• 栃木県益子町の里山で、家族3人で暮らす仁平里帆さん。古い家具や道具、自然に囲まれた暮らしは、あれこれ手を動かす必要があるけれど、とても落ち着くといいます。そんな仁平さんに新しい年の小さな目標を教えていただきました。
    (『天然生活』2024年2月号掲載)

    手を動かしながら、暮らしをかたちづくって

    目の前にあることに、ただ向き合う。

    小さなひとつひとつをおざなりにすることなく、真摯に手を尽くす。

    そんなふうにしていれば、暮らしはおのずと求める方向に向かい、また、ときに思いもよらない新たなかたちを見せてくれるような気がしています。

    仁平里帆さんの夫・透さんは、栃木県益子町と東京・表参道で、古家具を中心に扱うショップ「ペジテ」と「仁平古家具店」を営んでいます。

    夫妻はもうすぐ2歳になる息子の天音(あまね)くんとともに、益子町内の里山に暮らしています。

    画像: 烏骨鶏や山羊、うさぎなど、仁平家には動物もいっぱい

    烏骨鶏や山羊、うさぎなど、仁平家には動物もいっぱい

    「古い家具や道具、自然に囲まれた暮らしは、あれこれ手を動かさなければまわっていきません。

    不便なのでは? と聞かれることもありますが、私たちには、この暮らしがとても落ち着くんです。

    雑巾掛けをすれば、床がきれいになる。針を動かせば、布が形になる。

    ささやかでも手を動かしたことで起こる、小さな変化。

    それこそが、自分たちの心地よい‟生活“をつくっていく大切な要素なのだと、身をもって感じられますから」

    目の前のことに無心になれるということは、いろいろなことに気をとられがちないまの暮らしでは、ある意味では贅沢なこと。

    「息子が少し大きくなり、その喜びを改めて感じています。

    赤ちゃんのころはやはり目を離せませんし、実際に思うように手を動かせないこともありましたから。

    小さな子どもとぴったり寄り添う暮らしを経たからこそ、無心になれるいまが、とても楽しいんです」

    画像: 1月15日の小正月には、小さなお餅を丸めて枝にあしらい、お花に見立てた花餅を飾る

    1月15日の小正月には、小さなお餅を丸めて枝にあしらい、お花に見立てた花餅を飾る

    とはいえ、天音くんはまだ2歳前。

    料理に集中しかけたところで、抱っこをせがまれたり、一緒に庭仕事に没頭していたと思ったら、ふいに思わぬ方へ駆け出したり。

    「でもそれすらも、いまはなんだかありがたいですね。

    これまでの私は、集中すると周りが見えなくなるほどで、ときに気づかぬうちに無理をしていたこともあったかもしれない。

    息子の思わぬ行動が、暮らしをよりおおらかにしてくれるというのでしょうか。

    目の前のことに集中しながら、ふと力を抜くべき瞬間を息子から教わっている感じなんです。

    手を止め、周りをゆったりと見わたす心の余裕。

    暮らしをより豊かにする、そんな“余白”を味わいながら過ごすのが、これから心がけたいことです」

    新年から始める小さな目標

    01 月のめぐりや旧暦を意識して暮らしたい

    風が冷たい。動物たちの動きがせわしない。そんなときに旧暦や月の満ち欠けを確認すると、腑に落ちることが多いそう。「自然に近い暮らしを営むために、より細やかに意識していきたいですね」

    画像: 旧暦の行事や、月の満ち欠けの参考にしているのは、「月とカヌー」が手掛けている、「はからめ月のカレンダー」

    旧暦の行事や、月の満ち欠けの参考にしているのは、「月とカヌー」が手掛けている、「はからめ月のカレンダー」

    02 心地よく体を動かす

    もともと、体をまめに動かすのは苦ではありませんが、今年はそこに“心地よく”のひと言を添えました。「同じ行動でも、気持ちがそこにあるかないかで、暮らしが大きく変わる気がしています」

    03 体のお手当てをする時間をつくる 

    幼い子との暮らしは、つい自分の体調を後回しにしがちです。家族が健やかに過ごすためには、自分をいたわることも大切。「じっくり体に向き合う時間を見つけるのも、新年から意識したいことです」

    ささやかな目標をかなえるための近道アイテム

    お気に入りの家事の相棒や、いざというとき心強い味方。

    そんな存在が、小さくとも一歩進むためには必要なのです。

    日々の家事がはかどる美しく使いやすい台所道具

    画像: それぞれの包丁に合う太さ、そしてふさわしい表情まで考え抜かれ、付け替えられた柄

    それぞれの包丁に合う太さ、そしてふさわしい表情まで考え抜かれ、付け替えられた柄

    切れ味がよく気に入ってはいたけれど、持ち手の樹脂の存在が、気持ち的に引っかかっていた包丁。

    「思い切って、友人に頼んで柄を竹に替えてもらうことに。

    家事は、毎日のこと。ちょっとした違和感の積み重ねにふたをしつづけることが、いつか大きな気持ちの負担になってしまう気がしたんです。

    見た目だけでなく、握ったときにもよりしっくりくるようになりました」

    料理も、いままでより格段に心地よく。

    つい、「まあいいか」と自分をごまかしてしまう小さなこと。

    それらに目を配って整えていくことが、心地よく暮らしていくためには必要なことだと実感しています。

    画像: 仁平家の台所にあるのは、どれも使い込まれた道具ばかり。せいろは冷めたごはんを温めるなど日々活躍

    仁平家の台所にあるのは、どれも使い込まれた道具ばかり。せいろは冷めたごはんを温めるなど日々活躍

    体のお手当てに使う身近な材料

    画像: ビワの葉、しょうが、こんにゃくなどの食品や自然のものは、薬と違い効き目が穏やかなのも安心

    ビワの葉、しょうが、こんにゃくなどの食品や自然のものは、薬と違い効き目が穏やかなのも安心

    体を手当てするために常備しているものもあれば、食事用としてストックしているあれこれも。

    「何より自然の、口に入れられるほどのものであれば、安心して小さな子どものお手当てにも使えます。

    しょうがやこんにゃくは、湿布にして体を温めたり、毒素を出したりするために」

    右側の葉は、“干葉”と呼ばれる大根の葉を乾燥させたもの。

    湯船に入れると新陳代謝を高めて血行を促進し、体をじんわり温めます。

    「冬場はとくに、体を冷やさないように気をつけています。

    身近なものを使って自分の体を守る知識をもつことは、暮らすうえでとても心強いことではないでしょうか」

    画像: しょうがはたっぷりすりおろし、しょうが湿布に。血行をよくすることで、痛みや肩こりがやわらぐ

    しょうがはたっぷりすりおろし、しょうが湿布に。血行をよくすることで、痛みや肩こりがやわらぐ


    〈撮影/林 紘輝 取材・文/福山雅美〉

    仁平里帆(にへい・りほ)
    夫の透氏、息子の天音くんと栃木県益子町の自然あふれる里山に暮らす。再生させた古家の台所から見える景色を、二十四節気七十二候に寄り添った文章とともに綴るインスタグラム(@_______aun)も好評。料理上手としても知られ、時折アップされるおいしそうなお菓子やごはんの写真を心待ちにするファンも多い。

    ※ 記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです



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