「新聞紙」を使えば炭の火おこしは簡単
薪(まき)と炭はどう使い分ければいいのかと聞かれることがあるが、答えは明快だ。
炭は調理することに特化して手間暇かけてつくられた燃料なので、料理だけをやるのなら最初から炭を使ったほうが合理的だ。
炭は煙が出ないし、火の粉も出にくい。さらに火力が安定していて、長時間燃焼する。
しかし、調理だけでなく暖房や照明にも利用するのなら、炎によって強い火力が得られる薪にはかなわない。
これが炭と薪を使い分けるポイントになる。
簡単な火おこし術
炭がなかなかおこせなくて悩んでいる人のために、簡単な火おこし術を紹介しておこう。
おすすめなのは新聞紙を使うやり方だ。
着火剤代わりの新聞紙の熱によって、意外なほど簡単に炭に火がつく。
もうひとつ、手っ取り早いのが焚き火の熾(お)きの上に炭を乗せて、うちわであおぐという方法。
熾きが必要になるので、焚き火をやっているとき限定の火おこし術といえる。
新聞紙を使っておこす方法
焚き火の焚(た)きつけとしてもよく使われる新聞紙が、炭の火おこしでも活躍してくれる。
新聞紙はあまり固くねじらずに、中に空気を含ませるような感じでフワッとねじるのがポイントだ。
火がつかないことも想定して、少し多めに用意しよう。
1 半ページほどに切った新聞紙を軽くねじって棒状の焚きつけにする。それを井桁型に4段ほど組む。

2 新聞紙の上に炭を乗せる。なるべく細かい炭を下にして、大きめの炭は立てかけるようにするとよく燃える。

3 新聞紙に火をつけたらしばし待つ。なかなか火がつかなくて焦るかもしれないが、新聞紙の燃焼時間は意外に長く、10分待てば着火する。

薪にくべておこす方法
焚き火とは別に、バーベキューグリルなどで炭を使うという場合もあるかもしれない。そんなときは焚き火の熱を利用して、炭の火をおこそう。
薪がある程度燃えて熾きの状態になったら、その上に炭を乗せてうちわでしっかりとあおげばいい。

※本記事は『焚き火の教科書』(扶桑社)からの抜粋です。
〈撮影/山田耕司、山川修一 取材・文/後藤聡(エディターズ・キャンプ)〉
伊澤直人(いさわ・なおと)
週末冒険会 代表、野営家。1972年宮城県生まれ。幼少よりボーイスカウト活動に参加、18歳でスカウト活動における最高賞、「ボーイスカウト日本連盟 富士スカウト賞」を受勲し、皇太子殿下(当時)に拝謁する。その後、米国式のアウトドア・サバイバルスクールでトレーニングを積み、卒業後は運営側として個人と法人向けの研修を担当。同時期にラフティングガイドとしても活動していた。現在は、長野県八ヶ岳および首都圏を中心に全国各地の海山川で、おもに社会人を対象として年間60泊以上のキャンプツアーを開催。初心者向けキャンプスクールやソロ野営、防災サバイバルスクールも開講している。併せて法人・団体向けにアウトドアイベント、ツアーのコンサルティングやセミナー、コーディネートなども実施中。