是枝監督の言葉に背中を押されて、演じることが楽しくなった
——初めての写真集『コバルト』のテーマは「自分と向き合う」だそうですね。黒川さんが自分と向き合うきっかけとなった「言葉」について教えてください。
役を演じるという俳優の仕事は、常に“自分と向き合う”場面があると感じています。なかでも印象に残っているのは、映画『怪物』に出演したときに、是枝監督に「人間は常に嘘をついているんだから、楽しいときや悲しいときにそれがそのまま観客に伝わらなくてもいいよ」という言葉をかけてもらったことです。
それまで、僕は演技は“顔”でするものだと思っていたんです。悲しかったら悲しい顔をするのが正しいと思っていたんですが、監督からは「その場で感じたり、受け取ったりすることが大切なんだよ」って教えてもらえて。この是枝監督の教えがあったからこそ、演技をすることがどんどん楽しくなっていきました。ほかのキャラクターを演じることによって、自分の存在に改めて気づくこともあります。

——是枝監督の言葉で演じることが楽しくなったことで、自分自身への発見もありましたか?
いままで自分がめっちゃ嫌いだったんですけど、「ちょっと好きなのかな?」って思えてきました。好きなポイントもあるなって。だから、是枝監督にかけてもらった言葉は、宝物です。いつも頭の片隅に置いています。
——ほかにも、先輩俳優の方ににかけてもらった言葉で嬉しかったものはありますか?
『怪物』の舞台挨拶でとても緊張して、足がブルブル震えてしまったことがあったんです。そのとき安藤サクラさんに「ここでバク宙したって、変顔したっていいんだよ」って言ってもらえて少し心が楽になりました。もちろんバク宙はしませんでしたけど(笑)。ちゃんとしなきゃって強く思いすぎてしまうから、緊張してしまうんだなって。この言葉もずっと頭の片隅にあります。
いろいろな方々からいただいた言葉を心に留めておいて、自分が必要なときに取り出せたときは、すごく嬉しくなりますね。

学校での時間があるから俳優業を続けられる
——自分と向き合える時間=自由な時間にはどんなことをしていますか?
いまは、暇さえあれば写真を撮っています。友達や弟、それに飼っているブタを撮ることが多いです。
——ブタを飼っていらっしゃるんですね! 写真を好きになったきっかけを教えてください。
写真集も撮影してくださった写真家の末長真さんに、SONYのα77というカメラをいただいたんです。スマホでの撮影に慣れていることもあって、それまでは写真ってただシャッターを押せば撮れるものだと思っていたんですが、シャッタースピードとか、ISO感度とかいろんなことを調整しなくてはいけないから難しくって。
でもだからこそ、きれいな写真って奇跡のような瞬間なんだと思えて、写真を撮るのがすごく好きになりました。撮れたと思ったら真っ黒だったり、逆に真っ白で何も映ってなかったり。なかなか思い通りにいかないところも楽しいです。
いま、写真に夢中になっていることもあって、この写真集では、花火をしている写真がお気に入りです。「花火ってこんなふうに写るんだ」と、びっくりしました。

—―手芸もお好きだとお伺いしました。クリエイティブなことがお好きなんですね。
昔から、一人でできることが好きです。黙々と折り紙をすることもあります。ただ最近は友達と遊んだり、チームで何かに取り組んだりすることも楽しくなってきました。学校で友達と過ごしたり勉強したりする時間があるからこそ、俳優業もやっていけると思っています。
学校も仕事もどちらも大切にしたいです。でもいまは、俳優業も「楽しい!」という気持ちが強いので、自分の中ではあまり仕事という感覚がありません。
——学校での時間も、演じることにいい影響を与えているんですね。ちなみに得意な科目はなんですか?
化学です!
<撮影/末長真(『コバルト』より) 取材・文/高田真莉絵>
黒川想矢(くろかわ・そうや)
2009年生まれ、埼玉県出身。5歳より芸能活動を開始。是枝裕和監督作品『怪物』での演技が高く評価され、日本アカデミー賞新人俳優賞など数々の賞を受賞する。映画『国宝』では、歌舞伎に初挑戦し話題に。初の写真集『コバルト』(扶桑社)が絶賛発売中。
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映画『怪物』『国宝』で話題沸騰、再注目の俳優を完全撮り下ろし
映画『怪物』『国宝』に出演し、国内外でいま最も注目を集める俳優・黒川想矢さん初の写真集です。完全撮り下ろしの本作では「自分自身と向き合う」ことをテーマに、映画『怪物』で出会い、公私ともに親しい写真家・末長真さんとふたり旅へ出かけました。
旅のはじまりへの期待と、すこしのソワソワ感。自身がやりたかったという花火や料理も楽しみ、寝起きのあどけない姿など、自然体な旅を通して現れたいろいろな彼の姿を撮影。旅のすえ辿り着いた、広大な自然と過去のレガシーが共存する地で俳優として、ひとりの少年として自分自身と向き合う姿は鋭く青く、エネルギーと感情がまるで「爆発」のように溢れる瞬間の連続です。黒川想矢さんの多面的な魅力を垣間見ることができる一冊となってます。





