(『天然生活』2024年12月号掲載)
循環させたり、ついで掃除を取り入れて心地よさを保つ
アパレルブランドのバイヤーとして30年暮らしたパリから帰国し、2年ほど前にフランス人の夫・ロランさんとともに京都へ移住した宇佐見さん。古物好きが高じて、骨董市などで蒐集した苧麻(チョマ)の絣の着物を、1点ものの洋服に仕立て直すブランド「紀[KI]-SIÈCLE」を始めました。
銀閣寺にほど近い一軒家には、パリからコンテナで持ち帰ったアンティークの家具や雑貨、ファブリックが美しくしつらえられています。
夫婦ともに自宅でものづくりをしているので、糸や革くずの掃除は必須。リビングやダイニングのある1階は「マキタ」、夫のアトリエがある2階は「ダイソン」の掃除機と決めることで持ち運びなどの負担を減らします。

繊細なアンティークの鏡やデコイなどが並ぶリビングのチェストは、はたきをかけるのではなく、水ぶきのみですっきりさせる
忙しい日々を送る宇佐見さんですが、暮らしのなかで自然とものを循環させたり、ついで掃除を取り入れて心地よさを保っています。たとえば、多種類の器を偏りなく使うというのもそのひとつ。
「私がよく使うのは帰国後に買った和食器ですが、彼が料理するときは自然とフレンチになるので、パリから持ち帰ったアンティークの器に盛りつけて。いろいろな器を使うことがお手入れにもつながり、食器棚をきれいに保てます」
着物を洗うときはエコ洗剤「海へ…Fukii」を愛用。そのたびに洗面所も自然ときれいに。
「フランスとは住環境の違いもあり、年季の入った板張りの床を磨き込むような楽しみはなくなりましたが、山や疎水が身近にある、自然と一体化したような環境に愛着が深まりつつあります」
宇佐美さんの家を美しく保つコツ3選
家を美しく保つコツ1
食器やざるはしまい込まずに、日々使うことで美しさを保つ
食器棚は置かず、シンクの対面にオープン棚を設置。フランスのアンティークや日本の作家ものなど多様な器が並ぶなか、お手入れもかねて、なるべく順ぐりに使うようにしているそう。

洗い終えた食器は、毛羽立ちにくいアンティークのリネンでふく。ざるも食器も毎日使うことで、風合いが増し、美しさを保てる
「ざるも器と考えているので、お鍋をするときに切った白菜やきのこなどを並べることも。アンティークのリネンを敷いて使うことが多いですね」

編み模様が美しいざるは、上3つはアフリカやメキシコ製、左下はフランス製。壁に掛けて愛でつつ、大皿代わりに野菜や果物を盛って、ふだん使いにもおもてなしにも活用

1950年頃の英国製ウォールシェルフを食器棚に。よく使う器を収納し、循環させている
家を美しく保つコツ2
シンクとコンロまわりはあまりものを置かずに掃除しやすく
シンクの水アカやガスコンロの油はねは、汚れをためないよう、使ったらすぐ掃除。
「クエン酸を洗剤代わりにまいてたわしでこすったり、クエン酸水にふきんをつけておいてふいています。油汚れには『エコベール』を使うことも」
キッチン道具は厳選することで、ごちゃつかずすっきり。壁のタイルなどの掃除もはかどります。

吊り下げ収納は必要最小限で、ガスコンロの周辺もすっきり

掃除に使うクエン酸は常に出しておく。食器洗剤とスポンジも手に取りやすく
家を美しく保つコツ3
あえてふたのないごみ箱を使い、こまめに捨てることで衛生的に
ごみ箱を開けたときの独特のにおいが苦手ゆえの選択だそう。
「パリ時代とは、ごみの捨て方もずいぶん変わりました。料理のときに出る野菜くずなどは小さめのビニール袋にまとめておき、キュッと縛ってこまめに捨てることでにおいも気になりません」
ちなみに、毎日のごみ捨ては、夫のロランさんの担当とか。

ワイヤー製のごみ箱にポリ袋をセットし、生ごみはここへ。ふたがないことで、常に中身を意識できる
〈撮影/竹田俊吾 取材・文/野崎 泉〉
宇佐見紀子(うさみ・のりこ)
バイヤーとして約30年パリで暮らし、2017年に帰国、2022年より京都在住。同年に100年の時を経た日本の苧麻の着物をほどき、フランスの100年前のシルエットの服に仕立て直すブランド「紀[KI]-SIÈCLE」を立ち上げる。京町家を再生したギャラリー&ショップ「A LITTLE PLACE」も運営。
インスタグラム@ki_siecle_
※ 記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです



