(『天然生活』2016年12月号掲載)
自然素材の道具と上手につきあう術を
東京・神楽坂で生活道具のお店を営む小池梨江さん。お店で、かごやざるなど、自然素材のものを多く扱っていることもあり、自宅の台所道具もやはり、自然素材のものが顔を並べます。
「お店で扱う前には、やはり事前に使用感を知っておきたくて。似ていても、実際に使うと、ずいぶん違いがあるのですよ」
たとえば、ざる。竹はツルツルとして水を弾く一方、マタタビは水を吸う性質があります。そのため、食器などの洗いかごには竹を、米とぎや野菜を洗う際、ゆでたあとのおか上げにはマタタビを選ぶといいそう。また、自然素材ゆえに、使う環境によっても変化があるのだとか。
「こういった道具は昔ながらのものなので、現代の気密性の高い住宅には合わないこともあるのです。私も一軒家からマンションに住まいを変えたら、いままではなかったのにカビが出てしまったことがあって。それからは、梅雨の時季だけは使用を避けています」
だから、何が何でも自然素材のものを、と気負わなくてもいいのかもしれないと、小池さんは続けます。そのときの季節や状況に合わせ、自分が気持ちよく使うことのほうが大切なのでは、と。
「でも、やっぱり自然のものはいいのですよ」と、にっこり。杉の味噌樽(下の写真・1番)で味噌を仕込んだ年はカビもなく、ほかの容器でつくるよりもおいしく仕上がったそう。さらに、マタタビの米とぎざるは、プラスチックやステンレスのざるに比べて、米が傷ついたり割れたりすることが圧倒的に少ないといいます。
1 徳島の司製樽の味噌樽。杉の香りが広がり、ほかの保存容器に比べてカビが生えづらい
2 横浜中華街にある「照宝」のせいろは21cmを2セット
3 朴の木の杓子2本をおたま代わりに使用。岩手のもの
4 まな板大小2枚(もう一枚は包丁の下に敷いてあるもの)は、木工をしている友人が結婚祝いにと手鉋で削り出してくれた
5 網杓子は、大きいのはマタタビで会津のもの、小さいのは竹で岩手のもの
6 「ヨシタ手工業デザイン室」のピーラーは佇まいの美しさも切れ味も抜群。左の包丁3丁は「omoto」。左から、菜切り、小包丁、出刃包丁。小包丁の刃は「omoto」の師匠の長谷川昭三さん作
7 毎日使う、洗いおけとマタタビの米とぎざる
8 ごはん釜は丹波の竹田道生さん作。ふたが割れてしまい、落としぶたで代用
9 ざるは野菜の下ごしらえなどにも多用。鬼おろしは森川雅光さん作
10 ボウル類は「柳宗理」
11 すり鉢はサイズ違いで、そのまま食卓にも出せる
12 「ストウブ」と「ダンスク」の鍋は煮込みで活用
13 重ねられる四角いざるは下ごしらえに重宝する
14 土楽窯の大きな土鍋は冬場に大活躍
15 小鍋3つは、「アイザワ」のステンレスで味噌汁を、原田潔さん作の銅鍋でジャムを、黒いフィンランドのアンティーク鍋でチャイを、と三者三様に使い分け
16 南部鉄器の小さなフライパンは、ひとりのオムレツやソテー用に。両手鍋はドイツの「ターク」製で、フライパン兼用
「初めて買うときや迷ったときは、中ぶりサイズを選ぶのがいいと思います。大は小を兼ねると思いがちですが、大きすぎると、出し入れや手入れを億劫に感じてしまうかもしれません」
なるほど、小池さんの台所道具がどれも(自然素材以外のものも)、20~25cmと中くらいサイズが多いのには、そんな合理的な理由があってのことなのでした。
毎日の料理とともに、気負わずゆるりと、使いながら育てていく。自然素材の台所道具は、料理をつくる以外に、そんな楽しみをも生み出してくれます。
小池さんの台所道具
● ステンレス鍋 | 3個 |
● 鋳物鍋 | 3個 |
● 土鍋 | 2個 |
● 銅鍋 | 1個 |
● ホウロウ鍋 | 2個 |
● フライパン | 1個 |
● やかん | 2個 |
● せいろ | 4個 |
● ボウル | 4個 |
● ざる(ステンレス) | 6個 |
● ざる(かご) | 16個 |
● バット | 1個 |
● すり鉢 | 3個 |
● すりこ木 | 3本 |
● おろし金 | 3個 |
● 包丁 | 6丁 |
● まな板 | 4枚 |
● カッティングボード | 3枚 |
● キッチンばさみ | 1個 |
● ピーラー | 1個 |
● 計量カップ | 1個 |
● 計量スプーン | 1セット |
● 菜箸 | 4組 |
● 木べら | 2本 |
● ゴムべら | 1本 |
● トング | 1本 |
● おたま | 2本 |
● 杓子 | 4本 |
● フライ返し | 2本 |
● 栓抜き | 3本 |
● しゃもじ | 1本 |
● 泡立て器 | 1本 |
● レモンしぼり | 1本 |
● スパイスミル | 3個 |
● ほうろく | 1個 |
● 焼き網 | 1枚 |
● 味噌樽 | 1個 |
● おひつ | 1個 |
● おけ | 1個 |
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<撮影/有賀 傑 構成・文/結城 歩>
小池梨江(こいけ・りえ)
東京・神楽坂にある生活道具の店「jokogumo(よこぐも)」を営む。自然素材の台所道具のほか、手仕事によるもの、民芸のものなども扱う。不定期ながら、手仕事ワークショップなども開催する。
http://jokogumo.jp
※ 記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです