• 庭先に建てた1軒の小屋がもたらす、豊かな家時間。小さな小屋なら自分で建てるのも不可能ではありません。自分で建てるからこそ手に入る100%自分好みの空間で過ごす時間は、最高の贅沢。とある住宅地の庭先に建てられた小屋の持つ魅力を、インテリアを中心に、そこでの過ごし方を覗いてみましょう。

    予想どおりの居心地のよさと、想像を超えた小屋の効果

    クリエイターとして岡山で活動する草加恵子さんの家の玄関脇には、ひとりで気ままに過ごせる小さな小屋があります。模型づくりが趣味だったという夫は、ちょうど定年を迎えたこともあり、草加さんの小屋づくりに専念。時折、草加さんに様子を見てもらいながら、窓や棚、家具など細部の造作までつくり上げました。

    画像: 小屋の明かりが玄関先まで漏れ、家全体の温かみが増す

    小屋の明かりが玄関先まで漏れ、家全体の温かみが増す

    「テーブルやベンチは、既成品を持ち込むとすべて大きく感じたので、小屋にはまるようにつくってもらいました」と草加さん。窓辺や棚など各所に飾られている雰囲気のある小物も、ほとんどすべてが夫の手づくりというから驚きです。

    そうしてでき上がった小屋で、草加さんは思う存分に自分の時間を楽しんで過ごしています。室内では好きな音楽を聴いて庭を眺めたり、手の届く位置に設けられたマガジンラックから雑誌や本を選び、読みふけたり。

    画像: 入って右手の壁には、上部に通風のための窓、目線の高さに小物を置くニッチスペース、下部に雑誌や本を立てかけるラックを設けた

    入って右手の壁には、上部に通風のための窓、目線の高さに小物を置くニッチスペース、下部に雑誌や本を立てかけるラックを設けた

    画像: 入って正面の壁、ベンチシートの上に設けられた棚には、小屋で使うお気に入りのカップのほか、手づくりの小物が並べられている

    入って正面の壁、ベンチシートの上に設けられた棚には、小屋で使うお気に入りのカップのほか、手づくりの小物が並べられている

    画像: 入って左手、奥の路地を見通す側には、回転式のガラス窓を設けた。友人づてに譲り受けていたものを取り付けた

    入って左手、奥の路地を見通す側には、回転式のガラス窓を設けた。友人づてに譲り受けていたものを取り付けた

    「予想どおり、自分ひとりで過ごすにはちょうどいい広さの小屋です。掃除もすぐに終わりますし。窓の位置にこだわったおかげで、実際以上に広く感じるのが不思議ですね。玄関を出て“徒歩1歩”ですが、自分にとっては異空間。いろいろと好きな物を集めて置くと、日常とは離れた違う空間になります。季節やその時々の気分によって小物をあちこちに移しながら、ディスプレーして遊んでいるんですよ」と草加さん。

    画像: 種子が飛んできて生長する季節の植物の実も、ポイントで彩る

    種子が飛んできて生長する季節の植物の実も、ポイントで彩る

    友人にも愛され、人の輪を紡ぐ小屋

    友人たちは「来るたびに変化があって、楽しい」と口々に語ります。

    外観を見るだけでも、一目瞭然で草加さんのあふれる個性が感じ取れます。落ち着いたグレイッシュな色をまとい、やさしい表情のファブリックを小屋の前にふわりと掛けた様子は、来訪者の心を和ませます。

    画像: 小屋正面の外壁には、幅が広く奥行きの小さな棚がしつらえられ、上部は柔かな布を渡して覆うこともできる

    小屋正面の外壁には、幅が広く奥行きの小さな棚がしつらえられ、上部は柔かな布を渡して覆うこともできる

    「友達を気軽に招くことができるようになりましたね。お茶を飲んで過ごすと、想像以上に喜んでもらえて、その人の友人を連れて来たり。『自由でいいんだね』とつぶやいて、なぜか泣きだす人もいましたね」と草加さん。

    画像: 友人にも愛され、人の輪を紡ぐ小屋
    画像: 出入り口に取り付けた扉は、もとは洋服ダンスのもの。横に木材を加えて幅を増やし、表裏に塗装をかけて一体化させた

    出入り口に取り付けた扉は、もとは洋服ダンスのもの。横に木材を加えて幅を増やし、表裏に塗装をかけて一体化させた

    画像: 小ぶりスツールは来客時に利用

    小ぶりスツールは来客時に利用

    「自分の得意なことをそれぞれが十分に表現していくことができれば、きっと楽しいし上手くいくはず」とも。玄関脇に佇む小さな小屋は、草加さんの日常にいっそうの彩りをもたらしただけでなく、周囲に強力なメッセージを発しているようでした。

    画像: 室内灯のシェードは、布で編み込んだオリジナル

    室内灯のシェードは、布で編み込んだオリジナル

    画像: オブジェのようなドライフラワー

    オブジェのようなドライフラワー

    <写真/高橋郁子 取材・文/加藤純>

    高橋郁子(たかはし・いくこ)
    1980年生まれのフリーランスフォトグラファー。暮らしやアウトドアの分野を中心に、広告、書籍などで活動中。http://ikukotakahashi.com/

    加藤 純(かとう・じゅん)
    建築ライター/エディター。大学で建築を学んだ後、建築専門誌の編集部を経てフリーランスに。建築デザイン分野を中心に、各種出版物やWebコンテンツの企画・編集、取材・執筆を行う。著書に『日本の不思議な建物101』『「住まい」の秘密』など。“空間デザインの未来をつくる”「TECTURE MAG」チーフ・エディター。


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