世界を旅して出合う、その地に生きる人の暮らしには、環境や歴史に根ざした、心の豊かさがありました。今回はアーティストであり、版画家の平澤まりこさんがフランス・ピレネーで出合った、豊かな暮らしを紹介します。
(『天然生活』2025年12月号掲載)
(『天然生活』2025年12月号掲載)
植物も動物も人も、すべてが自然の一部

2025年5月、友人家族が暮らすピレネーの麓を訪ねた。
空気が驚くほどきれいで、夜空にはこぼれんばかりの星。
植物も動物も、見るものすべてが生命力にあふれていた。

家には水道がなく、生活のすべてを湧き水で賄っている。電気も太陽光でつくる。自然の恵みを受け取り、生かす暮らし。
その中に身を置くと植物も動物も人間も自然の一部であり、すべてのものがつながっていることを実感する。
山道を歩いていると土の温かさが足に伝わり、自分が普段いかに土と切り離されて暮らしているかを突きつけられた気がした。
クリエイティブな循環する暮らし

友人たちは、築100年余の家を自分たちで改装しながら暮らしている。
印象的だったのは、すべてむだなくめぐっていること。
トイレはおがくずを使ったバイオトイレで、排泄物は微生物が分解し土に戻す。
その土で育った野菜をいただく。ここでは自然の循環が可視化されている。

発酵や塩漬けなどの工夫で食材をむだなく、おいしく使い切ったり、身近にある植物で道具をつくったり。
家族みんなが頭を働かせ、手を動かし、クリエイティブに暮らしている。
そこにはストイックさとは無縁の豊かな暮らしがあった。
<撮影/平澤まりこ 文/嶌 陽子>
平澤まりこ(ひらさわ・まりこ)
アーティスト、版画家。装画や絵本の制作など活動中。国内外を旅して記したエッセイなど著書も多数。近年は描版画(モノタイプ)やエッチングなどの版画作品を制作している。
※記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです






