(『天然生活』2017年7月号掲載)
服部みれいさんが実践するこころの習慣は、自分のなかにある思い込みや心の癖を解き放ち、より自然で、ワクワクする方向へ導いてくれるものでした。落ち込んだときや、もやもやしているとき、こころを整える一助になるはずです。
7 幸せになることを許可する
もし、いま、幸せでないと感じていたら、無意識のうちに、幸せになることを自分自身が許していないのかもしれません。「幸せになりたい」ではなく、「まず自分が幸せでいること」を、自分が許可することから始めてみて。肯定的、断定的な宣言で願望成就を引き寄せる「アファメーション」も有効です。
「みんな、いまのままで十分に幸せになれる存在なんです。『私なんて』という気持ちがあるとしたら、それは自分がつくった幻想かも。アファメーションは、潜在意識のクリーニングにも役立ちますから、ぜひ実践してみてください。ポイントは、幸せな光景をありありと思い浮かべ、ワクワクしながら宣言することです」
8 「お財布を落としても幸せ」の境地を目指す
世の中で起こる出来事は、いいことも悪いことも、すべて調和が保たれていると考えてみます。つまり、大切なのは捉え方。自分にとってイヤなことや困ることが起こったときの捉え方によって、人生が大きく変わります。
「ショックな出来事に直面すると、どうしたって落ち込みます。でも先々に、それがあったからこその結果が待っていると想像してみては? たとえば、失恋はもっといい人との出会いがある、お財布を落としたのはもっと大きな災難の身代わりになってくれたからと、よいことの前ぶれ、幸運と捉えれば、気分が重くなりすぎないはず。無理やりポジティブに捉えようというのではなく、世の中のバランスを考えれば、実はそれが真実かもしれません」
9 自分にも周りにも期待しない
自分や周囲の人への過度な期待は、本来しなくてもいい失望を生み、こころがすり減ることにもつながります。あれもこれもと欲しがらず、「期待しない」フラットな状態でいることが、自分自身でいるうえで大切なことです。
「ふだん落ち込みやすい人は、いろんなことに期待や欲望が強すぎるのかも。たとえば、何かするときは、破れかぶれの気持ちで臨むほうが力を出せたりするし、いい意味でのあきらめは、実はパワーの源に。仕事で活躍したい、いい暮らしをしたい、結婚したい、子どもが欲しいなど、望むものをすべて手に入れようとすると苦しくなります。自分らしく心地よくいるために必要なものを、優先してみては? プライドも、この際捨ててみる勇気をもってみては?」
10 「1/10寄付」をして、循環させる
「1/10寄付」とは、時間や奉仕、贈り物などを、相手や社会に先に差し出すこと。「自分だけがもらう」ことに執着すると、人間関係も社会も滞りがちに。自分から先に差し出し、かつ見返りを求めないことがポイントです。
「これは母からの教えです。お金を施設に寄付するのもいいけれど、日常的な心がけでも十分。たとえば、公衆トイレを使わせてもらったら手洗い場の水はねをふくとか、木に実った柿を鳥たちのために少し残して自然に返すとか。そういう交換や差し出す気持ちを日々さらりと積み重ねていくと、どんどんいい循環が生まれて、余裕ができるんです。ケチケチしないで、手もこころもパーに開くイメージで、自分から差し出してみて」
思い込みを手放せば、人生はもっと光り輝く
「人生は、モノをどうみるかが、すべてなのかも」と、みれいさんは言います。「ひとつの同じ世界をみんながみているのではなくて、自分の意識によって世界はつくられているんです。だから、見方を変えれば、世界、つまり人生は、ガラッと変化する。まず自分が変わる=自分のモノの見方を変えてみてはどうでしょうか」
読者をはじめ、さまざまな人に会う機会が多いみれいさんが日頃感じているのは、自分に対して否定的な人が多いこと。自分に厳しい人はたいてい他人にも厳しいため、それが悪いループに。私なんて、と卑下する人は、自分で決めつけた“ダメな自分”の幻想にとらわれて苦しんでいるのだといいます。
モノの見方を変える最初の一歩は、自分を素直に肯定すること。減点方式ではなく、自分のいいところに、もっとフォーカスするのです。
「『10カ条』でも紹介したように、自分と打ち合わせをし、共感し、幸せを許可することを続けていくと、いわゆるポジティブ思考とは違う、自然な自己肯定感が内からわき上がってくる。自分を好きになれば、リラックスして自分自身でいられる。周りの人にもやさしくなれて、やさしくもしてもらえる、いい循環のなかに身を置けるようになります」
みれいさん自身、クヨクヨして執着して、自分も人も責めてしまう“ダメダメ期”が長かったそう。変わったきっかけは、いまから約10年前。『マーマーマガジン』(最新号は『まぁまぁマガジン』)の立ち上げに奔走していたころの、ふたつの出会い。
「よろず相談を仕事にしていた、通称“モモおじさん”という人がいて。モモおじさんは、意識の状態が進化している達人といえばいいのかな。いつもほがらかでご機嫌で、一緒にいるだけでこころがほわーっと元気になる人。一方、そのころの私は、自分らしさを見失った“超ダメダメ期”で。あるとき、私が一緒に仕事をしていた人にカンカンに怒って言い争いをして、そのことをモモおじさんに話したんです。ひとしきり聞いてくれたモモおじさんは、ひと言、『大変だったね。でも、その人のこと許してあげたら?』って」
その言葉で、こわばったこころがするりとほどけた、みれいさん。すぐにその人に謝ると、頑なだったその人にも謝り返されて、すべてが丸く解決。生真面目さゆえの「こうでなきゃ」という思い込みから、解放された瞬間でした。
「私はずっと、自分にも人にもある思い込みを押しつけていたんですね。思い込みを手放すことを知って、本当に世界が変わりました。『自分に甘く、人にも甘く』。この体験を知らないままだったら、きっと、いまの私は存在しません」
ちなみに、「10カ条」のひとつ「お財布を落としても幸せ」は、モモおじさんの言葉。物事の捉え方を変えるだけで幸せの連鎖が起こるという真理を、折に触れて授けてくれたのです。
そしてもうひとつ、みれいさんらしさのベースにあるのが、心身を整えること。瞑想と冷えとり健康法です。瞑想は、無になる時間をもつことで、自己参照性が高まり、心のリセット力がついたといいます。
また、どうしようもないほど落ち込んだり、怒りが収まらないときは「体からのアプローチ」が鉄則です。
「わたしは、ふだん冷えとり健康法を実践していて、何かあると足湯や半身浴で体を整えます。頭寒足熱が体の循環を促し、こころも元気になっていく。また、温泉やアロマテラピー、マッサージなどで体をリラックスさせるのも、おすすめです。体がこわばっているから、こころが乱れる場合もある。わたしも、こころと体をいままで以上にゆるめて、24時間、上機嫌でいることが目標かな。そうして世界の甘美さをもっと味わっていけたら素敵ですね」
<取材・文/熊坂麻美 イラスト/北村 人>
服部みれい(はっとり・みれい)
岐阜県生まれ。文筆家、『マーマーマガジン』編集長、詩人。育児雑誌の編集を経て、1998年独立。2008年に『murmur magazine』を創刊。冷えとりグッズと本のウェブショップ『マーマーなブックス アンド ソックス』主宰。2015年春、岐阜・美濃市に編集部ごと移住。同年8月に「エムエムブックス みの」オープン。近著に、『わたしらしく働く!』(マガジンハウス)、『SELF CLEANING BOOK3 うつくしい自分になる本』(筑摩書房)、『みの日記』(11月に扶桑社より復刊予定)、『きんいろのアファメーション帖 BIG』(エムエム・ブックス)がある。毎日新聞日曜くらぶにて「好きに食べたい」連載中。メルマガとして配信するラジオ、「声のメルマガ 服部みれいのすきにいわせてッ」を月3回配信、特設サイトをnoteにてオープン。最新刊『わたしと霊性』(平凡社)が9月中旬に発売予定。
服部みれい公式サイト
http://hattorimirei.com/
エムエム・ブックス
http://murmurmagazine.com/
マーマーなブックス アンド ソックス
http://murmur-books-socks.com/
声のメルマガ 服部みれいのすきにいわせてッ
https://note.mu/murmur_magazine
※記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです