![画像: 「野菜」をテーマにした絵本3冊|ずっと絵本と。](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783328/rc/2020/07/09/17b3bf38399d69ff77cc1e8659ea62e9c96df7e9.jpg)
夏は家庭菜園をしているご家庭も多いのでは? トマトやナスの初収穫を喜ぶ声をよく耳にします。そこで今回は、家庭菜園や野菜をテーマに選んでみました。
『ソフィーのやさいばたけ』(ゲルダ・ミューラー作 ふしみみさを訳 BL出版)
![画像: タイトル文字のデザインも素敵です。](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783328/rc/2020/07/09/a6829583e00ded31bbcbbc9d8caa2bf59c4cba59.jpg)
タイトル文字のデザインも素敵です。
待ちに待った夏休み。
ソフィーは田舎のおじいさんの家に泊まりに行きました。
そこには広い畑があり、今年はソフィーのための畑も用意してあります。
ラディッシュ、ニンジン、レタス、と好きな野菜の種を畑にまくソフィー。
種はとてもちいさくて、まくのは意外とむずかしいことをソフィーは知ります。
夏から、秋、冬と、畑で必要な作業をおじいさんからソフィーが教わるにつれて、わたしたちも一緒に学ぶことができるようになっています。
テントウムシはアブラムシを食べてくれる益虫だということや
(テントウムシの幼虫って見たことありますか? 将来、テントウムシになるとは思えない姿をしています)
夜にはコウモリが野菜を食べる虫を退治してくれていることなど、
畑にまつわるさまざまなことも、知ることができます。
最後にソフィーは、野菜の種をおじいさんにプレゼントされて……。
日々、成長していく野菜の姿に一喜一憂し、採れたてのみずみずしい野菜をいただくときには、心の底から満足感が得られる家庭菜園。
ベランダ菜園でもいいから、やってみたい!と思わせてくれます。
『トマトさん』(田中清代作 福音館書店)
![画像: 一度見たら忘れられないトマトさんの表情。](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783328/rc/2020/07/09/677a33be55a38c7e6a116b2508d91f71c8db70b3.jpg)
一度見たら忘れられないトマトさんの表情。
「ある なつの ひるさがり。
まっかに うれた トマトさんが
トマトのきから どった、と おちた。」
地面に落ちてしまった、大きなトマトさん。
太陽がぎらぎらと照りつけ、暑くてかないません。
同じように落ちたミニトマトたちは、ころころと転がって、近くの小川に飛び込んでいくのに。
そこへ、とかげさんたちがやってきました。
![画像: 浮き輪のカラーも、おしゃれです。](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783328/rc/2020/07/09/ea36a9a13d6f89d80f19039f8ba78af5c35f889c.jpg)
浮き輪のカラーも、おしゃれです。
とかげさんから、小川に行こうと誘われても、泳ぐのなんか、みっともとない、と断るトマトさん。
でも本当は……。
![画像: ずっしりと重たいトマトさん。枝が折れてしまいそうです。](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783328/rc/2020/07/09/2e4fef979004186aebc701a8afe205a6c6d57f0a.jpg)
ずっしりと重たいトマトさん。枝が折れてしまいそうです。
素直になって、ありのこや虫、とかげたちに手伝ってもらい、小川に飛び込んだトマトさんの表情を、ぜひご覧いただきたいのです。
なんとも気持ちよさそうで、みずみずしくて。
トマトさんには悪いけど、がぶりとかぶりつきたくなりました。
『すいかのプール』(アンニョン・タル作 斎藤真理子訳 岩波書店)
![画像: 真っ青な空、気持ちよさそうにプールに浮かぶひと。でも水のプールじゃないんです。](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783328/rc/2020/07/09/b8d7e15c19e123d64e73d86de7aefb26d4f1ae22.jpg)
真っ青な空、気持ちよさそうにプールに浮かぶひと。でも水のプールじゃないんです。
すいかは野菜か果物か論争が起こりそうですが、どうしてもご紹介したかった、この絵本。
「まなつの お日さま あっつあつ。
すいかはすっかり じゅくしています。」
一般的にはすいか割りでもして、みんなでわいわい食べるところですが、
この絵本では、違います。
すいかのプールが、プール開きするのです。
種をすぽっと抜いて、ちゃぷんと浸かれば、いい気持ち。
続々と村人たちが集まってきて、すいかのプールに飛び込みます。
![画像: すいかの皮で、すべり台をつくっていますよ。](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783328/rc/2020/07/09/80c8b6f91380dcefd63aa755dd1aa12b61b20871.jpg)
すいかの皮で、すべり台をつくっていますよ。
文はとても少なくて、素朴で懐かしい雰囲気の絵で、お話は進みます。
すいかのプールで泳いだことなんか、ないのに、
すいかの実に足を踏み入れたときのサクッとした感触や、
周囲に漂う甘い香り、
海に入ったときのような、ちょっとべたべたする肌の感じなど、
ほんとうに体験したような気分が味わえます。
すいかを食べながら自由に空想すれば、忙しない日常の、ちょっとした休止符になると思います。
![画像: 『すいかのプール』(アンニョン・タル作 斎藤真理子訳 岩波書店)](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783328/rc/2020/07/09/e758943765ed8f38dbe5fa35b8307b9088ce2515.jpg)
長谷川未緒(はせがわ・みお)
東京外国語大学卒。出版社で絵本の編集などを経て、フリーランスに。暮らしまわりの雑誌、書籍、児童書の編集・執筆などを手がける。リトルプレス[UCAUCA]の編集も。ともに暮らす2匹の猫のおなかに、もふっと顔をうずめるのが好き。
<撮影/神ノ川智早(プロフィール写真)>