(横山タカ子・著『信州四季暮し』より)
師走は毎年、気忙しく迎えます。日に日に日没は早くなり、寒さも増してきます。
秋に収穫した、にんじんやごぼうなどの越冬野菜は、土袋に頭から差し込み、凍みを防ぎながら水分補給させ、春までみずみずしくいられるように。白菜は一日干して、1個ずつ新聞紙で包み、立てて保存。
さらに野沢菜を漬けたり、たくあんや、白菜も漬けたり。一年の中で最も気持ちを集中させる、大切な漬物の季節です。「水が上がって、うまく漬かりますように」と、重い石を何個も載せて、つい手を合わせてしまいます。
十二月の中ごろには、毎年、職人さんに庭の剪定をしてもらいます。ささやかな庭に、ぎっしり植えられた木々を手入れするのは、大変だろうな、と思いつつ。
この時期にするのは、私のわがままで、紅葉している葉をいつまでも見ていたいからにほかなりません。私の好みを受け入れてくれ、「この木は不要です」なんていわずに、そっとしておいてくれます。雪除けの「ぼっち」を藁で編んでは、方々にかぶせ、玄関に青竹を1本備えて終了です。
そこここ、目につく所の掃除を済ませて、あとはしめ縄作り。早めに農家にお願いして藁を確保し、自分流に。あるいは、水引の束をくくって松や梅を添えたりします。
<撮影/本間 寛>
横山タカ子(よこやま・たかこ)
料理研究家。長野県大町市生まれ、長野市在住。長年、保存食を中心とした長野の食文化を研究すべく各地に赴き、料理名人から教わる。長野県の特徴でもある、野菜をたっぷりと使った保存食は「適塩」で作り、季節の食材は手をかけすぎず、素材を生かしてシンプルに食べることを信条とする。地元の農作物を広める活動にも尽力。大の着物好きでもある。