(『天然生活』2016年11月号掲載)
小さな暮らしの3カ条
一 物は “とことん” 厳選
好きなテイストのもの以外は、できるだけ身のまわりに置かない。その潔さがあってこそ統一感が生まれる。
二 おしゃれに手を抜かない
どんなときも、おしゃれ心を忘れない。人に会うときは礼儀にもつながるので、より一層、装いに気を配る。
三 思い立ったら、すぐ行動
手づくり、おしゃれ、家事さえも。 “これいいかも” というアイデアが浮かんだら、すぐに実践する。
「退職後は気分を変えたいね、と主人と話していて。初めは海がいいかなと思っていたのだけど、このあたりをドライブしたとき、アルプスの山々がそれは美しくて。山もいいかもね、となったのです」
そういって笑う徳田民子さん。
『装苑』や『ミセスのスタイルブック』といった女性誌の編集長を歴任し、退職後、同じく退職を迎えたご主人とともに長野・安曇野市に移住。今年で7回目の秋を迎えるところです。
ファッション誌の編集者として仕事を続けてきた徳田さん。トレンドにはだれよりも敏感で、秀逸なセンスは語るまでもありません。安曇野へ移り住んでからも、その審美眼はそのままに。ただし、いままでと変わったこともあります。
“不便” をも逆手にとって備える楽しさを掘り下げる
「東京は、お店もたくさんあって、いつでもすぐに、おしゃれなものを手に取ることができるけれど、ここでは、そうはいきません。だから、 “備えておく” ことは上手になったかもしれませんね」
急な来客に出せるようにと、お茶請けを用意しておいたり、ちょっとした布小物なら自分でつくったり。家仕事や庭仕事に加え、徳田さんは絶えず手を動かしています。
とくに裁縫関係は、お手のもの。エプロンや鍋つかみ、コースターなど、家の布小物のほとんどが手づくりといっても過言ではありません。
「もともとデザイナーになりたかったのです」と徳田さん。裁縫上手で娘の服を幾つも手づくりしていたお母さまの影響もあり、徳田さんも、もの心ついたころから裁縫に魅了されていたといいます。
そして、大学を中退して文化服装学院へ転入。デザイン科へ進みデザイナーとなる夢を膨らませつつ、たまたま友人に誘われて受けた文化出版局の採用試験に合格。出版の世界へと進みました。
それからファッション誌ひと筋。40年以上もの歳月をファッションとともに駆け抜けてきました。
1 小さな手づくりを楽しむ
ちょっとした小物雑貨をつくるのは、お手のもの。
「洋服などの大物もいいけれど、思い立ったときにサッととりかかれて、あっという間にでき上がる小さなもののほうが私には向いています。完成したら、すぐ使いたいですしね」と笑う。
この日、つくっていたのは、ストライプ地のコースター。手でしつけをしたあと、ミシンで縫う。
2 エプロンは自分でつくる
キッチンまわりで使う布小物は、手づくりすることが多く、エプロンもそのひとつ。何度も洗って乾かすため、生地は麻や綿などがおすすめとのこと。
「エプロンは、毎日使うものなので、着けるのが楽しくなるようなお気に入りがあるとうれしい。楽しい柄や質感のある生地と出合ったら、シンプルな形のものを短時間でつくります」
3 リメイク・リユースする
お菓子や洋服を買ったときの包装のリボン、感じのいい布などは、まとめてとっておき、手づくりに生かすのが徳田さん流。
「ブランドのリボンはハリがあってしっかりしているので、ちょこっと使うとアクセントになります」。
また、小さな虫食いやほつれなどは、パッチワークやリメイクを施す。発想の転換はさすが。
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<撮影/砂原 文 構成・文/結城 歩>
徳田民子(とくだ・たみこ)
文化出版局で『装苑』『ミセスのスタイルブック』などの編集長を務め、退職後、広告関係のディレクターをしていたご主人とともに長野・安曇野市に移住。現在はファッションコーディネーターとして、雑誌『ゆうゆう』での連載ページをもつなど、ゆったりとしたペースながらも仕事を続けている。著書に『安曇野便りの心地いい家仕事』(主婦の友社)がある。
※ 記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです