Q: 体のむくみが気になります。日常でできる改善策を教えて!
全身がむくんでだるくなる感じ、何でしょう…?
最近、体のむくみが気になります。若い頃は夕方に“足がむくむ”ということはありましたが、いまは足だけでなく全身がむくんで、だるくなる感じがします。
むくみは筋力が落ちている証拠と聞いたこともありますが、原因はなんでしょうか? 日常生活でできる改善策を教えてください。
(サリイさん 30代/会社員)
A:血流を良くしたり、筋肉をつけるための習慣と食事を心がけましょう
原因はさまざま。病気のサインの可能性もあります
むくみの原因はさまざま。「長時間の同じ姿勢」も注意
今回はサリイさんからの体のむくみのご相談です。体のむくみの原因にはさまざまなものがあるため注意が必要です。
体の水分を調整しているのは腎臓で、体の血流を調整しているのは心臓。この心臓や腎臓の病気でむくみが出ることがあります。
それ以外にも女性の場合は月経周期に関わるホルモンの影響、男女ともに甲状腺機能低下症や貧血、低タンパク、低カリウム血症などでむくみが出ることがあります。いろいろな要因が考えられるため、一度は内科などで検査を受けてみるとよいでしょう。
低カリウム血症とは血液中の「カリウム濃度」が低い状態のことで、筋肉や神経の動きに影響が出やすい病気です。甘草を含む漢方薬やサプリメントの副作用などでもなることがあるので、それらの薬を服用されている方は注意してください。
また血管を広げる作用のあるカルシウム拮抗剤という種類の降圧薬の副作用でも、足がむくむ場合がありますね。
サリイさんのご質問でもあったように、筋肉はポンプの役割があり、手足の静脈血を心臓に戻す役目を果たしているため、運動不足や立ち仕事などの長時間の同じ姿勢でも、静脈血の環流が悪くなりむくみやすくなります。
日本はむくみやすい環境? むくみ予防におすすめの食材、控えるべき食材
日常生活のむくみ予防の心がけとしては、鉄分やタンパク質、カリウムを多く含むバランスの取れた食事や適度な運動で、血流をよくしたり、筋肉をつけることも大切です。
鉄分を多く含む食材としては赤身の肉や魚、レバーやほうれん草がおすすめです。タンパク質は肉類、魚介類、乳製品、卵、大豆製品をとるようにしてください。カリウムは野菜や果物類に多く含まれていています。
むくみで有名な病気に「脚気(かっけ」がありますが、これはビタミンB1不足でなる病気で、「江戸わずらい」とも言われました。
地方ではまだまだ玄米食が中心だった時代に、参勤交代などで江戸を訪れた大名や武士が白米を食べる江戸の食事が続くと、ビタミンB1が不足し脚気になったからです。ビタミンB1は肉類、魚類、豆類、玄米などの雑穀、ごま、ナッツ類に豊富です。
控えるべき食材としては塩分、アルコールなどです。高温多湿の環境で塩分が多めの食事の日本では、むくみやすい環境にあります。
塩分はラーメンのお汁を残したり、味噌汁を飲みすぎないようにする以外にも、ベーコンやハムなどにも多く含まれるため食べすぎないようにする注意が必要です。塩分で味を調整しなくても、だしやレモンやすだちなどの酸味で味を調整するのも有用ですよ。
マッサージやむくみ予防グッズの活用も習慣に
リンパの流れをよくするために運動やマッサージ、お風呂で暖まるなどもおすすめです。
現在ではむくみを予防する「弾性ストッキング」などもあり、これらを利用するのもおすすめです。
僕が医者になりたての頃、術後は安静にしておくのが一般的で、傷が落ち着いてからリハビリが行われていたのですが、それだとかえって問題があることがわかり、手術前後から弾性ストッキングを静脈血栓予防のために履き、術後すぐからリハビリを始める時代になりました。
最初の頃、手術前後は男性、女性関係なくストッキングを履かせていたため、しばらくの間私は弾性ストッキングのことを男性ストッキングだと思っていた恥ずかしい記憶があります(余計な話ですいません)。
体が冷えると血管が収縮し、血流が悪くなることから体を冷やさないことも大切です。
白砂糖の入った甘いもの、生の果物や野菜、冷たい飲み物、食べ物は体を冷やすので控え、衣服も暖かくしておいてください。
筋肉が落ちたり栄養状態が悪化する原因となる無理なダイエットも禁物です。
冒頭でお話したように長時間の同じ姿勢は血流を悪くするため、仕事の合間に少しストレッチをしたり、足踏みをしたり、貧乏ゆすりをするのも効果的です。
むくみ予防と改善におすすめの漢方
それでもむくみがひどい場合には、利尿剤などの尿量を増やし、むくみをとるお薬や漢方薬を活用して血流をよくしてみましょう。
むくみをとる当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)、水分代謝を調節する五苓散(ごれいさん)、足のむくみには防已黄耆湯(ぼういおうぎとう)や牛車腎気丸(ごしゃじんきがん)、心臓の働きを助けむくみをとる木防已湯(もくぼういとう)などの漢方薬などもあります。
今回の記事がサリイさんはじめ、むくみでお悩みの皆様の少しでも参考になれば幸いです。
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來村昌紀(らいむら・まさき)
頭痛専門の脳外科医として大学病院に勤務しながら漢方専門医の資格を取得。2014年、千葉県に、「らいむらクリニック」を開設。著書に『頭痛専門医・漢方専門医の脳外科医が書いた頭痛の本』『漢方専門医の脳外科医が書いた漢方の本・入門編』(ともにあかし出版)など。YouTubeチャンネル『らいむらクリニック チャンネル』でも、頭痛や漢方のお話を解説。
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