家にいるときはほとんどの時間を台所で過ごすという、石村さん。朝9時、ご自宅におじゃますると、台所に立ってせっせと手を動かしていらっしゃいました。
「座って、お話ししましょう」と、テーブルに出してくださったのは、いちじくのお茶。いちじくの葉っぱを窓辺で干し、お茶にしているそうです。
いただいてみると、芳しいいちじくの香り! 思わず、声を上げると、「そうでしょう、とってもいい香りがするのよね」と、嬉しそうな石村さん。
葉っぱからこんなに香りがするなんて。小さなヒミツを分かち合ったみたいで、ご自宅におじゃましたのは初めてでしたが、たちまち気持ちがほどけていきました。
調理台の上には、摘みたてのハーブや尾道のレモン。「ハーブの中の、小さな黄色い花は、フェンネルなのよ」と、石村さん。
ガラスのポットにもフレッシュなハーブがたっぷりと。水を入れて、いつも冷蔵庫で冷やしておくそうです。ゲストをお迎えする一杯に、食事中のお水代わりに、なくなればまた水を差せばいいだけ。
まず見て楽しみ、それからシンプルに味わって、好きな器に使い、季節を愛おしむ。おもてなしも、日々楽しんでいるまま、身近なもので、無理なく、気取りなく。
だからお客さまも気を使わず、リラックスできて、石村さん自身も楽しめます。
新しいご自宅は、ご主人と2人住まいで、台所もコンパクト。気に入って集めた器はなかなか手放せないそうですが、「好きだから、しょうがないのよね」と、石村さん。その言葉にもとても共感しました。
好きなもの、好きな人がいて、暮らしは楽しい。好きを大事にすることが人生を豊かにする、石村さんの台所がそう教えてくれました。
特集「笑顔が生まれる台所」にて、素敵な台所をぜひご覧ください!
<撮影/伊藤信 文/宮下亜紀>