阪神大震災を思い出す、外出制限下の日常
3月23日の夜、さっきまでできていたことが、今夜からできません。と外出制限が出されたイギリス。そのとき、ふと思い出したのは、25年前に神戸で経験した阪神大震災でした。
朝の揺れで起こされ、近くの公園に避難して。幸い実家は倒れませんでしたが、その後は、余震が続く中、ずっと家に籠っていました。私の実家のあたりは電気がすぐに戻りましたが、ガス、水はなかなか復旧せず、食料品も少し郊外に出かけて購入したり、配給でいただいたりで過ごしました。
見慣れた光景がすっかり変わり、毎日、明日はどうなるんだろうと思いながら過ごしたあの頃を思い出しました。今回の外出制限は、電気、ガス、水は問題ありません。食料品の買い物には出かけられますし、一日1回の運動、もしくは散歩は許されています。震災の経験があるからか(同じにしてはいけないとは思いますが)、なんとかなるの精神でスタートしました。
ただ今回は、目に見えないウイルスが問題です。このウイルスからお年寄り、持病をお持ちの方々を守り、医療崩壊を防ぐための外出制限です。翌日、街の便利なWebサイトに、早速、外出禁止のお年寄り、持病持ちの方々への食料品や薬の買い出し、お届けのボランティアの募集がアップされました。
各地でも同じような活動が始まっていて、国民保健のNHSも募集をかけると、BBCニュースによると、あっという間に全国で75万人が応募しました。気が滅入るニュースが多い中、とても勇気づけられる明るいニュースです。
イタリア、スペイン、フランスなどで始まった医療従事者への感謝を示す拍手が、イギリスでも始まりました。毎週、木曜日、午後8時に家の前や窓から、みんなで拍手です。外出が少なくなった分、ご近所さんたちとも顔を合わす機会が少なくなりましたが、いまはこの木曜日の拍手の時にお互い手を振ったり、笑顔を交わして、また、がんばろうと気を引き締めます。
医療従事者への感謝はもちろん、キーワーカーと呼ばれる食料品店、薬局、郵便局員、配送業務、ゴミの収集員など、いまも働いている人たちへの感謝も忘れません。
子どもたちのために、窓辺に飾られたティディベア
国中の子どもたちが、虹の絵で感謝を表現し、窓に張り付け始めました。また、急に学校が休みとなり公園も閉まってしまった子どもたち向けに、楽しいゲームが始まりました。イギリスでは誰もが知っている有名な絵本「きょうは みんなで クマがりだ」(原題:We’re going on a bear hunt マイケル・ローゼン著)からアイデアがうまれ、みんなで窓辺にテディベア、なければぬいぐるみを飾り、子どもたちが家族とさんぽ中にそれぞれの家の窓辺に飾られたテディベアを探して楽しんでもらおうという魂胆です。
我が家はテディベアがまだダンボール箱なので、ぬいぐるみのセイウチくんを飾りました。ときどき、「セイウチだあ~!」の声が聞こえると、こっそり喜んでいる私です。
買い物の不便がありますし、高齢の親にも会えず、友達と食事をしたりもできない中、今後の仕事の不安もあり、まだまだ大変です。でも、その中で小さな楽しみを探して過ごす毎日です。娘は買い物ボランティアの待機中、夫は家のDIY、京都に留学中の息子とはFaceTimeでビデオ通話をしています。家族元気で猫も元気、これがなによりです。
明るい未来を信じて、今日も、さんぽの道を変えて、新しいテディベア探しです。
<撮影・文/コヅエ ガーナー>
コヅエ・ガーナー
神戸市出身。イギリス・コッツウォルズ在住。ソフトファニシング・インテリア、風水インテリアデザイナー。2008年からMisty Interiorをスタートし、ロンドンを中心に活動している。
http://www.mistyinterior.com/