• イラストレーター・エッセイストの田村セツコさんに、「私をつくった」といえるほど影響を受けた本と映画をお聞きしました。なかでも印象に残ったのが、「この詩さえあれば大概のことはOK」という、映画『草原の輝き』作中のワーズワースの詩についてのお話でした。

    黒柳徹子さんと共有する「草原の輝きですね」という言葉

    『天然生活』2020年3月号の、「私をつくった本と映画」は、8人の方に影響を受けた本や映画を伺いました。それぞれの本と映画について、どういうところに影響を受けたのか詳しくご紹介いただくことで、その人らしさが垣間見られるという興味深い企画でした。

    お話を伺ったおひとりが、映画館で映画を観るのが大好きというイラストレーターの田村セツコさんでした。田村さんの言葉選びは、「映画館はワンダーランド、素敵な宇宙。始まりのベルでときめくの」と、とてもチャーミング。

    イラストの仕事を始めたころ、何十年も前に観た作品も紹介してくれましたが、その後DVDやネット配信で見返しているわけではないのに、映画のシーンやセリフ、ファッションまで詳細に覚えていることに驚きました。

    とくに印象的だったのが、映画『草原の輝き』のエピソード。本誌では全文ご紹介できなかったのですが、タイトルにもなった、「草原の輝き 花の栄光 それらは再び還らずとも嘆くなかれ その奥に秘められたる力を見い出さん」というワーズワースの詩が劇中に登場します。“輝きは色褪せないから大丈夫”というこの詩は、ご友人の黒柳徹子さんも好きなのだそう。田村さんと黒柳さんは、大切な方が亡くなられたりしたときに「草原の輝きですね」といい合うようにしているのだとか。

    画像: 『草原の輝き』1961年 アメリカ 監督:エリア・カザン ワーナー・ブラザース ホームエンターテイメント DVD 1,429円

    『草原の輝き』1961年 アメリカ 監督:エリア・カザン ワーナー・ブラザース ホームエンターテイメント DVD 1,429円

    人生の節々で思い出す大切な詩

    実は、ちょうどお話を伺った日に、好きな作品のひとつとして挙げていただいた『女は女である』の主演女優、アンナ・カリーナさんの訃報が伝えられ驚きました。翌日に田村さんがこの詩を送ってくださって、意味をより深く理解できた気がしました。田村さんが人生の節々で思い出し、「この詩さえあれば大概のことはOK」とお話しくださったことが、これからの私の人生でも役に立ってくれそうな気がします。

    画像: 『女は女である』1961年 フランス・イタリア 監督:ジャン=リュック・ゴダール 紀伊國屋書店 ※発売元:シネマクガフィン DVD 4,800円、Blu-ray 8,600円 ©1961 STUDIOCANAL - Euro International Films S.p.A.

    『女は女である』1961年 フランス・イタリア 監督:ジャン=リュック・ゴダール 紀伊國屋書店 ※発売元:シネマクガフィン DVD 4,800円、Blu-ray 8,600円 ©1961 STUDIOCANAL - Euro International Films S.p.A.

    自分をつくったと思えるほど影響を受けたということは、それだけ好きだということ。皆さんがそれぞれ好きな作品のお話をされるとその魅力が伝わってきて、読みたい本、観たい映画のリストが増えました。ぜひ読んでいただき、みなさんも読みたい・観たいリストを増やしてみませんか。

    <取材・文/赤木真弓>

    田村セツコ
    イラストレーター・エッセイスト。1938年生まれ。1960年代に『りぼん』『なかよし』などの表紙や“おしゃれページ”で活躍。『いちご新聞』では現在も連載中。最新刊に『HAPPYおばさんのしあわせな暮らし方』(興陽館)がある。

    赤木真弓
    編集者・ライター。旅好き編集ユニット「auk(オーク)」としても、本づくりをしている。著書に『ラトビア、リトアニア、エストニアに伝わる暖かな手仕事』(誠文堂新光社)、共著に『オランダ・ショート・トリップ』(スペースシャワーネットワーク)ほか。「greenpoint books & things」として、イベントなどで古書の販売もしている。

    This article is a sponsored article by
    ''.