(『天然生活』2023年2月号掲載)
手土産の達人のおふたりに、食べくらべていただきました
老舗菓子店のお菓子の食べくらべをしたのは、手土産を選ぶ目利きのセンスがある料理家の松田美智子さん。その松田さんが食べくらべのパートナーにと指名してくれたのは、松田さんのお茶の先生でもある三浦大徹さんです。
「三浦先生、今日はよろしくお願いします」(松田さん)
「こちらこそお願いいたします。手土産ということで、私より松田先生のほうがずっとお詳しいので恐縮ですが、楽しみです」(三浦さん)
今回は、豆大福・大福をくらべます。お菓子は数多くありますが、今回は「老舗」、そして、「手土産」というふたつがキーワードです。手土産にするという観点でいうと、どんなことが大事になるでしょうか。
「仕事柄頂き物をしたり、逆に差し上げたりすることが多いのですが、大事なのは相手を思って“自分で”選ぶこと。作法やしきたりはさておき、これに尽きるのではないでしょうか」(三浦さん)
「そうですね。自分の好きなもの、自分がおいしいと思ったものを味わってもらいたい、そのシンプルな気持ちが大事ですね。そんななかで、老舗のものは、同じ味を守り続けてこられた安心感もありますね。さあ、さっそく頂きましょう」(松田さん)
手土産にぴったりの和菓子「豆大福・大福」の老舗4店
餅生地にあんこの組み合わせ。コロンとかわいらしい見た目で手土産にもぴったりの和菓子。求めやすい値段も魅力のひとつ。
三浦さん:「『出町ふたば』の〈豆餅〉は京都での家元で、我々の水屋のおやつとして頂いて以来、なじみ深いこともあり、やはりおいしいですね」
松田さん:「お餅と豆、あんのバランスが絶妙。さすがは行列ができる人気店ですね。また、ちょっと珍しいのが『果匠 正庵』の〈あんず大福〉ですね」
三浦さん:「こちらは、社中(生徒)さんからお土産に頂戴しまして、とても新鮮でした。あんずの甘酸っぱさであんの甘さもすっきりと頂けますね」
松田さん:「大福を一度に頂く機会はあまりないですが、あんの水分量から炊き上げ方、えんどう豆の硬さ、餅の具合まで、まったく違って興味深いですね」
①出町ふたば 名代豆餅
明治32年から続く老舗和菓子店の看板商品。大粒の赤えんどう豆と、きめ細やかな餅の組み合わせが絶妙で、地元の人はもちろん、遠方客からも愛される。
「餅の風味がよく、歯ごたえのある豆の塩けもいい。あんも上品な甘さです。やわらかな餅をつぶしてしまわないよう、ちぎりながら頂きます」(三浦さん)
②松島屋 豆大福
大正7年創業。東京三大大福のひとつともいわれている。豆大福は粒あんがぎっしりと詰まっていて、ボリューム満点。看板商品のひとつで午前中には完売してしまうことも多々。
「しっかりと甘さがあり、ひとつで満足感がありますね。松島屋さんは、お赤飯もおいしいですよ」(松田さん)
③塩野 大福 小豆こし餡入り
東京・赤坂の和菓子店。豆大福はこしあんと赤えんどう豆の組み合わせに定評がある。
「水けを残した、さらしあんがおいしいですね。お餅はしっかりと厚みがあり、えんどう豆もやわらかく仕上げられています。全体的に、とても品のあるおいしさ。人気があることにうなずけますね」(松田さん)
④果匠 正庵 あんず大福
人気商品のあんず大福は、干したものを煮もどしたあんずとあんの組み合わせが絶妙。
「こちらのあんず大福は、あんとあんずを一緒に包まずに、間に餅の層を入れて包んであります。それぞれの味が際立ち、口の中で“三味一体”が楽しめるようにという、ひと手間が素晴らしいですね」(三浦さん)
〈撮影/山田耕司 スタイリング/松田美智子 取材・文/結城 歩〉
松田美智子(まつだ・みちこ)
季節感と素材と味を大切にした美しくおいしい料理に定評がある。お取り寄せにも造詣が深い。食感好きとしておせんべいにとくに目がないのだとか。
インスタグラム@michiko_matsuda
三浦大徹(みうら・だいてつ)
茶道家。武者小路千家 家元水屋 福聚會主宰。東京・広尾、神奈川・伊勢原、愛知・名古屋などに稽古場を持ち、幅広い世代に茶の点前を指導している。
※ 記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです