• 使い勝手、機能美、佇まい……。どんな小さな台所道具も、選ばれる理由があります。今回は、料理研究家の牧田敬子さんに、長年にわたり料理を支える相棒たちを見せていただきました。
    (『天然生活』2016年12月号掲載)

    職人ならではの腕が光る名道具を

    比較的コンパクトなキッチンに、様々な台所道具が “すっきり” “きっちり” と収まっていました。ずらり並べてみると、大きさや素材は異なりつつも、不思議と統一感を抱かせます。

    「シリーズでそろえているものが多いからかもしれませんね」と牧田さん。たしかに、ステンレスの鍋は「ビタクラフト」、包丁は「木屋」の団十郎シリーズ、ボウルは「柳宗理」……と、サイズ違い、種類違いのものが並びます。

    「結婚するときにそろえたものが多く占めるので、もう15年ほど使いつづけています。職人さんがつくっているものが多く、メンテナンスしてもらえるから長持ちしているのかもしれません」

    包丁のとぎ直し、まな板の削り直し、さらに、おろし金も一度、目をすべてつぶし、新たに目を立て直してくれるそう。さらに、メンテナンスのほかに特別に注文してつくってもらったものも。

    たとえば、下の写真・番の大きなせいろは直径33cm。その大きさゆえに、なかなかぴったり合う鍋が見つからず、東京・合羽橋のお店で注文してつくってもらったそう。

    「大根おろし(下の写真・14番のステンレスのもの)も、目の数を一段増やしてもらいました。そういった細かい要望をいえるのも職人さんならではじゃないかと思います」

    画像: 職人ならではの腕が光る名道具を

     合羽橋で購入した直径33㎝のせいろ。下の鍋も、合羽橋の別のお店でオーダーした
     溜塗りの飯台は、ご主人が結婚前から持っていたもの
     鉄の両手鍋も、ご主人が使っていたもの。底が少し平らで使いやすく、揚げる、炒める、煮る、どんな料理にも万能
     すり鉢は用途に合わせて2種を使い分ける
     フッ素樹脂加工のフライパンは「ビタクラフト」
     日本製「バーミキュラ」の鋳物鍋
     まな板は「千成堂」の木曽ひのき
     包丁は「木屋」の団十郎シリーズに統一。左から──三徳、ペティ、鯵切り、出刃、刺し身、菜切り。パン切りは新潟・三条の「タダフサ」を愛用
     炊飯は雲井釜の3合(炊き込み用)と2合(白米用)を使い分け
    10 ステンレスの鍋は「ビタクラフト」を、ひとそろい
    11 日本製「ジオ」の片手鍋は片口が使いやすく、野菜の下ごしらえなどに便利
    12 ガラスの軽量カップはフランス製で、15年以上前に購入
    13 レードル類は「ボクサー」のものに統一。収納したときにも美しいところが気に入っている
    14 おろし金4種。左上から時計まわりに、「有次」のにんにく・しょうが用、「京利」のわさび用、イタリアのチーズ用、「木屋」の大根おろし用
    15 右から、魚骨抜き、鮑へら、牡蠣へら、うろこ取り
    16 卵豆腐に目がないという牧田さん。流し缶は、もっぱら卵豆腐専用
    17 抜き型は、おせちをつくる際に欠かせない。鉄の丸い塊は、おせちの黒豆を煮る際に使用

    餅は餅屋に……ではないけれど、やはりプロの仕事ぶりが随所に光る、と牧田敬子さん。使いやすいことはもちろん、細かな部分までつくりがしっかりしているからこそ、修理・調整をしながら使いつづけることができる。いい台所道具は、まさに一生モノなのです。

    「すっきりとしてシンプルなものが好きなので、デザインも重要ですね。それから、収納しやすいことも大切。台所道具は大好きで、お店はいろいろのぞくのですが、自分の料理に本当に必要か、よく見極めて選ぶようにしています」

    牧田さんがつくる料理は、少ない食材と調味料で驚くほどシンプルなのに、繊細でいて奥深い味わいなのが特徴です。台所道具と料理は、どこか通ずるところがあるのかもしれません。

    牧田さんのお眼鏡にかなった台所道具たちは、主人の仕事を陰ながら支えるべく、どこか誇らしげにもみえました。

    牧田さんの台所道具

    ● ステンレス鍋8個
    ● 鋳物鍋1個
    ● 土鍋5個(炊飯用2個、鍋料理用3個)
    ● 中華鍋1個
    ● フライパン4個
    ● 電気ケトル1個
    ● 玉子焼き器1個
    ● せいろ1個
    ● ボウル12個
    ● ざる(ステンレス)7個
    ● ざる(かご)3個
    ● バット7個
    ● すり鉢2個
    ● すりこ木1本
    ● おろし金3個(薬味用1個、大根用1個、チーズ用1個)
    ● わさびおろし1個
    ● 包丁7丁
    ● まな板3枚
    ● キッチンばさみ1丁
    ● ピーラー1本
    ● 計量カップ2個
    ● 計量スプーン2セット
    ● 菜箸3組
    ● 木べら3本
    ● ゴムべら2本
    ● トング1本
    ● おたま2本(穴あき1本)
    ● フライ返し1本
    ● 栓抜き1本
    ● しゃもじ2本
    ● 泡立て器1本
    ● レモンしぼり1本
    ● スパイスミル2個
    ● グリルパン1個
    ● 味噌こし1本
    ● マッシャー1本
    ● あく取り1本
    ● 巻き簀2枚
    ● 飯台1個
    ● 鉄玉1個
    ● うろこ取り、魚骨抜き各1個
    ● 鮑へら、牡蠣へら各1本
    ● 流し缶1個
    ● 裏ごし器1個
    ● かつお節削り1個


    <撮影/有賀 傑 構成・文/結城 歩>

    画像: 牧田さんの台所道具

    牧田敬子(まきた・いつこ)
    料理研究家。食材本来の持ち味を生かした、シンプルで洗練されたレシピに定評がある。食材の買い出しのときや旅先で、台所道具のお店をのぞくのが楽しみのひとつなのだそう。

    ※ 記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです


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