• 湯気とともにヒノキが香る中華せいろ。佇まいも美しい、憧れの調理道具です。中華せいろの工房「曲物工房清水」を真藤舞衣子さんが訪ねました。信用金庫営業マンから曲物職人に転身した若き職人・清水貴康さんのお話を伺います。
    (『天然生活』2025年11月号掲載)

    真藤舞衣子さん愛用の「中華せいろ」工房を訪ねて

    素材をそのまま味わうことができると人気のせいろ料理。ブームから、すっかり日本の食卓に定着しました。

    料理家の真藤舞衣子さんが愛用するのは、曲物工房清水の清水貴康さんがつくる中華せいろです。

    「東京の合羽橋にある調理道具専門店の『釜浅商店』で見つけました。深さがあるので、茶わん蒸しなど少し高さのある器も入れることができそうと思い購入しました。使ってみてわかったのは、なにしろ丈夫。しかも軽くてとても使い勝手がいいんです」

    普段使っている中華せいろがどのようにつくられているのか知りたいという真藤さんが、清水さんの工房に伺いました。

    画像: 清水さんが持っているのは和せいろ、真藤さんの手には21cmの中華せいろ

    清水さんが持っているのは和せいろ、真藤さんの手には21cmの中華せいろ

    岐阜県各務原市にある曲物工房清水の代表を務める清水さんは今年40歳と曲物職人としては若手中の若手。しかも、もともとは信用金庫で働く営業マンだったという変わった経歴の持ち主です。

    「信用金庫の人間として、職人さんたちの経営状態をみていて、売れば売るほど赤字になる現状に愕然としました。これはなんとかしたいと現場に深く関わるうちにすっかりものづくりに魅了されてしまったのです」

    画像: 外側の板を留める「かんば」と呼ばれる山桜の樹皮

    外側の板を留める「かんば」と呼ばれる山桜の樹皮

    画像: 工房にはところ狭しと仕上げを待つせいろが積み上がる

    工房にはところ狭しと仕上げを待つせいろが積み上がる

    それから仕事を辞め、岐阜県が主催する「岐阜県立森林文化アカデミー」という森林や木材に関わる分野で活躍する人材を育成する専門学校に入学します。そこで曲物に出合ったそう。

    木の道具のよさを未来へ伝える

    2021年に工房を立ち上げた清水さん。いまや中華せいろは予約待ちの人でいっぱいです。

    職人も清水さんを入れて4人に増え、フル稼働でも追いつかないほど。さらに今秋はパリでワークショップを行うなど、今後は世界に向けて発信していくそう。

    画像: せいろづくりの難関、うずを巻く作業に挑戦する真藤さん

    せいろづくりの難関、うずを巻く作業に挑戦する真藤さん

    「いい道具がおいしい料理を支えてくれる」と話す真藤さん。

    「技術と経営面と両方で成功している清水さんの存在は、職人を目指す人たちにとって、希望が見えるとてもいいモデルケース。これからも先人の技を未来へ伝承していってほしいです」

    画像: 曲師の勉強会を催すなど精力的に活動する清水さん。「職人が丹精込めてつくったものがきちんと収益になるシステムをつくりたい」

    曲師の勉強会を催すなど精力的に活動する清水さん。「職人が丹精込めてつくったものがきちんと収益になるシステムをつくりたい」

    訪ねたところ
    曲物工房清水

    画像: 工房の前で。左から清水さんの妹のみほさん、一番弟子の鈴木さん、清水貴康さん、真藤さん。右はワークショップをきっかけに工房に入った木村さん

    工房の前で。左から清水さんの妹のみほさん、一番弟子の鈴木さん、清水貴康さん、真藤さん。右はワークショップをきっかけに工房に入った木村さん

    住所:岐阜県各務原市蘇原島崎町1-8
    https://magemonoshimizu.com/



    〈撮影/千葉亜津子 取材・文/編集部〉

    真藤舞衣子(しんどう・まいこ)
    発酵研究家、料理家。発酵や保存食を中心に、季節の恵みを生かした料理を提案。食を通じて環境を考えた暮らし方や食育に取り組み、健やかな日々を支える知恵を広めている。著書多数。

    ※ 記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです



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