著書『レリーフ編み』について、梅村マルティナさんに聞きました。
ぽこっと浮き上がる、楽しい模様。何種類もの毛糸を使って、編み足していったもの?
いいえ、そうではありません。たった一本の毛糸を編むだけで、リズミカルな世界が生まれる「レリーフ編み」なのです。
考案したのは、ドイツ製の毛糸「オパール」を日本に広めた梅村マルティナさん。一本の糸がさまざまな色に染められたオパール毛糸は、単純に編み進めるだけで華やかな色と模様が生まれる、と大人気になりました。
そんなオパール毛糸をこよなく愛するマルティナさんが、毎日編み物をする中で新しく思いついたのがこの「レリーフ編み」。著書『レリーフ編み』も出版したマルティナさんに、その魅力や楽しみ方を伺います。
シンプルだけれど楽しみ方は無限大。
「レリーフ編み」ってどんなもの?
オパール毛糸を毎日のように編んでいたマルティナさんは、ある日ふと違うことをしてみたくなったといいます。
「糸の色が変わったところで、裏編みをしてみたんです。すると、編み地が膨らんでレリーフ(浮き彫り)のようになったの。『新しい楽しみ方ができた!』と思いました」
色の変わり目で何らかの「アクション」を起こす。すると、アクセントとなるポップなモチーフが浮き彫りになります。一本の糸がさまざまな色に染められているオパール毛糸だからこそできることです。
「四角いレリーフにするか、玉をつくるか、扇にするか。どんなアクションを起こすかは自分で決めていい。アクションを起こさなくてもいいんです。限りなく自由なところが、レリーフ編みの魅力ですね」
著書『レリーフ編み』には、編み方や作品例がたっぷりと紹介されています。
マルティナさんが実演、「四角 裏編み」のレリーフ
実際に、マルティナさんにレリーフ編みをしてもらいました。編むのは裏編みでつくる四角形のレリーフです。
1 編み進めるうちに、毛糸の色が変わったら、それがアクションを起こすサイン。
「目数を数える必要もなく、一目瞭然なので簡単です」とマルティナさん。
2 同じ場所で色が変わった部分のみ、往復して裏目で編んでいきます。
3 裏目がはっきり見えるよう、最初と最後の段は表目で編むのがポイント。
4 数段編むとほらこの通り。四角のモチーフが立体的に浮き出てくるのです。
裏側を見てみると、こんなにすっきり。糸始末の必要もないし、身につけても引っかかることがありません。
本でも写真解説付きで、この四角をはじめ、さまざまなレリーフ模様の編み方を、ていねいに解説しています。また、レリーフ編みを用いたニット作品とその編み方も、たくさん掲載されていますよ。
初心者でも気軽に編める、レリーフ編みの毛糸も開発
レリーフ編みに夢中になったマルティナさん。より楽しめるようにと、レリーフ編み専用の毛糸まで開発しました。「レリーフシリーズ」は、どれもベースカラー1色とアクションカラー5色で構成されています。
色の変わり目がくっきりしていて、レリーフ模様をつくりやすい長さになっているので、初心者でも手軽に楽しめます。目数や段数を数えなくてもいいので、リラックスして編めるのが魅力です。
「レリーフ編みに失敗はない」とマルティナさんはいいます。
「つくろうと思っていたものと違うものになったとしても、それは新しいモチーフを生み出したことになるでしょう? どんなアクションも、新しい発見につながっていくんです」
一人ひとりがオリジナルのレリーフを生み出し、それをみんなで共有する。「レリーフ編み」という新しい世界を通じて、オパール毛糸を編むしあわせは、ますます広がっていきそうです。
<撮影/山川 修一、大森忠明(腹巻帽子の集合、レリーフ編みのサンプルの編み地)、村尾香織(裏編みを施した靴下) 取材・文/嶌 陽子>
梅村マルティナ(うめむら・まるてぃな)
ドイツ生まれ。1987年、医学研究者として来日。京都大学大学院医学研究科博士課程修了ののち、ドイツ語講師として働きながら、ドイツ製の毛糸「Opal(オパール)」を使った編み物作品を制作し、評判に。東日本大震災後、宮城県気仙沼の避難所に毛糸を送ったことをきっかけに活動の場が広がり、2012年に「梅村マルティナ気仙沼FSアトリエ(KFS)」を設立。毛糸の輸入販売、毛糸製品の加工・販売、編み物教室などを行っている。
著書『しあわせを編む魔法の毛糸』『レリーフ編み』(ともに扶桑社)が今秋、復刊したばかり。
https://www.kfsatelier.co.jp/
Webショップ
https://kfsamimono.com/