• 夫の母がひとり暮らしになったのを機に実家で暮らすことを決意した永峰さん夫妻。1階は母がワンフロアで生活できるようにリノベ済みだったため、約45㎡の2階を夫妻それぞれの仕事場の機能も備えた住まいにリノベーションしました。今回は、『relife+』vol.52(別冊住まいの設計/扶桑社)より、母と同居をするきっかけと、1階と2階を分離した二世帯住宅について、紹介します。

    夫 昌治さん
    1975年生まれ
    神奈川県出身。若原アトリエを経て、2021年に永峰昌治建築設計事務所を設立。実家のリノベーションで公益財団法人 住宅リフォーム・紛争処理支援センター主催の住まいのリフォームコンクール【住宅リフォーム部門】「優秀賞」を受賞

    妻 紀子さん
    1972年生まれ
    神奈川県出身。会社員。神奈川県内の企業に通勤していたがコロナ禍により在宅勤務がメインになり、通勤時間が大幅に短縮。座りっぱなしを防ぐために電動昇降式デスクを購入し、寝室を兼ねる仕事場で快適に在宅勤務をしている

    母 秋子さん
    1943年生まれ
    兵庫県出身。保育士として働き、結婚後、神奈川へ。夫の海外赴任のため サンフランシスコとフィリピンのマニラで暮らした経験あり。ピアノや手芸が得意で、絵手紙教室やヨガ教室などの習い事に積極的に通うなど、アクティブな一面も

    きっかけ
    ひとり暮らしの母と暮らすことを決意

    神奈川県川崎市にある建築家の永峰昌治さんの事務所兼自宅は、1969年築の実家の2階をリノベーションしたものです。

    昌治さんと2人の姉が巣立った後、実家は両親のみの住まいとなっており、2005年に1階をリノベーション。

    画像: 以前はクローズドだったキッチンは母の希望により対面式に

    以前はクローズドだったキッチンは母の希望により対面式に

    両親の寝室は2階にありましたが、2003年に定年退職した父が、「俺が寝たきりになったら1階で暮らす」と言い出したことで、台所、和室、リビングと細かく分かれていた1階を、間仕切りのないワンルームに変更しました。

    同時に耐震補強と断熱改修も施し、寒がりだった父の要望により床暖房も採用しました。

    画像: 1階はすでにワンルームにリノベしてあったため、ウッドデッキを設置したのみ。2階は、内階段を残しつつ外階段を新設し、玄関と夫の仕事場、ダイニングと打ち合わせスペース、寝室と妻の仕事場を兼ねる子世帯の住まいに生まれ変わった

    1階はすでにワンルームにリノベしてあったため、ウッドデッキを設置したのみ。2階は、内階段を残しつつ外階段を新設し、玄関と夫の仕事場、ダイニングと打ち合わせスペース、寝室と妻の仕事場を兼ねる子世帯の住まいに生まれ変わった

    結婚後すぐ、父の仕事の都合で1年間サンフランシスコで暮らした経験のある母は、「玄関を入るとすぐにリビングやキッチンがあって、広々としていて暮らしやすかった」と、当時のアメリカの住まいを思い出したといいます。

    その後、2020年に自宅の階段で転倒した父が入院し、そのまま介護施設に入所。

    2021年に独立して設計事務所を立ち上げた昌治さんは、当時住んでいたマンションの一部を仕事場としていましたが、ひとりになった母が心配になり、毎日通って実家の2階で仕事をするようになりました。

    「当初は近くの賃貸マンションを借りようかとも考えましたが、なかなか手頃な物件も見つからず、妻が協力してくれるというので、リノベーションして一緒に住む決断をしました」(昌治さん)

    完全分離と外階段
    外階段を新設し完全分離の二世帯住宅に

    1階は、老後を見越して2005年にリノベーションを済ませていたので、手をつけることは考えていなかった、という昌治さん。

    既存の内階段は急で危なかったので、父が介護施設に入居した段階で、母のベッドを1階に下ろしていました。

    画像: 東側に新設した鉄骨の外階段。「母の寝室に近いので、帰りが夜遅くなってもうるさくないように、踏み板には木を張りました」と昌治さん。幅がゆったりしていて、上り下りもスムーズ

    東側に新設した鉄骨の外階段。「母の寝室に近いので、帰りが夜遅くなってもうるさくないように、踏み板には木を張りました」と昌治さん。幅がゆったりしていて、上り下りもスムーズ

    父が元気な頃は、広々とした1階のリビングは姉の子どもたちが来たときの格好の遊び場になっていたそうですが、現在は家具で緩やかに仕切ってベッドを置き、母の寝室としています。

    画像: 母の秋子さんが暮らす1階は、間仕切りのないワンルーム。ソファの向こう側が寝室になっており、右手の窓から新たに設置したウッドデッキに出られる。ピアノの練習は、保育士だった秋子さんの日課

    母の秋子さんが暮らす1階は、間仕切りのないワンルーム。ソファの向こう側が寝室になっており、右手の窓から新たに設置したウッドデッキに出られる。ピアノの練習は、保育士だった秋子さんの日課

    「05年のリノベーションの際に、南側の掃き出し窓の上部を壁でふさぎ、重心を下げて落ち着いた雰囲気で過ごせるようにしました。その後、古くなった水回りも改修し、1階はワンルームマンションのような空間に。結果的に、父が想定したとおりの使い方になっています」と昌治さん。

    画像: もとは大きな掃き出し窓だったが、隣地が駐車場で朝晩、車の出入りがあるため、上部を壁で覆って重心を下げ、落ち着いた雰囲気に。オリジナルで製作した障子は枠を白く塗装し、モダンに仕上げた

    もとは大きな掃き出し窓だったが、隣地が駐車場で朝晩、車の出入りがあるため、上部を壁で覆って重心を下げ、落ち着いた雰囲気に。オリジナルで製作した障子は枠を白く塗装し、モダンに仕上げた

    父のおかげで、1階で生活が完結するようになっていたので、2階をフルリノベーションして完全分離型の二世帯住宅とすることにしました。

    最初に決めたのは、外階段を設置することです。2階は昌治さんの設計事務所の機能も兼ね、妻の紀子さんも在宅勤務が中心なので、母との生活リズムの違いや来客の動線を考慮。

    万一のために内階段を残しつつ、物干しと物置があった東側の庭に、来客も気兼ねなく使える外階段を新設しました。

    「ご近所の方からは、『若い人と一緒に住むのは大変でしょ』と言われるけど、上に別の家が建っているようなものだから、全然大丈夫って説明しています」(秋子さん)

    次回は、リノベした2階の永峰夫妻の仕事場兼住まいを紹介します。

    ※ 本記事は『relife+ vol.52』(扶桑社)からの抜粋です。



    <撮影/松井 進 取材・文/松浦美紀 取材協力/永峰昌治建築設計事務所> 

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