この春から、学校通いが始まりました
この春から学校(早稲田大学LRChttps://lrc.waseda.jp)へ通いはじめました。週3回、講義を受けています。決まった場所へ、決まった時間に、というのは、いままでの暮らしのリズムが変わることです。タイムスケジュール、習慣、ルールなど、見直すことにしました。
検討したのは──
1.気持ちのいい流れになるスケジュール
2.負担を感じる部分はあたらしい方法に
3.優先順位の再考
です。
1、2、3を含むすべてに関係しているのが、日々の食事です。
見直した、ある家事。タイマーという存在に助けられる
そこで早々に「炊飯器のタイマーをかけて出かける」を取り入れました。
多くの人にとっては当たり前のことかもしれません。でも、自宅で仕事をしているわたしには、炊飯器のタイマーをかけての外出は、実ははじめてのことです。
タイマーを使わないで事足りていたのは、家で仕事をしているとこともありますが、長い間、圧力鍋でごはんを炊いていたからでもあります。圧力鍋を使うと、白米の炊飯は圧が上がってから3分。早い! わざわざタイマーをかける必要がありません。
けれど、この家に移り住んだとき、当時、使っていた圧力鍋がIHコンロ不可だったため手放しました。それがきっかけで、電気炊飯器を使うようになったのです。
炊飯器での炊飯は、圧力鍋より時間がかかります。学校の講義を受け、つかれてからの帰宅。当然、そこからごはんを炊く気力はなく「炊飯タイマーをセットして出かける」に切り替えました。この機能、便利ですね。
25年前に買ったおひつが活躍
ただ、ひとつ問題があります。わたしの使っている炊飯器は保温機能がついていないのです。そのため、帰宅時間が少しずれるとおかずができていないのに、先にごはんが炊き上がってしまうのです。
そこで、再び使いはじめたのが「おひつ」です。
おひつは、25年前に手に入れたものです。東京深川・桶栄さんのもの。長い時間のなかで、ちいさな修理を1回、タガをあたらしい物にするなど全体をきれいにしてもらう修理を1回。それもあり、25年前のものとは思えないほどいい状態です。
このおひつがあれば、ごはんだけ先に準備ができても、炊飯器に保温機能がなくても、大丈夫。炊き上がったごはんをさっとおひつに移せば、時間が経ってもおいしいごはんがいただけます。

水でさっとぬらしたおひつに炊き立てのごはんを移します。樹齢300年の木曽さわらでできたおひつはすべて職人さんの手仕事です

ごはんと味噌汁はいつもこんな感じで。飯碗と汁椀は赤木明燈さん。折敷は鎌田克慈さん。お箸は向島大黒屋さんの江戸木箸
多くのものを手放す中で、大切に残してきたもの
このおひつは、多くのものを手放してきたわたしが、手元に残している数少ないもののひとつです。それは、おひつに移したごはんは炊き立てのごはんとは別のおいしさがあるのを知っているからです。余分な水分をおひつが調整してくれるのが、おいしさの秘密。フタをあけた瞬間の木の香りの清々しさとともに、ふわりとかるいごはんがそこにあります。
60代で再び学校に通うようになるとは、1年前は想像していませんでした。また、そのことで、日々の時間や使う道具を見直すことも。でも、いい機会です。今回は「学校」ですが、これが「病院」になることもあるかもしれないのですから。
学校と仕事とそれを包みこむ暮らしと──。いつのときも誰かに何かに助けられながら、は変わりません。あたらしいわたしの時間割は、つぎの春までつづきます。

広瀬裕子(ひろせ・ゆうこ)
エッセイスト、設計事務所共同代表、空間デザイン・ディレクター。東京、葉山、鎌倉、瀬戸内を経て、2023年から再び東京在住。現在は、執筆のほか、ホテルや店舗、住宅などの空間設計のディレクションにも携わる。近著に『50歳からはじまる、新しい暮らし』『55歳、大人のまんなか』(PHP研究所)、最新刊は『60歳からあたらしい私』(扶桑社)。インスタグラム:@yukohirose19
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50歳、55歳と年齢をテーマに執筆してきた著者が、60歳を迎えるまでの日々に考え、選択し、アップロードしている暮らしの知恵を1編ずつ丁寧に書き下ろしました。
「抗うことなく、あきらめることなく、自分に合った選択をしていく。気持ちのこと、身体のこと、家族のこと。いままでのことを振り返りながら、60代のために新しいスタートラインを『引き直したい』と思うようになりました」と広瀬さんは語ります。
60歳はあたらしいスタートラインととらえ、これからの生活小さな暮らし、グレイヘア、家族の看取りなどをていねいに一編一編綴ったエッセイ集です。






