(『天然生活』2020年6月号掲載)
ただ何度もやれば、大丈夫
ひとり暮らしを始めたころから整理収納の特集や本を読むのが好きでした。
洋服や化粧などより興味があったのでしょう。
そのなかで整理収納の「普遍的な真理」が見つかると、「すごい!」と感動しました。といっても、頭で理解してもスラスラ改善できたわけではありません。
でも、大事な真理は繰り返し目にするので大原則は同じなのだと思いました(そのころの試行錯誤ぶりは、だいぶ前の『あおきみさんの妙に役立つ日々の知恵147コ』(幻冬舎)にも。ここには進化途上の私がいます)。
もうひとつ、そういう特集を読んでよかったのは、上級者の暮らしを見てショックを受けたこと。
ガラガラのクローゼット、何もないリビングなど。「いまはとても無理」な、その理想を見ておくのは、実は将来の自分に効きます。不思議ですが、私も徐々にその域に達した部分もあるからです。
それで、いまの家を建てたときはその理想に最大限に近づくべく、思いきってものも減らせました。ですが、夫のものの整理は本人に任せています。
夫は予備校講師なのでプリントや参考書が大量にあり、忙しいときはそれらがごちゃっと積み上がります。
でも、独身時代は床が見えないほどだったのに、何度も「全出し→捨てる→入れ方を工夫」を重ね、いまは過去最高によい感じです(整理収納に後退なし!)。
私が心がけたのは「片づけて!」と怒らず、片づけたときに「きれい〜!」とほめちぎって育てること。すごくうれしそうでした。
さらに夫に効いたのは、「これを自分がやった」という成功体験。それを味わうと、人は少しずつ変わるのです。
このようにリバウンドと成功を重ねるのが、たったひとつの上達の道では。さらに、ほかの家と比べないことです。
とくにSNSで見た美しいお宅と比べるのは無意味。いまの自分の家がそうじゃないのは、いろいろ理由があるのだし、がんばって毎日生きている自分を、そんな落ち込みでさらに追い込まないことです。
気が向いたら10分くらいで簡単な引き出しひとつだけ、きれいにしてみてください。
ほかもいけそうな可能性を感じ、自己肯定感も生まれますよ。
青木美詠子
青木さんの整えルール
“立てて収納”がやっぱり基本

クリアファイルの書類は、ふせんを貼ったクリップで項目ごとに束ねて
積み上げたり重ねたりすると、使いたいものが下にあった場合、上のものをいちいちどかさないといけません。
その点、立ててしまう収納なら、上に引き上げたり、手前に引き出すだけで目当てのものをスッと手に取ることができます。
「できるだけ立ててしまう」、青木さんのお宅ではこのルールがあちこちで守られています。
「グループ分けしたうえで立てて収納するとばっちりです。倒れないように仕切りを使ったり箱に入れたりするとなおよいですね」
青木さんの整えルール
どうしても捨てられないものは、まず半量にしてみる

ハンコ類も前は、この倍以上の数を持っていたそう。「いまは、とくにお気に入りのものだけを小さな箱に入れています」
整理・整頓とよくいいますが、厳密には違う意味なのだそう。
整理は要・不要を分けること。整頓はその要を使いやすく整えること。
不要なものを持ち続けるのは不毛なことではあるけれど、たとえ使わなくてもなかなか減らせないものってありませんか?
「たとえば私の場合、ジャムなどの空きびんがそうでした。何かに使えそうと思ってもたまっていくばかりで。そういうものは、まずは半分、そのまた半分と、少しずつ減らしていくといいですよ」
青木さんの整えルール
戻しやすさを考え、何度もトライ&エラー

書斎にある小引き出し。ちょうど高さの合う名刺ケースを箱代わりに並べ、よく使うふせんやクリップを手前に配置。ここも上から見て一目瞭然に
前出のとおり、片づけは“戻す”がキーワードのひとつだと青木さん。
「たいていの場合、ものを出すときは“使う”という目的がありますが、使い終わったあとは、そのあたりにポイッと置きがちですよね。それがいくつも積み重なった状態が、散らかったり乱れたりするということなのです」
そのため、“戻しやすい”“戻したくなる”収納方法を考えるのが大切。
「まず、自分の戻し方に気づくことから始めましょう。無意識に置いているものが多いはず」
<撮影/砂原 文 構成・文/結城 歩>
青木美詠子(あおき・みえこ)
文筆家。冷えとりに関する著書のほか、日々を綴ったエッセイ、家づくりに関するブログにもファンが多い。昨年、整理収納アドバイザーの資格を取得。現在は片づけの訪問レッスン、自宅セミナーなども開催している。http://www.aokimi.com/
※記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです