日々の暮らしの中にある季節の移ろいを
白井明大さんの詩・文と當麻妙さんの写真で綴ります。
南風を呼んで
島ではね
真夏の風を
真南風と言うの
まはえ と言ったり
まふぇー と呼んだり
まみなみかぜ
とは言わなくて
昔は
南風を
はえ
と言った
この島だけのことでなく
古い古い昔の話
いつか帰りたくなったとき
窓を開けて
真南風を感じて
まはえ
まふぇー
とつぶやいてみて
言葉は記憶
心をしまってある
箱だから
あふれ出るから
季節の言葉:真南風(まはえ/まふぇー)
一年でもっとも暑い季節、二十四節気の大暑が、七月二十二日からはじまります。
暑さにバテて、疲れが出やすい時期なので、昼は仮眠をとったり、夜は湯船につかったり、ふだんよりも体をいたわってあげて。
そんな盛夏に南から吹く季節風のことを、沖縄では真南風といいます。真南風には、幸せを運んでくる風という意味もあるのだとか。わたしはどんなときに幸せを感じるだろう? なんて、陽気に満ちあふれた風を浴びながら、思い巡らせてもいいかもしれません。
八月二日から六日まで、七十二候*では「大雨時行る(たいうときどきふる)」の候です。
みるみるうちに入道雲が空を覆ったかと思うと、ザアーッと夕立が来ることも。軒先に駆け込んで、しばしの雨宿り。
*七十二候……旧暦で一年を七十二もの、こまやかな季節に分けた暦。日付は2020年のものです。
白井明大(しらい・あけひろ)
詩人。沖縄在住。詩集に『生きようと生きるほうへ』(思潮社、丸山豊賞)ほか。近著『歌声は贈りもの こどもと歌う春夏秋冬』(福音館書店)など著書多数。新刊に、静かな旧暦ブームを呼んだ30万部のベストセラー『日本の七十二候を楽しむ ー旧暦のある暮らしー 増補新装版』(KADOKAWA)。
當麻 妙(とうま・たえ)
写真家。写真誌編集プロダクションを経て、2003年よりフリー。雑誌や書籍を中心に活動。現在、沖縄を拠点に風景や芸能などを撮影。共著に『旧暦と暮らす沖縄』(文・白井明大、講談社)。写真集『Tamagawa』。
http://tomatae.com/