(『天然生活』2020年9月号掲載)
阿部絢子(あべ・あやこ)
薬剤師の資格を持ち、洗剤メーカー勤務後、家事全般や食品の安全性の専門家として幅広く活躍。家事については、だれもが、いかに科学的に効率よく、しかもスムーズにこなしていけるかを研究し提唱している。
活性炭は暮らしのにおいをとるのに活用
毎日の暮らしで飲む水、調理する水。安全でおいしい水を求め、浄水器を取り入れる方が増えてきました。
浄水カートリッジ式の場合、定期的に交換を行いますが、その使用済みの浄水カートリッジをそのままごみとして廃棄している方が多いのではないでしょうか。
ところが、この浄水カートリッジ、「浄水」という役目を終えたあとでも、その中の活性炭には、においなどの物質を吸着・除去する能力が十分に残っているのだそうです。
この点に注目した浄水器メーカーのタカギは、使用済みの浄水カートリッジを、「浄水」以外の用途で再利用できないかと考え、暮らしに備長炭を取り入れている阿部さんとその活用法を一緒に考えることにしたのです。
「備長炭、活性炭ともに、多孔質という構造です。穴がたくさんあいていて、そこに物質を吸着する性質があるので、同じ用途に使えると思います。私がふだん備長炭を活用するのは、キッチン、玄関、トイレ、クローゼット、ネコのトイレなど、暮らしのなかで生じるさまざまなにおいをとるためです。ですから、活性炭も消臭目的で活用するのが一般的だと思います。しかも、活性炭のほうが構造上、吸着する穴が多いですから、備長炭よりも少ない量で効果が出るのではないでしょうか?」と阿部さん。
さらに、備長炭にはない、野菜や果物から放出されるエチレンガスを吸着・除去するという、活性炭の機能にも期待したいといいます。
「エチレンガスは老化ホルモンともいわれますが、上手に使えば、未熟な果実を熟成させて甘くしたり、柔らかくしたりすることもできます。りんごと一緒にキウイやバナナを保管すると早く熟すのは、まさしくりんごが生成するエチレンガスのおかげです。ただし、一般的には、野菜の老化を進め、劣化を早めてしまうので、鮮度を保つためには野菜室のエチレンガスは少なくするほうがいいんです。使用済みの浄水カートリッジで、どの程度、除去できるのか、まず研究データを示してもらえるといいなと思います。また、浄水カートリッジとして使用したあと、活性炭がシート状になるような仕様なら、野菜などに巻いて使えるので便利だと思います」と阿部さん。
野菜の鮮度を長く保つことができれば、食材を捨てずに食べきることにつながり、フードロス削減にも貢献できます。阿部さんは、フードロスについてはどう考えているのでしょうか?
循環させて暮らしの中のロスをなくしていく
「私はフードだけではなく、すべてロスさせたくない。そのためには、自分の暮らしに見合った循環をしていくのが大切だと思っています。まず、自分にとって不要なものをリフューズ(断る)し、暮らしに取り込むものをリデュースする(減らす)。この入り口がとても大事です。最初に大量にものを取り入れてしまったら、大量に使わないとロスになる。また、好みでないものを取り入れたら、使わないまま残り、最終的にロスになる。最初にそれを防ぐのです。そのあと、リユース(再利用)、リサイクル(再生)で回します。とはいえ、リサイクルは別のものに再生させなくてはいけないのでハードルが高い。私はできるだけリユースで終われるように、そこまでに使い切る工夫をしています」
暮らしを小さくして回していけば、環境に負担をかけずにすむ。阿部さんはそんなふうに考え、日々できることを実践しているのです。具体的にどんなふうにフードロスを防いでいるのか教えていただくと……。
「食材を食べ切るためには、まず量の問題がありますから、計算したうえで必要量だけを購入します。ひとり暮らしだし、すごく安いからといって、大量に入っているものは買いません。そして、食材は使わないとなくならないので、冷蔵庫内を循環させることを考えます。野菜室に野菜がたくさんあれば、総菜に調理して冷蔵室に移します。それを自分で食べたり、人にあげたりしてなくします。肉の棚、魚の棚も同じように回せば、食べ残すことがないんです」
環境にやさしい、阿部さん流の暮らし。そこには、長年にわたり、世界各国の家庭にホームステイし、「ごみはどんなふうに処理されるのか、ごみを出さない工夫はどのようにしているのか、リサイクルはどうなっているか」など、自分の目で見て、自分はどうしたいかを考えてきた経験が生きているといいます。
「いま、心がけているのは、日本でつくられたものを使い、日本で最後まで処理すること。これは、北欧やドイツ、オランダなどで行われている、リユース、リサイクルの自国処理から学んだことです。たとえば、日本の食材を選び、それを食べ切る。不用になった衣類や本などは国内で再利用してもらえるようショップに送る。日本はまだリユース、リサイクルの先を海外に求めていますが、私の暮らしでは、日本の中で回していこうと思っているんです」
自分にとって大切なものが定まると、そのために何を選んでどう暮らしたらいいか自然とわかってくる、と阿部さん。「活性炭の再利用を考えることが、自分にとって何が大事か考えるきっかけとなり、自分に見合った “環境にやさしい暮らし” につながっていくといいですね」
皆さまのご自宅での活性炭の活用事例やご意見を募集しています。
● 活性炭の再利用事例
● 使用済み浄水カートリッジ使用事例
● フードロス削減に対するご意見
上記のいずれかに関するご意見・使用事例の写真・アドバイス・アイデアを募集します。
以下の活性炭の活用事例の応募フォーム( https://cs.beach.jp/scu/9e9h )からご応募ください。ご意見、アイデアをご応募いただいた方のなかから抽選で20名様に5,000円分のQUOカードをプレゼントいたします。発表は商品の発送をもってかえさせていただきます(応募締め切りは8月20日)。
【活性炭の活用事例の応募フォーム】
タカギの蛇口一体型浄水器
定期交換サービスシステム
タカギの蛇口一体型浄水器は、分譲戸建・マンションを中心に設置されています。タカギでは、利用者である国内約160万世帯のお客さまに、浄水カートリッジの定期交換サービスを提供。ていねいな暮らしを大切にすべく、今後、タカギの会報誌「WACCARU」、コミュニティサイト「WACCATRIP」でもさまざまな企画を随時展開していく予定です。
【タカギ蛇口一体型浄水器HP】
<撮影/山田耕司 取材・文/野上郁子(オフィスhana) イラスト/網中いづる>
提供/TAKAGI