心地よい暮らしって何でしょう?
心地よさってたぶん、「自分にぴったり」ということ。それがたとえ、ちょっぴり古ぼけて、ちょっぴりダサくても、自分にぴったりであれば、気にならない、むしろ愛しい。
ところが、自分にぴったりの暮らしって、どこにも売っていません。だから自分でつくらなきゃならない。
この世で一番の贅沢って、「おあつらえ、オーダーメイド」だと思うんです。だって、自分のためだけにつくられたものなんですから。でも、自分でやれば、お金はかかりません。
自分の暮らしを自分であつらえる楽しみ、始めませんか?
バラバラになった食器を楽しく使う方法
セットの食器が欠けていく……
和洋中にエスニックと、バリエーションに富む日本の家庭料理を反映して、多くの台所には、収納に困るほどたくさんの食器がひしめいています。
食器はプレゼントされることや、景品・粗品でもらうことも多く、買わないようにしていても増えてしまうもの。
たくさんあったとしても、どれも大切に使っているならいいのですが、困るのは、セットだった食器が一つ割れ、一つ欠け、次第にそろわなくなっていくこと。
家族や来客とおそろいで使えなってしいますから。ペアで買ったグラスの片方だけ割れてしまうのも悲しいものですが、何といっても困るのは、残された食器の処遇です。
割れても欠けてもいないものを捨てることもできず、使うのは気が乗らず、「食器棚のこやし」と化してしまうからです。こういうの、どうすればいいんでしょう。
私も困ってた!
バラバラな色柄物でゴチャゴチャした食器棚は、育児と仕事でパンクしそうな頭には耐えられません。
一人暮らしの時、いつの間にかバラバラになってしまったセットものの食器を持て余していた私、二度とこうなるのがイヤで、ある時すべての食器を同じメーカーの白の洋食器にチェンジしてしまいました。
白の洋皿はラクです! 料理を選ばないし、和食が殺風景に見えるときは大葉や菊の葉ですき間を埋めれば何とかなります。和食器のように形が複雑でないので、コンパクトに収納できて場所を取りません。
23cmと19cmを各6枚、15cmを10枚、11.5cmの取り鉢を10点、あとは大皿数点と豆皿たくさん(これは色柄物)でまったく不自由なく10年以上過ごしてきました。
ところが、子どももある程度育って手を離れ、「最近ゆとりができたわー」などと感じ初めていた最近、はっと気づいてしまったのです。
「白ばっかりの食器棚、味気ない。刑務所みたい……(まだ入ったことないけど)」
子どもたちも外で食事をしてくる機会も増え、夫とふたりだけの夕食には、白一色の食器はやはり味気ない。その日から少しずつ、我が家の食器に色柄物が加わり始めたのです。
バラバラな食器を気分よく使うには?
白一色の中に少しずつ加わり始めた柄物。しかも、セットで買うことはもうせず、その都度違うものを買うので、一緒に使うと一見バラバラです。
そこで、買うときにある程度基準を設けました。
・19cmの円形の皿であること
・立ち上がりがあまりない、なるべくフラットな形であること
とりあえず、19cmのものだけを柄物にチェンジしていくつもりですが、サイズと形さえ同じなら、収納は以前と変わらずコンパクトで済みます。
そして、使うときは、同じテイストのランチョンマットやコースター、箸置きに載せることにしました。こうすれば、全体の統一感は失わず、かつ、それぞれが好きなお皿を楽しめます。
夏には寒色系のマットとガラスの箸置き、冬には暖色系のマットに陶器や木の箸置きを使えば、季節感が出ます。マットも箸置きも、たいして場所はとりません。
捨てることも大切
とはいえ、半端になった食器を何でもとっておいて使えばいいとは思いません。人は変化する存在です。
買ったときは気に入っていて、使うのが楽しかったお皿やカップも、気分が変わり、趣味が変われば、次第に手が遠のくものです。
食器は、欠けたところがなければいつまでも使えますから、捨てにくいし、ついつい食器棚の奥に押し込めてしまいがちです。
しかし、自分の中の何かが変わったことで、もうその食器は、私の人生の外に出てしまったのです。ただ持ち続けるだけで使われないのでは、意味がありません。むしろ食器がかわいそう。
若いころは、
「もったいないから」
「かわいそうだから」
と、無理やりペン立てにしたり、一輪挿しにしてまでとっておいたことがありましたが、無意味だったと感じています。そのグラスやカップを見ても、楽しいと感じないのですから。
モノにはモノとしての生命があって、それは、物理的な生命と同時に、私たちの心を映す鏡としての生命があるのだと思います。
鏡としての生命が終わったと感じたら、たとえ欠けていなくても、生活空間を窮屈にしないためにも、それは処分した方がいいのではないでしょうか。
どの道、永遠に一緒にいられるわけではないのですから……。
<撮影/林 紘輝>
金子 由紀子(かねこ ゆきこ)
1965年生まれ。出版社での書籍編集者を経てフリーランスに。1973年、第一次石油ショックで大人たちの買いだめにショックを受ける。自らの出産・育児経験から「現実的なシンプルライフ」の構築の傍ら、All About「シンプルライフ」初代ガイドを務める。近著に『クローゼットの引き算』(河出書房新社)amazonで見る 、『50代からやりたいこと、やめたこと』(青春出版社)amazonで見る 、『ためない習慣』(青春文庫)amazonで見る ほか20冊以上。