百貨店として120年以上の歴史を誇る日本橋の顔

1904年(明治37年)に「デパートメントストア宣言」を行い、日本初の百貨店となった日本橋三越本店。
それから120年あまり、この日本橋の街の象徴としてあり続けています。現在の本館は1935年(昭和10年)に完成、2016年(平成28年)年には国の重要文化財に指定されています。
「女将」が案内する日本橋三越本店の魅力

今回、日本橋三越本店の魅力をご案内いただくのは、こちらで「女将」の愛称をもつ、近藤紀代子さん。まずはエントランスのライオン像のお話から。

「こちらのライオン像は、1914年(大正3年)、当時経営トップだった日比翁助(ひび・おうすけ)がロンドンのトラファルガー広場にあるライオン像をモデルにしてつくったといわれています。日比自身がライオンが好きだったそうで、次男の名前も雷音(らいおん)と名付けたのだとか」
豊富な知識と着物姿が印象的な近藤さんは、1980年の入社以来、45年に渡り本店のインフォメーション、総務などを担当されてきました。
15年ほど前から着物姿で接客を行うようになったことが多くのお客様から評判となり、ついには三越全店で唯一の「女将」という肩書きを与えられるまでに。現在は週4日ほどインフォメーションに立つほか、カード会員向けの店内ツアーも務めています。

女将・近藤紀代子さん
見どころ01
江戸時代に話題を集めた越後屋の「番傘」

そんな近藤さんに案内され、地下鉄の駅につながる地下通路へ。こちらには、江戸時代の日本橋を描いた絵巻(熈代勝覧)が展示されています。そこに現れた女将の手にはレトロな番傘が。
「三越の前身である越後屋では、急な雨のときにこのような傘を貸し出したんです。傘には大きく越後屋の文字と番号がありますが、傘を貸し出すことでお店の宣伝になると考えてのことだったのでしょう。またこの番号が書かれていることから番号傘、つまり“番傘”の由来になったともいわれています」
見どころ02
中央ホールにそびえ立つ天女(まごころ)像

再び1階へ戻り、開放感のある5階までの吹き抜けが印象的な中央ホールへ。こちらにそびえ立つ「天女(まごころ)像」は、先日も人気ドラマ『VIVANT』のシーンに登場するなど、人々を惹きつけてやまない三越の象徴です。
「こちらの像は、1960年(昭和35年)に株式会社三越創立50周年の記念としてつくられたもの。彫刻家の佐藤玄々(さとう・げんげん)の手により、高さ約11メートル、重さ約7トンで、約10年間かけて延べ10万人が携わって完成しました。天空から舞い降りた天女の像ですが、その意図は三越が最も大切にしている基本理念“まごころ”を具象化したものなんです」

京都・貴船神社のひのき材を使い、鮮やかに彩られた繊細な装飾は、見るものを圧倒する美しさ。これだけの芸術品が、デパートで見られるということ自体に驚きます。
さらに近藤さんがおすすめしてくれたのが、裏側。
「たくさんの雲と鳥の真ん中にあるのは“宝珠”と呼ばれるもの。表から見るのとはまた違う魅力がありますよね」
見どころ03
貴重なパイプオルガンの生演奏を楽しむ、唯一無二の時間

天女像の真裏、2階に設置されているのはパイプオルガン。
「『シアタータイプ』といって無声映画の伴奏に使われているものを、1930年にアメリカから購入しております」
現在は、毎週金・土・日曜に演奏が行われているそうです。
「私が若いころは、演奏専門の社員がいて……いつも蝶ネクタイをした紳士でした」と近藤さんの懐かしのエピソードも。
852本のパイプから響き渡る荘厳な音色は迫力に満ちており、取材に訪れた平日にも、足を止めて聴き入る方が何人もいらっしゃいました。
見どころ04
もうすぐ100周年!「三越劇場」を再現した展示室

パイプオルガンの半階下に降りると、そこには「三越アーカイブス日本橋」という無料展示スペースが。ここでは現在、来年100周年を迎える「三越劇場」の展示が行われています。
「ここの小窓をのぞいてみて下さい」と、女将。劇場を再現した扉についている小窓をのぞくと、劇場の中の様子が見られるという仕組みです。
「劇場に入れないときでも、雰囲気を味わっていただけるので、ぜひお立ち寄りください」
見どころ05
ここは化石の宝庫!?

さて、中央ホールを堪能したらデパ地下へ……と向かう途中「ちょっとこちらをご覧ください」と呼び止める近藤さん。
「中央ホールの壁には大理石が使われていますが、アンモナイトやベレムナイトなどの化石がたくさん埋まっているんです。なかでもこちらは50cmほどの大きさで、東京で一番大きいともいわれいます」
夏休みの自由研究として「化石探検」に訪れる親子も多いのだとか。
美しい空間で、ていねいに紡がれてきた時間を味わう
ふだんはお買い物を目的に訪れる場所も、こうして視点を変えると驚きと感動の連続。
かつては最先端のモノやコトが集まる場所でしたが、120年という長い月日をかけて、最先端だけでなく変わらないものを守り続けている場所にもなりました。

美しい意匠はもちろんのこと、そこに流れるあたたかい空気もまた、大事に受け継がれてきたもの。「訪れた人に夢と感動を与えられる場所であり続けるために、まごころをもってお迎えします」と語る近藤さんの言葉にもその想いが伝わってきました。
歴史とまごころの詰まった空間へ。秋のおさんぽへ出かけてみませんか。
〈撮影/林 紘輝 取材・文/橘川麻実〉
<取材協力>
日本橋三越
営業時間:午前10時~午後7時(食品・1階は午前10時~午後7時30分)
住所:東京都中央区日本橋室町1-4-1
電話番号:03-3241-3311
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