやく自分らしく着られるようになったミドル丈のステンカラーコート

    ようやく自分らしく着られるようになったミドル丈のステンカラーコート

    歳を重ねて変化した、洋服選び

    しばらく試行錯誤した結果、「歳をとると、カジュアルな服より、少しシャープさのある服の方が似合う」という結論にたどり着きました。

    加齢により緩んだ体や顔つきには、きちんと感のある服の方が、中和されてバランスがよくなることに気づいたのです。

    それからは、コートもワンピースも、ノーカラーではなく襟付きのものを、襟元は丸首ではなくすっきりと見えるVネックを手に取るように。

    なめらかな質感やちょっと光沢のある素材など、柔らかなニュアンスのある服も選ぶようになりました。きれいめな服はもともと好きだったので、最近になってようやく年齢と好みのバランスがとれてきた感じです。

    画像: レーヨンやポリエステルなど、なめらかでとろみのあるシャツはすべてザラのもの。「1枚で着てもさまになるデザインや質感が気に入っています」

    レーヨンやポリエステルなど、なめらかでとろみのあるシャツはすべてザラのもの。「1枚で着てもさまになるデザインや質感が気に入っています」

    服選びの楽しみ

    似合うようになった服はほかにもあります。

    ◆ミドル丈のカーディガン×ギャザースカート

    ミドル丈のカーディガンは、40代の頃にギャザースカートに合わせて着てみたら、なんとも野暮ったく見えてしまって。でも十年後には、その着方のままで似合うようになりました。

    ◆キャメル色のミドル丈のステンカラーコート

    ミドル丈のステンカラーコートは、春に着たくて手にしたものですが、40代当時は、キャメルの色合いと小柄な体形が相まって幼く感じました。これも十数年寝かせるとすっかり甘さも抜けて、今はさまざまなコーディネートを楽しんでいます。

    ◆大きな柄のスカートやラメ入りセーター

    大きな柄が配されたスカートや、ラメ入りのセーターなどを取り入れたちょっと個性的な着こなしも、貫禄がついたのか今の方がしっくり馴染みます。

    ある日突然、違和感なく着られるようになるから面白いものです。

    着られない服が増えていくばかりだとちょっと寂しいけれど、年齢とともに似合う服も出てくる。これは嬉しい発見で、私にとって大きな収穫です。

    画像: 友人と観劇に行った時に着たよそゆきのワンピースもシャツカラー

    友人と観劇に行った時に着たよそゆきのワンピースもシャツカラー

    〈撮影/大森今日子〉

    ※ 『衣食住、暮らしに寄り添うもの選び』(内田彩仍・著/集英社クリエイティブ)からの一部抜粋記事です

    衣食住、暮らしに寄り添うもの選び(内田彩仍・著/集英社クリエイティブ・発行/集英社・発売)

    画像: 内田彩仍さんの「60代から味方につけたい」服と小物。40代、50代から変化した、おしゃれの視点

    amazonで見る

    エッセイスト内田彩仍さんの最新刊。器は陶器から磁器やガラスに、家具は経年変化しないものに、シャツは襟付きに……。今年還暦を迎える著者が、歳を重ねてかわりゆく「もの選びの視点」を綴ります。美しい家具やインテリア雑貨から便利な生活用品まで、著者の愛用品の数々を、豊富な写真とともに多数紹介。

    * * *

    内田彩仍(うちだ・あやの)

    福岡県在住。夫、愛猫と暮らす。ていねいな暮らしぶりやセンスのある着こなしが人気を集める。『変わること変わらないこと』(主婦と生活社)、『大切なこと 穏やかに暮らすための48の工夫と心がけ(PHP研究所)』など、家事や日々の生活を紹介する著書多数。



    This article is a sponsored article by
    ''.