(『天然生活』2025年6月号掲載)
「当たり前に助け合える日々」の大切さ
「ここに住むまでは、困ったときに『助けて』とはいえませんでした。迷惑をかけてはいけないという気持ちのほうが強かったですね」
そう話してくれた中村暁野さん。「ここ」とは、中村さんが夫と3人の子どもたちと暮らす神奈川・藤野地区のことです。8年前、東京からこの土地に引っ越してきたばかりのころ、中村さんにとって忘れられない出来事がありました。
「2番目の子がまだ3カ月くらいのころで、荷ほどきをしたいのに泣いてしまって困っていたんです。するとお隣さんが来て『抱っこしててあげるよ』って。別の人も、みかんをどっさり持ってきてくれた。その後も、まだ車の免許を持っていなかった私や子どもたちを『乗っていきなよ』って何度も車に乗せてくれたり。周りの人が当たり前のように助けてくれて、それを自分が受け入れたときに『全部自分で抱え込まなくてもいいんだ』と心から思えたんです」

周囲の人々と助け合いながら3人の子育てを行う日々。ひつじの遊具は、息子が幼かったころ、近所の人が譲ってくれたもの
そのときのうれしさや感動を、自分もほかの人に届けたい。自然と出てきたそんな感情から、中村さんも困っている人に迷いなく助けの手を差し伸べるように。
「『助けてくれた人に何かを返そうと思わなくていい。自分ができるときに、困っている人を助けてあげればいいんだよ』と、だれかに言ってもらった言葉も強く胸に刻まれました。いま振り返ると、東京に住んでいたときも、自分が周りに心を開いていればもっと心地よく暮らせたのかもしれません」
人とつながり助け合う喜び
地域で支え合い、子育てを抱え込まない
昨年冬から藤野駅の駅前で営んでいる「家族と一年商店」の実店舗。
向かいにあるパジャマと雑貨の店「GOOD NIGHT SUIT」の人々と、お互いの子どもたちを見守りながら店に立っています。
「ほかにも、お店を開けている日は学校の保護者仲間が子どもを迎えに行ってくれることも。地域みんなで子育てをしている感覚です」

「家族と一年商店」の店内で遊ぶ子どもたち。「2つの店を自由に行き来して遊んでいることが多いです」
〈撮影/星 亘 取材・文/嶌 陽子〉
中村暁野(なかむら・あきの)
都内の生活を経て2017年から神奈川・藤野地区の里山へ移住。夫、15歳の娘、9歳の息子、2歳の娘、犬と暮らす。“家族と暮らし”をテーマに執筆活動を行い、著書『家族カレンダー』(アノニマ・スタジオ)を上梓。雑誌『家族と一年誌 家族』も不定期刊行。サステナブルな商品を扱う「家族と一年商店」を営む。
※ 記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです




