食とともに、いやそれ以上に、はじめてのメキシコで衝撃を受けたのが、民芸品(アルテサニア)の素晴らしさでした。
いまは東京などを中心に、メキシコの輸入雑貨のお店も増えているそうですが、改めて現地で目にした品々はどれも精緻で、配色も美しくて、連れて帰りたくなるものばかり。旅の期間中、各地の民芸市場を何度も訪れて日々をすごすこととなりました。
最初に訪ねたのは、メキシコシティにある「La Ciudadela Mercado de Artesanias」。日本の観光ガイドブックなどでは「シウダデラ市場」と呼ばれているこの場所は、メキシコ中の民芸品が手に入ると言われるほどの規模と充実度です。
迷路のように入り組んだ道の両脇に、陶芸、革細工、刺繍、織物、ガラスやビーズ細工などなどがずらり。ありとあらゆる手仕事の店が肩を寄せ合い、主たちはときに自ら民芸品づくりに手を動かしながら、陽気にお客さんを迎え入れています。
メキシコは、今も多くの先住民族たちが自らの文化を守りながら暮らす、世界でも有数の多民族国家。その文化のカラフルさの分だけ、民芸品にも特徴があります。歩けども歩けども、目移りしてしまって時間ばかりがすぎてしまいます。
メルカドバッグやガイコツ人形などは日本でも目にした人が多いかもしれません。せっかくなので、ちょっと変わったものをご紹介。なぜか市場の中に、ドールハウスで使えそうなミニチュアを扱うお店が点在していたのです!
食器からベッドまで、ありとあらゆるミニチュアが並ぶなか、悩みに悩んで私が選んだのが上の品々。タコスやエンチラーダス(巻いたトルティーヤのソースがけ)など、メキシコ料理のミニチュアもあってときめきが止まりません……!
ちょうど最近ドールハウスでの遊びがお気に入りの、友人の娘たちの顔が浮かび、彼女たちのために。と言いながら、「私が遊ぶなら……」なんて、かつての自分を思い出しながら選ぶ時間が、最高に幸せでした。
そして、フリーダ・カーロが愛した町と言われるメキシコシティ南部のコヨアカン地区では、教会の近くでこんな素敵なものを購入。素朴なレース刺繍のフードカバーです。教会の階段に腰掛けレース編みをしていたご婦人の笑顔を、このフードカバーを見るたびにこれからも思い出すことでしょう。
その他、刺繍のポーチや、オアハカ特産のパルマバスケット※、メキシコおじさんが踊るマリオネット(笑)まで、あれこれ購入して大満足! すでにトランクが容量が気になりながら、サン・クリストバル・デ・ラス・カサス(サンクリ)へと向かったのでした。
※パルマと呼ばれるヤシ科の植物の葉で編まれたバスケットのこと
玉木美企子(たまき・みきこ)
農、食、暮らし、子どもを主なテーマに活動するフリーライター。現在の暮らしの拠点である南信州で、日本ミツバチの養蜂を行う「養蜂女子部」の一面も
<撮影/佐々木健太(プロフィール写真)>