(『天然生活』2017年12月号掲載)
小学生までさかのぼる、仕事の原点となる文房具歴
だれもが「自分の持ちもの」として文房具を意識するのは、おそらく小学校の入学時ではないでしょうか?
「好きな筆箱に好きな鉛筆、消しゴム、定規をそろえて、何度も並べ替えて……すごくうれしかったのを覚えています」と、オオネダさん。なにしろ、学校近くの文房具店に毎日通っては飽きずに眺めていたほどの、無類の道具好き。
「お小遣いで初めて買ったのは、オーダーシート。いわゆる店の伝票です。小学生に使い道はなかったけれど、規則正しいマス目でデザインされた形が、たまらなく好きでした」
文房具好きな少女は大人になり、テキスタイルやステーショナリーメーカーでデザインの仕事に就きます。もっと身近なものをつくりたいとフリーになってブランドを立ち上げ、いまでは、子どものころに夢中になった文房具類をみずからつくる立場に。
「マス目好きは変わらず。自分がデザインするものも仕事で愛用するものも、シンプルで使い勝手のよさを重視します」と、オオネダさん。
でもよく見ると、肩の力を抜いて気軽に使い込んでいけるような、どこか飄々とした雰囲気をまとったものばかり。オオネダさんのさっぱりとした人柄を映すような、そんな存在にもみえました。
書くもの
用途に応じ、ノートを使い分けているオオネダさん。青いツバメノートは「打ち合わせ用」、黒いモレスキンは「日記兼スケジュール帖」。アイデアを描き込む「なんでも帖」も同じくモレスキンで、イニシャルのOをもじったゼロのスタンプを。
「ノートはやや縦長で、ザラッとした質感のものが好きですね。ペンも、ペリカンのキッズ用太字タイプ、ブルーブラックの万年筆と決まっています」
測るもの
「なぜか、細かい目盛りが規則的についた、測るための文房具にひかれます。画材屋さんに行くと、製図用品のコーナーには必ず立ち寄るほど」というオオネダさん。
裏表で縦と横をストレスなく測れるヘキストマスの黄色いメジャーは、発送する商品の大きさを測るときにも大活躍。シンプルなステッドラーの定規類は、もう何年も使っている、仕事では欠かすことのできない相棒。
切るもの
商品のダミー用に立体の試作品をつくるときなど、カッターは最も使用率の高いアイテム。刃の先端が尖ったもの、ミシン目をつけるもの、円形カッター……気づくと、日本のOLFA社製のものがほとんどだといいます。
「使い勝手のよさはもちろんですが、私、昔から黄色が好きなんです。カッターといえば、この黄色。やっぱり使いなじんでいるデザインに安心するんでしょうね」
削るもの
気づいたらこんなに集まっていたというコレクションアイテムが、さまざまな形のシャープナー。地球儀にインク瓶、ヘルメットに鉛筆……仕事で使う頻度は低いという文房具ですが、どこかユーモラスな存在が、忙しいオオネダさんの、日々の癒しにもなっているよう。
「海外はもちろん、国内でも地方の古い文房具屋さんを見つけると、うれしくなっちゃう。お宝の発見率が高いんですよ」
<撮影/和田真典 取材・文/道広哲子>
オオネダキヌエ(おおねだ・きぬえ)
池上幸志氏とユニットを組み、文具レーベル「yuruliku」としてオリジナル作品を発信。東京・お茶の水のアトリエは金・土曜のみショップとして営業。
http://www.yuruliku.com/
撮影/和田真典(わだ・まさのり)
名古屋市生まれ。食品商社退社後、名古屋ビジュアルアーツ、主婦の友studioを経て
市橋織江氏に師事。2010年4月より独立。雑誌、書籍、広告などスチール撮影を中心に活動。
現在は動画撮影も行う。
info@wadamasanori.com
http://wadamasawnori.com
※ 記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです