(『別冊天然生活 歳を重ねて楽しむ暮らしvol.5』より)
いつもご機嫌でいたいから、我慢はしない

般若心経を読み上げたら墨をすり、薄めの紙をお手本に重ね、紙の上から筆で2時間かけてなぞっていく
緑豊かな団地でひとり暮らしを謳歌する多良美智子さん。90代のいま、楽しみの中心にあるのは、地域の教室やコミュニティーへ出かけ、歌や絵手紙、リメイクなどの習い事に参加することです。
「1回500円や月1000円と、手頃な値段がありがたいですね。週に数回、毎日のように通える場所があるから、ひとり暮らしでも全然さびしくありません」

姪っ子との旅先で見つけた硯。「使うたびに歩いた景色や楽しかった時間が蘇ります」
習い事を続けるうえで大切にしているのが、自分の機嫌を自分でとること。そのためにも人づきあいは広く、浅くを心がけています。
「昔から深いおつきあいは苦手で。その場でおしゃべりが弾んで楽しく過ごせれば十分です。家に遊びに行くような深い関係ではなく、少し距離を置くほうが自分には心地いいんですよね」

親しい人に送っている手づくりの絵手紙カレンダー。「つくるのが大変になってきたので、息子に手伝ってもらっています」
好きで始めたことでも、雰囲気が合わなければすぱっとやめます。
「先生に相談してクラスを替えるか次を探し、それでも違うと感じたら無理はしません。いつもご機嫌でいたいから、我慢はしないの」
ご縁で暮らしが広がり、他愛ない会話が元気の源に

「編み物は小学生のころから好きで始めました。40代でニット教室に数年通い、ますます好きになりました」
こうした軽やかな姿勢で学びの場に身を置いていると、時に思いがけない縁が運ばれてくることも。
「いい先生にめぐり合うんですよ。息子のPTAの役員で、手芸『モラ』の先生と出会いました。習い事を通して仲良くなるなかで、最後は、先生の素敵な自宅を息子が購入するご縁も頂き、ひとつの習い事から、家族の暮らしまでが思わぬ方向に広がりました」

残っていた毛糸でつくっているスヌード
以前は技術の上達にやりがいを感じていましたが、いま一番の喜びは仲間とのおしゃべりです。
「足がふらふらすると相談すれば、軽いステッキの存在を教えてくれたり。他愛ない会話で笑い合う時間は元気の源。私が笑うことで、目の前のお友達も笑顔になってくれる。それが少しでもその方の役に立っていたらうれしいです」
本記事は『別冊天然生活 歳を重ねて楽しむ暮らしvol.5』(扶桑社)からの抜粋です
<撮影/林紘輝 取材・文/小松﨑裕夏>
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自分をまんなかに置いて、これからをもっと自分らしく。暮らしを整えることから、体や心のケア、人生を楽しむための時間まで。歳を重ねたからこそ見つかる、心地よく豊かに暮らすためのヒントを集めました
家族や仕事のために多くの時間を費やしてきた時期を経て、やがて、自分をまんなかに置いて暮らせるステージへ。そんなこれからの毎日を、自分らしく楽しむ人たちの暮らしには、歳を重ねたからこそ見つかる小さな幸せや、心地よく暮らすための知恵が詰まっています。
本書では、空間や暮らしのリズム、体を整えることから、おしゃれや肌・目と耳のケア、食事、夫婦の時間、学びや夢中になれることまで、これからの人生を豊かにするさまざまなヒントを紹介します。
【巻頭 [晩年のインタビューから]】料理家・枝元なほみさんの「支え合う幸せ、助ける料理」。人と支え合いながら暮らすこと、料理を通して誰かを助けることについて伺います。
【第一章 幸せを生む暮らしの整え方】
空間、暮らしのリズム、体を整えることから、毎日を心地よくする方法を紹介。ぬ衣さん、引田かおりさん、德田民子さん、伊藤千桃さん、中島デコさん、萩尾エリ子さんらの暮らしから、日々を楽しむための工夫を探ります。
【第二章 いつまでも若々しく健やかに】
橋本靖代さん、德田民子さん、ぬ衣さんによる「好きな、白の着こなし」、山本浩未さんが伝える若々しい肌のつくり方、今泉久美さんの体を強く美しくする朝ごはん、目と耳のいやし方など、毎日を健やかに楽しむための情報を紹介します。
【第三章 豊かな人生に必要なもの】
ミシンなど夢中になれること、夫婦で過ごす時間、90代からのお稽古事など、人生を豊かにしてくれる「楽しみ」に注目。それぞれのペースで、自分らしく日々を楽しむ人たちの暮らしを紹介します。
【コラム】
文筆家・大平一枝さんの「私の背中を押してくれる言葉」のコラムも収録。
これからの暮らしに、ひとつの正解はありません。自分の心や体に耳を傾け、そのときどきの自分に合うものを選びながら、無理なく心地よく暮らす。歳を重ねたからこそ味わえる小さな幸せを見つけ、これからの人生を楽しむための一冊です。
多良美智子(たら・みちこ)
1934年長崎県生まれ。27歳で結婚後、1967年より神奈川県の団地に暮らす。11年前に夫を見送ってからはひとり暮らしに。高校生の孫とともに、YouTubeで「Earthおばあちゃんねる」を配信中。著書に『88歳ひとり暮らしの 元気をつくる台所』『90年、無理をしない生き方』(ともにすばる舎)などがある。
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