(『天然生活』2014年8月号掲載)
食べるものと同じように着る服も自然な素材を
ヨガを始めたのも、そのころ。
「ベジタリアンのヨガの先生たちに影響を受けて、野菜を中心とした食生活をするようになったんです。肉を食べなくなってみると、動物たちも、自分と同じ生き物だと実感するようになりました」
革製品をなるべく持たないようになったのは、そのころから。
「身に着けるものも、口にするものと同じ感覚で選ぶようになったんですね。とはいっても、食もファッションも、守れているのは8割くらいなんです。ストイックになりすぎず、『革製品は、靴とカバンの持ち手に限る』とか、自分で決めたら、心が落ち着きました。選択肢が無限にある現代を、少しだけ生きやすくなったんです」
ラックにかかった服は、気づけば穏やかな静けさをまとって、いつでも鈴木さんのかたわらにあります。その静けさは、幼いころに見たあの山の暮らしと、どこかでつながっているようなのです。
3シーズンのコーディネート例
服はラックにかけ、いつも見える場所に置いています。引き出しにしまうと、どんな服があるか忘れがち。毎日、目にすることで、コーディネートの幅が広がり、自分が大事にしているものもみえてきます。
パンツスタイル —その1
日本藍ならではの澄んだブルーが魅力的なワイドパンツ。この色を生かしたいから、合わせる色を抑えてシンプルに着ています。
春 ボーダーシャツをセーター代わりに
シャツと靴とバッグは白。ボトムとボーダーのコットンシャツを合わせます。白いキャンバスにきれいなブルーの絵の具をのせるような感覚で。キャスケットをかぶって、ソフトボーイッシュに。
夏 シャツをインしてすっきりと見せる
シャツと靴は、さっぱりとした白。そこにナチュラルカラーの帽子とバッグを合わせることで、女性らしさが加わります。シャツの裾はボトムに入れて、ボタンをきちんと留め、清潔感を大切に。
秋 鮮やかな発色を生かすひときわ濃いブルー
ニットとストールでボリュームアップ。日本藍よりも濃いブルーを重ねることで、ボトムの色がきれいに見えます。足元はグラデーションからあえて外すと、さりげなくおしゃれに見えます。
パンツスタイル —その2
さらりとした肌触りと裾の動きが優美なリネンキュロット。甘いイメージだからこそ、ほんのちょっとだけスパイスを利かせて。
春 エスニックな服でさりげなく個性を
上に羽織ったのは、グランピエで見つけた民族服。ボタンと刺しゅうの繊細さにひかれて購入しました。エスニックに偏りすぎないよう、靴や小物はシンプルなものを選んで、すっきりとした印象に。
夏 モードの香りをほんのりと
ベストは、10年以上前にパリで購入。オーガニックコットンのカジュアルなTシャツも、このベストを合わせると、ぐっとシック。品のよい組み合わせなので、ワイルドな靴とバッグで力強く。
秋 甘さを引き締めるかっちりしたコート
服を大量に整理したときに、やっぱり手放せなかったのが、パリで購入した子ども用のバーバリーコート。ゆるいボトムには、こんなかっちりしたアイテムを選ぶと、バランスがとれます。
ブラウススタイル
ていねいにつくられた服は細部まで工夫があるもの。だから、合わせる服ごとに新しい表情が表れて、たっぷりと3シーズン、楽しむことができるのです。
春 淡い同系色でまとめ、袖をロールアップ
同系色の異素材を合わせると、シルクブラウスの上品な光沢が映えます。季節の変わり目に大活躍するコットンのベストを重ね、短めのチノパンで、さわやかに。白のバッグと靴で春らしい明るさを。
夏 ふんわり結んで涼しげに風を通す
気温が高くなってきたら、ブラウスの前を結んでカシュクールスタイルにします。シルクのひんやりした感触が、火照った肌にやさしくて。暑い季節だからこそ、少量の黒を加えてぴりっと締めます。
秋 黒いベストを重ねて衿元のディテールを
シックな装いを楽しみたい秋は、黒のグラデーションを合わせて。モノトーンのベストをブラウスに重ねることで、ブラウスのシャンパンゴールド色と、衿元のていねいな細工が映えてきます。
<スタイリング/鈴木えりこ 撮影/尾嶝 太>
鈴木えりこ(すずき・えりこ)
1988年、独立。広告、女優、ナチュラル系雑誌などのスタイリングを手がける。エシカルファッション(オーガニックコットンやフェアトレードなど、環境や社会に配慮した衣服)にも造詣が深い。MMBOOKSから発売される『冷えとりスタイルブック』(2019年10月30日発売)の中でスタイリングを1テーマ担当。2019円10月末には、企画構成スタイリングをした秋冬ファッションの本も発売予定。
https://erikosuzuki.com
※記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです